208-2 AOBADAI escalier (青葉台エスカリエ)

たとえばカンバスのようなテナントビル

 

 山手通りから路地を抜け、目黒川を渡り少し歩いたところにある目黒区青葉台。いわゆる“裏ナカメ”と呼ばれている地域である。中目黒駅から徒歩10分弱と決してアクセスが良いわけでないにもかかわらず、目黒川沿いの賑やかさと住宅街の閑静さが調和した独特の雰囲気を持つこのエリアは人気アパレルショップや美容院、美食の名店などが点在し、“わざわざ”人々が集まる中目黒でも人気の高い地域である。
 敷地はそんな裏ナカメの小さな交差点の角地にある。クライアントから『裏ナカメの新たなアイコンになり、個性的でありながらもテナントが個性を出し易い建物にして欲しい』という要望を受け、私たちは『“わざわざ”人々が集まる地域に“わざわざ”お店を出すテナントに好まれるテナントビル』を考え始めた。
 厳しい高度斜線もこの地域のヒューマンスケールを生み出している敷地の特徴として捉え、建物高さを抑えながらも低い階高に対しては逆梁を用いて開放感を演出するなどの工夫を行った。また基準階を設けて容積率を確保することは容易だったが、単純な基準階の積み重ねでは一般的に階によってその価値が変わってしまうため、あえて基準階を設けず、地下1階~地上3階の全ての部屋に対して平面プランや階段でそれぞれの特徴を持たせた。つまり『“わざわざ”その部屋を借りたい』と思えるような建物だ。
 “わざわざ”とは“特別な想いがある”ということである。人々が特別な想いで訪れる場所に、特別な想いでそれぞれのお店を開くことができるテナントビル、それはたとえば自由に絵を描けるカンバスのようなテナントビルである。
(坂井泰之/勝岳史建築設計事務所)
構造:RC造
規模:地下1階、地上3階
用途:店舗
設計・監理:坂井泰之/勝岳史建築設計事務所
設計協力:井上明日香/アトリエイノウエ
構造設計:河合一成/河合構造設計
電気・設備:環境プランナー
施工担当:讃井、望月
竣工:2016年12月
撮影:日暮雄一/日暮写真事務所

11-3 大伸社 (オフィス改装)

今月は、最近オフィスの考え方も変化してきたというお話。
「大伸社」さんは、創業50年、カタログ、パンフレットの作成が中心の印刷会社です。本社は大阪ですが、最近はWEB関連の事業にも積極的に取り組んでいます。そしてこのたび東京支社のオフィスのリフォームを弊社が施工させていただきました。
「会社のデジタル化が進み、印刷だけでなく、ホームページなども作るようになって、人材管理の仕方を、終身雇用から成果主義に移行としようという全社的決意がそこにありました。」と上平諭社長。
「会社とは何か」を考えると、資産は人間。その人間をいかに活性化させるか、オフィス空間を変えることで何かできないかというのが今回のリフォームの出発点です。
カタログ製作は、いろんな人とのコラボレーションで成り立つ仕事。クライアント、デザイナー、ライター、ディレクター、セールス…。
みながオープンな雰囲気の中で、情報の受け渡しをより自在にできるようにすることがリフォームの第一の条件でした。そしてもう一つは「自分の仕事をしている姿を見てほしい」という『ハレ』の意識を働くものに持たせる効果も期待されたそうです。
それから、以前は日中ほとんど出払っている営業マンのデスクがフロアの中心を占め、製作や管理部門は周りの壁を向いてそれぞれ仕事をしていたため、他のスタッフからは仕事がみえなくなっていくこともあったとか。お客様への対応も、後ろを向いていては、今ひとつでした。「顧客第一主義」をモットーとする会社にしてみれば、もっと何とかできないかと感じられたようです。
形も中身も、よりオープンなスペースを求め、上平社長と白根英昭事業開発部部長、設計の石丸信明氏の3人は、事前にアメリカ西海岸のIT関連会社を視察されました。そこでデジタル化すればするほど、リアルなコミュニケーションがいかに求められているかを目の当たりにしたそうです。
「1日中PC相手に働く人ほど、ヒューマンタッチなものを要求するようになるんですね。『和』としてのワークスペースが必要不可欠だという基本にたちかえり、具体的な提案を心がけました」という石丸氏。社員同士のリラックスした接触が図れるように、次の3つのコミュニケーションスペースを設けました。
エスプレッソ・バー:スタンドに軽く腰掛け、コーヒーを飲みながら、会話をかわす。
ラウンジ:昔の談話喫茶の感じ。お客様と一緒にくつろぎながら話ができる。ホテルのロビーともいえる。
テレフォン・ベース:仕切りはあるが、オープンなスタイル。モバイル利用の来訪者のために、モジュラージャックコンセントも設けている。
全体がすぐに見渡せるレイアウトに加え、この3つのコミュニケーションスペースは社員の方たちにも好評です。
インフォーマルな場の方が、情報のインプットも前向きに行われて、話のレベルもあがってきます。リフォームの費用で、社員の顔つきが変わってきたという感触を得ることができたのなら、経営者の視点からみても非常に効果的です。
そしてオフィスにはさらに意外な仕掛けがありました。貼り付けることでホワイトボードになる『ダイノック』<ホワイトボード・シート:住友スリーM㈱>という仕上げ材を、壁や机等いたるところに採用しているのです。「ホームページのサイトマップや1,000ページにも及ぶカタログを作成するときには、どうしても大きなスペースが必要になります。いちいちページをめくる資料では意識もそがれるでしょう。一見して複数の人間が情報を共有し合える仕掛けが必要です。」と上平社長。壁一面のボードは見るからに使いやすそうです。
机はアルミの枠に取り付けたパーティクルボードの天板にシートを貼った簡単な手作りのものですが、手ごろな大きさを注文でき、量産計画もたてているとか。表面は突き板だったり、ダイノックだったり、天板のままの素朴なものだったり、場所に応じて使い分けされています。大手オフィス家具メーカーのスチール家具では出せない味わいです。
「我々は施工についてあまり高い完成度は求めていないんです。アメリカのオフィスなんか、ペンキがところどころ塗りかけだったりするんですよ。ところがそれがいいって彼らは言うんです。かえってノイズのある状態というのが心地よいんですね。完成度が高ければ高いほど、使っていくうちに汚れて、壊れることへのストレスが増大しちゃうじゃないですか。床屋に行って、きちっと決めてもらって、店を出た途端にぐちゃぐちゃにくずすとの似た感じといえるかな(笑)」というのは白根氏。確かにそのノイズ感が求められているというのは、木製ブラインドや東南アジアテイストの家具からも感じられました。 ほっとするんですね。
帰社してわが社を見回していろいろと考えさせられました。
Daishinsha  HP http://www.daishinsha.co.jp

09-3 リストランテ・ヒロⅡ (ドゥーエ)_内装改修

今話題の代官山アドレス並びにすてきなレストランがオープンしました。
好評の南青山店に次ぐ2号店です。ダイニングルーム、サロン、バーカウンターなどを、シックな色で統一。
南青山店の約2倍という広い客席が、カップルにも、大人数のパーティにも、ゆとりのひとときを。
若さあふれるスタッフが、暖かくお客様をお迎えします。
山田宏巳シェフの味をご堪能ください。(現在は閉店しています。2017年編集)