213-1 アーティスト・イン・レジデンス

 写真は、この度弊社がリニューアル工事をさせていただいた、新しいタイプのオフィス・アパートメント「PORTAL Apartment & Art POINT」です。渋谷駅西口からJR山手線の線路沿いの道を恵比寿方面へ歩くこと5分。グレイの色調の楽しい壁絵が施された建物に、グリーンとウッドベンチ、キッチンカー、赤と白のテントなどが置かれたバックヤードが現れ、道行く人の心を引き付けます。
(線路側のバックヤードは上の写真のエントランスの反対側になります)
 今回のリニューアルをプロデュースしたのは、トランジットジェネラルオフィス、企画・管理は、同グループの株式会社リアルゲイトです。トランジットグループは2010年、お台場・青梅地区で日本最大級のSOHOオフィス、「the SOHO」(約380区画)を手掛けて、小規模事業者のための新しい働き方を提案し、注目されました。2009 年の創業以来、シェアオフィスのリーディングカンパニーとして、都心部を中心にクリエイター層に支持される施設の企画・運営を32棟行っています。
最近では、クリエイティブオフィス「PORTAL POINT」シリーズを麹町、有楽町、青山の3カ所で展開。第4弾となる、この渋谷・桜丘町では、サービスアパートメントという“住む”機能を付加させ、クリエイターやベンチャー企業、海外のツーリスト向けに、さらにフレキシブルなライフスタイルを提供していきます。
なかでも、海外アーティストによるアートが施された2部屋を、「アーティスト・イン・レジデンス」で実現しました。
「アーティスト・イン・レジデンス」とは、アーティストが一定期間、その場に滞在して作品を完成させるというものです。古くは、ミケランジェロ時代の工房から存在しており、20世紀に入ってからはNYの芸術家村「Yaddo」などが有名です。海外に比べ日本では自治体で行うものが多く、自然が豊かで安全な日本での滞在を希望する海外アーティストは、少なくないようです。アーティストがその地域にあるものに影響を受けながら展開する作品は、制作活動自体が成果のひとつといえるようです。
一方で、アーティストの作品自体に主体を置くのであれば、行政の条件などがない形も、今後は増えてくると予想されます。
今回、アーティスト・イン・レジデンスの企画を行い、サービスアパートメントにおいてアーティストを選定したのは、長年、渋谷カルチャーを牽引している BEAMS。そして実際の2 部屋のアートを担当したのは、インドネシア在住のナターシャ・ガブリエラ・トンティと、タイのラキットです。ナターシャ・ガブリエラ・トンティは、2015 年「⻩⾦町バザール 2015」へ参加し、「UNKNOWN ASIA ART EXCHANGE OSAKA 2016」において、 BEAMS賞、ヒロ杉⼭賞、⽇下慶太賞を受賞するなど、オーストラリア、⽇本で活躍する注⽬のアーティストです。ラキットは、ステンシルで描かれた幾何学模様が特徴的なストリートペインターとして活動を始め、韓国、インド、⾹港、ドバイなどでも活躍。カシオG-SHOCKのスペシャルパッケージ、ラコステ、Live 、Smirnoff など、多くのアートプロジェクトを⼿がけています。
さらに、最初に述べたバックヤードの壁画やルーフトップに、独特の壁画(ミューラル)を描いているのは、Ly(リイ)さん。日本で生まれ育って、東京を中心に日本、アメリカ、フランス、タイ、マレーシアなどで壁画を制作。国内外でストリートペインターとして活躍中です。相棒のLUV(ルーヴ)くんという真っ黒なキャラクターの絵は、他にも建物内部の共用スペースのあちこちに見つけることができます。
アートがふんだんに盛り込まれた、リニューアル物件ならではの楽しい空間を、感性豊かな入居者の方々が、さらに使いこなしてくださることでしょう。

212-1 ないものを創る

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「TIERS(荒川技研工業ショールーム) 」  撮影:平賀哲

 写真は、先日オープンした、表参道の「TIERS(荒川技研工業ショールーム)」です。10月16日から22日まで開催された、「DESIGNART 2017」では、4グループのアーティストの作品を、荒川技研工業のワイヤーシステムを用いて、新しい建築空間に展示しました。
期間中は、台風21号の影響で天気がすぐれなかったにも関わらず1000人以上の人が会場を訪れ、予想以上だったという社長の荒川創様にお話を伺いました。「今回は、ショールームを間借りしていた荒川クリニックの建物が老朽化したため、新たに独立したものを建てることにしたのですが、製品を単に展示するだけでなく、さまざまな使い方を提示して、ご覧いただける機会としました。(p4参照)

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荒川創 荒川技研工業株式会社代表取締役社長

もともと研究者だった父、荒川秀夫が『ないものを創る』を理念に立ち上げた会社です。今で言うベンチャー企業ですね。1975年に世界に先駆けてワイヤー金具の調整機構『ARAKAWAGRIP』を開発し、その後この技術を核とした用途製品を次々と生み出して販売事業を展開してきました」

 荒川技研工業のワイヤーシステム「ARAKAWAGRIP」は、展示物が1kg未満のごく軽量なものから100kg以上ある展示物まで、用途に合わせた幅広いラインナップがあります。ボールベアリングを利用していて、ワンタッチでレベル調整ができ、確実に安全にワイヤーを固定できる金具です。様々なパーツの中から適切な金具を選択し、応用することにより、世界に一つだけの空間演出が可能になります。売り上げの15-20%は輸出関連で、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにも拠点を広げています。
アメリカのワシントン・ナショナルギャラリーや、ロシアのトレチャコフ美術館などの海外の美術館でも採用され、美術作品の展示だけでなく、ショップのディスプレイや大阪道頓堀のリバーウォーク、鹿児島空港展望デッキなど、 土木・建築の分野でもその利用の可能性を広げています。
「ないものを創るという点ではこれまでも自分達だけでなく、一緒に使う事を考えてくれるクリエーター、デザイナー、建築家といった人々と協働作業を行ってきました。新しく出来たものを提示すると、新たにそれを使いたいというお客様が現れる、という繰り返しで、今日まで来ました。ですから、そういうクリエーターの方たちと一緒に仕事をし続ける空間として、単なるショールーム、ギャラリーを超えた、ものづくりのベースを作りたいという思いがありました」と語る創氏。
長男ということで「親から会社を継ぐようにと言われたことは一切ない」とのことですが、もともと土木・河川の設計を5年ほど経験してからの入社です。さらに次男の均さんは機械メーカーで製品設計の経験の後、入社。そして1番下の真さんも、工作機械メーカーに勤められていましたが、2年前にやはり入社しました。「3人とも、5,6年、外の世界を見てきて、やっぱり会社の可能性を考えるとこちらがいいということになってしまいましたね」と笑顔の創氏。 クリエーター達のデザイン・発想力に応える、ご兄弟3人のさらなるものづくりの力が発揮されそうです。

211-1 働き方改革

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「河路アパートメンツ 」撮影:齋部功

写真は、このたび中原街道の近くに建ち上がった多世帯住宅です。屋上にパーティルームをそなえた建物が、お客様の新たな暮らしの可能性を広げることでしょう。
ところで、設計の木下道郎氏の現場を担当するのがこれで2度目という現場監督のMは、思わぬ成長を見せて木下氏を喜ばせたのですが、それは一体なんだったでしょうか? 答えは次のページでお話しましょう。
もともとおとなしく、口数が少ないタイプのMですが、最近は施工管理面で進境著しく、現場終了後は、「こんなに?」と思えるほどの長い休暇を取りました。現場監督は、竣工間際には休みもままならないことが多いのですが、現場を終えたら自分をリフレッシュすることの大切さを身に付けたM、「大いなる成長」を周囲に感じさせたのでした。上司や設計者の先生からものづくりの楽しさ、建築の面白さを学ぶこと、そして「魅力ある職場」を作るには、自身の意識改革も必要なのだと改めて思います。

9月28日、衆院解散が決まり、「10月22日投開票」という日程が発表されました。争点はいろいろ言われていますが、この5年間で、電通新入社員の過労死自殺などを受けて「働き方改革」という言葉が言われるようになったこともその一つです。働きすぎで、精神的にも追いつめられる若い人たち、また子育て中の共働き世帯への環境整備など、これまでの高齢者に重点を置いた福祉政策から、若い世代への施策の必要性が求められています。
実際、最近の建設業界では、「仕事はあっても、人がいない」というのが現状です。リーマンショック以後、厳しい受注状況による建設業就業者数の減少が続きました。もともと構造的に建設業界の年間総労働時間は全産業より2割長く、3K就職先として若い人たちから敬遠されてきました。
しかも建設業の技能労働者の約3分の1は 55 歳以上と高齢化が進み、次世代への技術継承も課題となっています(国土交通省調べ、2016年)。

以前から、建設現場は完全週休2日制を導入するよう、政府と業界団体の申し合わせがありましたが、規制緩和の進展で、公共工事も含め、ほとんどの現場が土曜日にも作業をするようになってしまっていました。何しろ工期が大事なのです。弊社も隔週で週休2日制となっていますが、土曜日に現場が動いているところがもちろんあります。

政府は2019年導入を目指して「残業時間の罰則付き上限規制」を設けましたが、建設業については、人出不足が深刻なので、5年間の適用猶予としました。
しかし、新国立競技場の建設工事現場の若い社員が、違法な長時間労働が原因で自殺して、家族が労災申請したことから、8月28日、工事の発注者と受注者が守るべき長時間労働の是正に向けて指針をまとめました。週休2日制の確保、そして特に工期についての配慮を求めています。
「資材や労働力を調達したり、雨や雪で作業ができなくなりそうだったりする期間を考慮し、予定した期間内に工事を終えるのが難しくなれば、工期を変えるよう求め、下請けにも同様に工期に配慮する必要がある」としています。法的強制力はなく、なかなかすぐには難しい点もありそうですが、工期を守るためにいろいろな偽装事件が起きたりもしました。 これから発注する工事が指針の対象とのことですが、業界全体で行っていかなくてはならないことでしょう。
何にもまして、建設業は「ものづくり」の楽しさが最終的には仕事の原動力になります。その心を失わないようにしていきたいものです。

 

 

210-1 AI(人工知能)

「MIMOSA PUDICA 」撮影:平井広行

「MIMOSA PUDICA 」撮影:平井広行

 

最近のニュースといえば、ゲリラ豪雨や迷走台風など相変わらず異常気象の話題にこと欠きません。九州北部の豪雨や、アメリカを襲ったハリケーンの被害を見ていると、まるで津波が来たような光景がテレビに映し出され、とても他人事には思えません。こうした災害に対し、天気予報や警報などの予知システムも発達し、雲の動きや雨量の予測もその精度を高めています。そして、その異常さを伝えるための「50年に1度の雨」とか「100年に1度の水位」という言葉が頻繁に使われるのですが、一見わかりやすいようで、実は何のことやらよくわからない表現ではないでしょうか。実は、こうした表現にならざるを得ないのには、それがAI(人工知能)による情報だということに関係しているようです。

ご存知の通り、AIとはコンピュータが膨大なデータから様々な現象の因果関係を分析し、将来予測に役立てる技術のことです。天気予報はその代表的な応用分野で、膨大な過去の天気図データを入力し、気象の変化を予測します。人間をはるかに上回る巨大なスーパーコンピュータの記憶量と分析速度を駆使すれば、従来の予報官の経験と勘よりも精度も確度も高い予測が可能となります。最近では、この技術を応用して、NTTドコモと東京無線などが共同でタクシーが顧客を見つける確度を高める実証実験を開始しました。アメリカではすでに犯罪予測にAIが活用され、日本でも京都府警が昨年から導入しました。

このように、AIというと何か機械が自分の意志で勝手に動き出すようなイメージをしがちですが、現状では、これまで人間の「経験と勘」に頼っていた分野での「AIへの置き換え」が急速に進んでいます。確かに従来の天気予報は、ベテラン予報官の経験や勘に頼っていたわけですし、タクシーの客探しや、警察の巡回パトロールや職務質問なども、まさに職人芸のような分野です。「AIが人の仕事を奪う」と言われているのも、まさにそのためだと思います。

こうして、これまで人間では予測できなかったことをAIが予想してくれるようになったのは良いことなのですが、そこには大きな問題があります。それは、AIの予想はあくまで膨大なデータからの統計的な予測であり、計算の結果です。先ほどの「50年に1度の雨」とは、言葉の通り「50年に1度の頻度で発生する」という意味であり、予報官がメカニズムや原因を詳細に説明してくれるので、私たちも理由がわかったような気になりますが、AIは膨大なデータを元に予測しているだけで、理由や原因を説明してくれているわけではないのです。

今年の5月、人間とAIが将棋で戦う「電王戦」で、AI将棋ソフト「PONANZA」と佐藤天彦名人が対戦し、AIが勝利をおさめ「ついに人間はAIに負けた」と、大騒ぎになりました。淡々と次の手を指す2本の長い手の機械の前で、腕組みしたり天を仰いだりと名人のあがく姿が象徴的でしたが、その傍らでロボットは誇らしげに威張ることも無く、開発者も「うれしいですが、説明はできません」と至って謙虚なのが不思議でした。AI世代と言われる中学生の藤井壮太君の破竹の29連勝に国中が沸きました。
もしも人類の、次の飛躍に役立つならば、AIのこれからはとても楽しみではないでしょうか。