211-1 働き方改革

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「河路アパートメンツ 」撮影:齋部功

写真は、このたび中原街道の近くに建ち上がった多世帯住宅です。屋上にパーティルームをそなえた建物が、お客様の新たな暮らしの可能性を広げることでしょう。
ところで、設計の木下道郎氏の現場を担当するのがこれで2度目という現場監督のMは、思わぬ成長を見せて木下氏を喜ばせたのですが、それは一体なんだったでしょうか? 答えは次のページでお話しましょう。
もともとおとなしく、口数が少ないタイプのMですが、最近は施工管理面で進境著しく、現場終了後は、「こんなに?」と思えるほどの長い休暇を取りました。現場監督は、竣工間際には休みもままならないことが多いのですが、現場を終えたら自分をリフレッシュすることの大切さを身に付けたM、「大いなる成長」を周囲に感じさせたのでした。上司や設計者の先生からものづくりの楽しさ、建築の面白さを学ぶこと、そして「魅力ある職場」を作るには、自身の意識改革も必要なのだと改めて思います。

9月28日、衆院解散が決まり、「10月22日投開票」という日程が発表されました。争点はいろいろ言われていますが、この5年間で、電通新入社員の過労死自殺などを受けて「働き方改革」という言葉が言われるようになったこともその一つです。働きすぎで、精神的にも追いつめられる若い人たち、また子育て中の共働き世帯への環境整備など、これまでの高齢者に重点を置いた福祉政策から、若い世代への施策の必要性が求められています。
実際、最近の建設業界では、「仕事はあっても、人がいない」というのが現状です。リーマンショック以後、厳しい受注状況による建設業就業者数の減少が続きました。もともと構造的に建設業界の年間総労働時間は全産業より2割長く、3K就職先として若い人たちから敬遠されてきました。
しかも建設業の技能労働者の約3分の1は 55 歳以上と高齢化が進み、次世代への技術継承も課題となっています(国土交通省調べ、2016年)。

以前から、建設現場は完全週休2日制を導入するよう、政府と業界団体の申し合わせがありましたが、規制緩和の進展で、公共工事も含め、ほとんどの現場が土曜日にも作業をするようになってしまっていました。何しろ工期が大事なのです。弊社も隔週で週休2日制となっていますが、土曜日に現場が動いているところがもちろんあります。

政府は2019年導入を目指して「残業時間の罰則付き上限規制」を設けましたが、建設業については、人出不足が深刻なので、5年間の適用猶予としました。
しかし、新国立競技場の建設工事現場の若い社員が、違法な長時間労働が原因で自殺して、家族が労災申請したことから、8月28日、工事の発注者と受注者が守るべき長時間労働の是正に向けて指針をまとめました。週休2日制の確保、そして特に工期についての配慮を求めています。
「資材や労働力を調達したり、雨や雪で作業ができなくなりそうだったりする期間を考慮し、予定した期間内に工事を終えるのが難しくなれば、工期を変えるよう求め、下請けにも同様に工期に配慮する必要がある」としています。法的強制力はなく、なかなかすぐには難しい点もありそうですが、工期を守るためにいろいろな偽装事件が起きたりもしました。 これから発注する工事が指針の対象とのことですが、業界全体で行っていかなくてはならないことでしょう。
何にもまして、建設業は「ものづくり」の楽しさが最終的には仕事の原動力になります。その心を失わないようにしていきたいものです。

 

 

210-1 AI(人工知能)

「MIMOSA PUDICA 」撮影:平井広行

「MIMOSA PUDICA 」撮影:平井広行

 

最近のニュースといえば、ゲリラ豪雨や迷走台風など相変わらず異常気象の話題にこと欠きません。九州北部の豪雨や、アメリカを襲ったハリケーンの被害を見ていると、まるで津波が来たような光景がテレビに映し出され、とても他人事には思えません。こうした災害に対し、天気予報や警報などの予知システムも発達し、雲の動きや雨量の予測もその精度を高めています。そして、その異常さを伝えるための「50年に1度の雨」とか「100年に1度の水位」という言葉が頻繁に使われるのですが、一見わかりやすいようで、実は何のことやらよくわからない表現ではないでしょうか。実は、こうした表現にならざるを得ないのには、それがAI(人工知能)による情報だということに関係しているようです。

ご存知の通り、AIとはコンピュータが膨大なデータから様々な現象の因果関係を分析し、将来予測に役立てる技術のことです。天気予報はその代表的な応用分野で、膨大な過去の天気図データを入力し、気象の変化を予測します。人間をはるかに上回る巨大なスーパーコンピュータの記憶量と分析速度を駆使すれば、従来の予報官の経験と勘よりも精度も確度も高い予測が可能となります。最近では、この技術を応用して、NTTドコモと東京無線などが共同でタクシーが顧客を見つける確度を高める実証実験を開始しました。アメリカではすでに犯罪予測にAIが活用され、日本でも京都府警が昨年から導入しました。

このように、AIというと何か機械が自分の意志で勝手に動き出すようなイメージをしがちですが、現状では、これまで人間の「経験と勘」に頼っていた分野での「AIへの置き換え」が急速に進んでいます。確かに従来の天気予報は、ベテラン予報官の経験や勘に頼っていたわけですし、タクシーの客探しや、警察の巡回パトロールや職務質問なども、まさに職人芸のような分野です。「AIが人の仕事を奪う」と言われているのも、まさにそのためだと思います。

こうして、これまで人間では予測できなかったことをAIが予想してくれるようになったのは良いことなのですが、そこには大きな問題があります。それは、AIの予想はあくまで膨大なデータからの統計的な予測であり、計算の結果です。先ほどの「50年に1度の雨」とは、言葉の通り「50年に1度の頻度で発生する」という意味であり、予報官がメカニズムや原因を詳細に説明してくれるので、私たちも理由がわかったような気になりますが、AIは膨大なデータを元に予測しているだけで、理由や原因を説明してくれているわけではないのです。

今年の5月、人間とAIが将棋で戦う「電王戦」で、AI将棋ソフト「PONANZA」と佐藤天彦名人が対戦し、AIが勝利をおさめ「ついに人間はAIに負けた」と、大騒ぎになりました。淡々と次の手を指す2本の長い手の機械の前で、腕組みしたり天を仰いだりと名人のあがく姿が象徴的でしたが、その傍らでロボットは誇らしげに威張ることも無く、開発者も「うれしいですが、説明はできません」と至って謙虚なのが不思議でした。AI世代と言われる中学生の藤井壮太君の破竹の29連勝に国中が沸きました。
もしも人類の、次の飛躍に役立つならば、AIのこれからはとても楽しみではないでしょうか。

210-4  「建物再訪」 4. M邸 

大きなデッキの家

今回は、2001年に竣工した、2世帯住宅のメンテナンスのご紹介です。
2001年、奥様のご両親の家を建て替えて、2世帯住宅にされたM邸。1階の奥がご両親の世帯、前面道路側の3層の部分がM様ご夫妻の世帯で、ご両親の世帯の上に、庭に代わる大きなデッキを設置し、2階のリビングダイニングに連なる心地よい空間を作り出していました。当時は、隣接する南側の土地にはまだ建物が建っていませんでしたが、今は住宅が建っています。

竣工後16年が過ぎ、デッキの傷みが目立ち始め、その下の波板の鋼板にも一部錆がみられました。デッキ材の寿命は、「イペ」などのハードウッドで約20年ですが、場所によります。DIYショップなどで売っているSPFやレッドシダーなどでは約2年と耐用年数はかなり短くなるので、あまりお勧めではありません。そして、木粉と樹脂材を合わせた樹脂木があります。腐食や害虫にも強く、天然木に比べ、夏場少し熱くなりやすいのですが、耐用年数は20年以上と言われています。今回は古いデッキ材を撤去して、テラス面は半分に減らし、新たに樹脂木製のデッキ材を貼り直しました。ご両親世帯の屋根として露出する部分には、遮熱塗料を再塗布して温熱環境の変化を抑えました。
白かった建物外壁は全体に黒ずみ、軒裏に一部カビが見られ、また玄関の鋼製の庇にもかなり錆びている箇所が見られました。北側の隣家と境壁もクリーニングし、再塗装。また境壁を利用して、デッキを載せるためにかけられていた梁も、白く再塗装しました。
室内では、地下1階から地上2階までを貫く吹き抜けの鉄骨階段にサイザル椰子のカーペットを貼っていましたが、踏み板の一部が破れていたので、すべて貼り直し、擦れやすい角の部分には、アングルピースを組み込みました。
お子様も独立され、ご両親もお元気な今、M様はご自身の趣味を活かしたお仕事を、さらに楽しんでいらっしゃいます。

 

構造:RC造
用途:専用住宅
規模:地上2階 地下1階
竣工:2001年6月

209-1 戸建てリノベーション

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 今月は、吉祥寺に完成した、リノベーション住宅のご紹介です。写真は2階のリビングダイニング。天井までの大きな壁一面に備えつけられた木製の棚が、温かみのある空間を作り出しています。
 総務省の調べによると、平成25年10月1日現在の日本の総住宅数は6063万戸、うち空き家は820万戸、空き家率は13.5%で過去最高となっています。5年前と比較して空き家は62.8万戸増加しましたが、増えた内訳をみると、一戸建の空き家が49.6万戸で79.0%を占めており、戸建の空き家の増加が著しいことが分かります。また、空き家の種類別割合でみると、二次的住宅、賃貸用住宅、売却用住宅の割合はいずれも減少傾向にあるのに対し、「その他」に分類される空き家の割合が増えています。相続にあたり、相続人がいなかったり、行方不明だったりして、居住者がいなくなる「その他空き家」が増えているのです。
腐朽破損なしで利用可能な戸建ての空き家は約103万戸。そのうち最寄駅から1km以内で、簡易な手入れで居住可能な物件は全国で48万戸といわれています。もったいない話ですね。何とかしたいものです。
 空き家が増えた理由はいくつかあります。
・雇用が都市部に集中し、地方の人口が減少
・高齢者が増加し、介護施設などへの入居で住み手が不在
・世帯数が減っているのに新築物件数が増えている
・更地にすると、住宅を建てているよりも固定資産税が4.2倍
・解体費用が高いのでそのままにしている
加えて、「故郷の親の家を住み手がいなくなったとはいえ、売却する気にならない」とか「中古住宅よりやっぱり新築が人気がある」など、日本人特有の気持ちの問題もあります。
政府は「空き家対策特別措置法」を制定して、「特定空き家」といわれる、倒壊の危険があり、近隣に迷惑を及ぼしている空き家の解体を法的に行えるようにし、また解体した場合は、所有者に費用を請求したり、固定資産税の特例排除などを行えるようにしました。この法律はすぐに全国で一斉に取り締まるというものではなく、むしろ市町村が空き家の調査に費用を充てられ、必要な情報、調査が行えるようになる利点があるのです。
それにしても、使わないで放置している住宅は、いつかは空き家になるわけで、所有者は空き家になる前に建物を有効活用する方法を考えなければなりません。売却・更地化などを受けとめる中古住宅市場も、これまで日本は欧米に比べて規模が小さかったのですが、活性化に向けて施策がねられています。市場が充実すれば、住み手がどんどん手を加えて、建物の資産価値を上げる欧米のように、個々の建物そのものの品質、性能が評価されるようになってくるでしょう。
今ある建物を長く使うために適切なメンテナンスを行い、現代の生活にあったデザインにリノベ―ションする、例えば、仕事ができるスペース、趣味を活かせるスペースを作るほか、人が集う「住み開き」を行うなど、さまざまな工夫が既存住宅の新たな価値を生み出します。
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