127-4 メンテ魂~その後、 お住まいはいかがですか~第 30 回 リフォーム編:argo egota(アルゴエゴタ)

今月は、またリフォーム物件のご紹介です。
Y 様は中野区江古田にある築 38 年の 3 階建てのアパートを、父上から引き継ぎました。当初は、建て替えも検討されましたが、建物が個性的なデザインだったため、既存のプランを活かした、デザイン性のある建物にリフォームすることにしました。企画・管理は、この地域で実績の多いタカギプランニングオフィスです。どんな建物ができあがったでしょうか。施主の Y 様と設計の谷尻誠氏に、お話をうかがいました。

 

-躯体のプランはほとんど変更ないそうですね。
Y 様:内装をフルリフォームしたという感じです。古い建物だったのですが、屋上に温室があったり、3階にルーフバルコニーがあったりと、特徴のあるデザインだったもので、それを活かしてみるのも面白いかなと思ったんです。もともと僕は建築が好きで、借り手の立場になってものを作ってみたかったんですね。既存のものを活かすデザインが気に入っていた谷尻誠さんに設計をお願いしました。

-既存のサッシをそのまま使い、モルタルの床や鉄骨をあらわしにして建物本来の姿を強調しながら、新しい素材をあちこちに取り入れられています。
Y 様:周辺はアパートが多く、リーズナブルなコストで差別化を図っていただければと思いました。

設計の谷尻誠氏にも、コメントをいただきました。
「このプロジェクトは、江古田にある古い鉄骨造3階建ての賃貸アパートのリノベーションです。今までは、1階、2階を賃貸として、3階はオーナー住居として利用されていました。各階へは専用のアプローチ、また各階違った間取りのある計画となっており、リノベーションをきっかけとして、建物全体を賃貸することが当初から決まっていました。
かなりの老朽化が進んでおり、また性能も決して高い建物ではなかったので、私たちは、リノベーションという行為が、性能を確保していきながら、空間としての魅力が生まれる計画を提案させていただきました。具体的には、1階は布基礎でできていたため、床下からの湿気を防ぐために床を全て撤去して土間のある空間に、3部屋が並んでいる2階は、中心の部屋以外の天井を抜いて隣家との遮音工事を、3階は防水工事に伴い外断熱を、また当初から屋上に設置されていた温室を利用して、とても大きなバスルームを計画しました。
各部屋に共通して言えることは、大きな間取りの変更をすることなく、減築していくことで空間の魅力と性能を確保していったということです。減築といっても、単純に減らすのではなく、どう減らしていくかということを我々は慎重に考え、残し方を設計していきました。出来上がった空間は、数十年という時間を経過した部分が過去の記憶を継承しながらも、新しさのある、この場でしか成立しない空間が出来上がりました。
これからの時代、リノベーションという行為が、より社会で必要となっていく中で、私たちは従来の解体という作業の中に、新しい設計の方法を見つけ出し、これからのリノベーションにおける設計の拡がりをここでは求めました。時間を経過した空間と、新しさが共存する空間は、なんだかビンテージのジーンズと、新しいシャツの着こなしのような、ほどよく力の抜けた居心地の良い空間になったのではないかと思います」
それぞれが個性的な部屋に生まれ変わり、入居者の方の新しい暮らしを演出していくことでしょう。

所在地:中野区
構造: 鉄骨造
規模:地上3階 + 塔屋
用途:集合住宅
設計:谷尻誠/サポーズデザインオフィス
改修場所:内装、外部手すり等塗装工事、キッチン、浴室等設備工事
完成:2010 年8 月
施工担当:若井、松前

 

123-4  メンテ魂~その後、お住まいはいかがですか~ 第 29 回 祖師谷の家 M 邸

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撮影:編集部

2000 年竣工した「祖師谷の家」は、オーナーの M 様が整体の指導者ということで、室内環境に非常に配慮したものになっています。壁や天井にはクロスを一切使用せず、珪藻土やマジックコートという左官材料、無垢の木材を採用、室内の空気は快適です。28 畳の備後畳の指導室は、L 字型という変形の部屋で、竿縁天井と照明、柱の割付に設計の今井均氏は工夫を凝らしました。庭に面した窓はアルミサッシ+木製のガラス戸に障子戸を設け、和の趣を生かして断熱と防音に効果を上げています。今回のメンテナンス工事のご依頼に際し、今井均氏と現場を担当した弊社営業部課長畠中と伺いました。

―お住まいになって 10 年、住み心地はいかがですか。
M 様:おかげさまで、気持ちよく暮らしております。28 畳の指導室は奥行きがあり、ちょうど待合室からの眺めがいいんですよ。会員からも好
評です。畠中:マジックコートや珪藻土の壁なので空気が心地よく、またきれいにお使いいただいているので、室内は新築とほとんど変わりません。壁に埋め込んだ本棚の木の敷板を少し奥にして角を丸くするなど、あちこちの収まりに設計の今井先生の工夫が凝らされています。
今井:このような材料は、時が経つほど、味わいが出てきます。今回のメンテナンスは、外部ですね。屋根に多機能性断熱塗料ガイナを塗装します。2F はオーディオルームだけRC造にしてありましたが、木造部分は屋根裏に熱がこもりやすいので、屋根に塗装することにしました。

畠中:ガイナは、特殊セラミックを塗料化した多機能性環境改善塗材です(塗るだけで断熱を可能にしたほか、遮熱・結露防止・防音・防汚・空気質改善など、15に及ぶ機能を発揮する。㈱日清産業)

今井:また、北側の 2 階の居室部分が木造で寒いということなので、そちらには断熱材を貼ることになりました。

畠中:こちらに施工するラムダはセメント、硅砂、無機質充填材などを主原料とする無機不燃材で有毒ガスを発生しません。中空構造で、嵌合部も密着しているので、台風や地震にも強いですね。高温・高圧の水蒸気養生(オートクレーブ養生)することで強度と耐久性を高めています。

今井:お風呂はこんなにきれいに使っていらっしゃるところはめったにないですね。

M 様:使った後、さっと拭いているだけですよ。

今井:そういうことが大事なんですね。きちんとお掃除していただければ強い洗剤などかえって不要ですから。

M 様:建物も 10 年建ちましたから、必要なところは手入れをして、不具合が出ないようにしたいですね。人間の身体も同じです。適切なときに、適切なことをやっておくことが大事ですね。

―本日はありがとうございました。

構造:RC+S 造
規模:地下 1 階 , 地上 4 階
用途:共同住宅 + オーナー邸
設計:ASKA 小松清治建築研究所
完成予定:2011年1月

 

121-4 メンテ魂~その後お住まいはいかがですか~   第 28 回 自己責任の家 H 邸

撮影:編集部

 

2004 年竣工当時「自己責任の家」という家で ShinClub 50 でご紹介させていただいた H 様のお宅は、RC 造にドライビット工法(東邦レオ)の外断熱を施した、エコ住宅です。「自宅は建築家に任せきりにせず、自分の判断で自己責任の家をつくろう」という H 様の姿勢から、施工者側も学ばせていただきました。法律関係のお仕事をされていながら、CAD も描くという H 様は、地元施工業者に実施設計と概算見積を依頼されて、WEB で知識を得ているうちに、弊社のサイトにたどり着き、外断熱に対する「打ち込み工法はよくない」という弊社の説明に感心されたことから、施工を依頼されました。第一建築部の窪田部長と伺いました。

―その後、お宅の状況はいかがですか。
H 様:おかげさまで大変快適です。
窪田:当初、漏水で何回か調整に伺っています。
H 様:地下において少し水が漏りましたが、きちんと直していただき、ありがとうございました。
H 様:外断熱工法はRC造の住宅にあまり普及していないようですが、お勧めです。冬はダイニングに床暖房、寝室にデロンギをつけるだけです。エアコンは使いません。実は、専用の外断熱RC快適マニュアルを作っています。おかげで冬はトイレも寒くありません。
―いったいどういうものですか。
H 様:シャッターとカーテンの開閉を 1 日の時間の中で季節に応じて変えて行うということです。外断熱の家を計画した際、例えばベランダと
躯体の縁を切った方がいいとか、屋上の庇の出っ張りは最小限にするとか、にわか仕込みの勉強で工夫しようとしましたが、今思えば、かなり
どうでも良いことでした。窓からのロスが圧倒的に大きいのですね。そのため、カーテンは本当に重要と身に沁みております。

夏場は、東側のシャッターはタイマーで午前11時に、3 階図書室上部は午後3時に開くようにし、2階西側は午前11時閉まるようにしてあります。冬場は逆にしてあります。外断熱 RC 造の設備としては必須に思われました。少なくとも今時の流行の雨戸なし、ハイサッシュガラス張り住宅よりは遙かにマシです。
―昔の家は家庭生活の中で温熱環境を工夫することを主婦なり、家を廻す人がやっていたんですよね。H 様のように、生活する方がどれだけ理解して温熱環境をコントロールできるかが、重要ですね。

H 様:ですから、カーテンの開閉自動化もできないかな、と思っているのですが難しい。さらに言えば、庭には大きくなる落葉樹を植えるとよ
いと思います。夏場は日射を遮り、冬は取り入れられるように。家をすっぽりくるむくらいが理想ですね。今年、南側に植えた枝垂桜にやっと花が付いたんですよ。まだまだですが、引っ越すのは惜しいですね。
―奥様はどのようなご意見ですか。
奥様:カーテン閉めろという指示は季節が暑い、寒いと固定してしまえば対応しやすいんですけど、春のように途中の場合は日によって変わるので大変ですね。明るさがほしいときもあります。
窪田:明るさを下部から取り込むシャッターもありますね。
H 様:さすが窪田部長、何でも良くご存知ですね。ShinClub も読んでいますよ。建築の話をこれからもどんどんしてほしいですね。
―本日はありがとうございました。

所在地:町田市
構造: RC 造
規模:地上3階
用途:専用住宅
設計:H 様
完成:2004 年 2 月
施工担当:中村

120-4 メンテ魂~その後お住まいはいかがですか~27回 inner skin house

撮影:編集部

inner skin house

 

インターフェイスデザイナーの K 様、ジュエリーデザイナーの奥様の仕事場を兼ねた「インナースキンハウス」は、2枚のプロフィットガラスを
合わせた美しいファサードが特徴的な建物です。鉄骨造に 100 mm 厚 の ALC を横向きに積み上げた外壁、ガラス繊維に PVC の平織りを組み合わせた特注の膜材など、オーナーと設計者のさまざまな試みを実現した、機能性あふれる実験住宅です。ジッパーでつないだ面ごとに巾着や丸窓、ストラップを設けて、シンプルな室内に豊かな表情の内膜が建物の名前の由来となっています(写真2点参照)。第一建築部部長窪田と伺いました。

 

―竣工時、オープンだった 1階は、仕切りを設けて和室と奥様の作業スペースを作られたんですね。

K 様:知人や親戚が泊まりに来ると仕切りがないので厳しかったのですが、和室が 1 つあると便利だと、近くの工務店に簡単に作ってもらいました。扉も付けて床下にもたっぷり収納を設けたので便利になりました。
―ほかはほとんど変わりないでしょうか。2階の内壁の膜もきれいですね。
K 様:巾着を使った部分だけは、本棚がほしくなって、自作のものを取り付けました。内膜はしわが出たりするので、何回か張り直しています。メーカーの太陽工業にとっても半分実験のようなものですね。
―キッチンもきれいにお使いですね。
窪田:業務用キッチンを住宅に採用する、さきがけでしたね。今はこういうキッチンの照明は標準装備ですが、これは特注でした。照明のトラ
ンスはどこに入っていますか。結構大きいんですよね。
K 様:照明はハロゲン電球 12V です。天井に入っています。嵌め込むのに断熱屋さんがだいぶ苦労されていました。

―暑さ、寒さはどうですか。
K 様:プロフィットガラスの抱き合わせは、今話題のペアガラスのような効果があり、室内は快適です。ALC も思いのほか断熱効果がありました。
窪田:ALC はよく工場などの外壁に使われ、対費用効果があり、階高の高いのも平気です。今、意匠の点ではアスロック(押し出し成型セメント板)を使う先生が多いですね。ただ厚さ 60mm と薄い場合、断熱材を吹き付けることになる。ALC100mm厚のこの建物は、軽量鉄骨を C 型チャンネルで組み立てているため効率的です。
K 様:ALC の 3X6 で 1800mm という壁サイズは、私のようにセルフビルドを好む場合、部材が平均サイズで済むので、便利ですね。
ほかに、竣工後 3 年間位、プロフィットガラスの 2 枚の間に梅雨どきになると水滴が見えていましたが、最近出なくなりました。

奥様:一番気になるのは、3 階の北側キャットウォークのドア周りの結露です。ペアガラスに替えるとか、上半分が網戸になるドアにするとかできませんか?
窪田:ペアガラスは既存のドアの溝に合わないんです。溝に合う真空ガラス「スペーシア」もありますが、高いですね。最近内側がプラスチックのサッシも出てきています。空気層が増えて断熱効果があるものも出ています。そういう方向で直していけますね。
基本的に鉄骨造は高くつきます。コンクリート打ち放しではそのままで許せても、鉄骨造では、隙間がある分、結局内装をきちんとしないといけませんから。
K 様のように建物の完成後、時間をかけてご自身が内装を作っていくという点で、この建物は新しい住まいの作り方の良い例だと思います。

―本日はどうもありがとうございました。

 

所在地:渋谷区
構造: 鉄骨造
規模:地上3階
用途:専用住宅
設計:内海智行/ミリグラムスタジオ
完成:2001 年 2 月
施工担当:森田、尾島