232-4  建物再訪 5.C-House

建物再訪 5.C-House 室内テラスのある家


今回は、14年ほど前に竣工した品川区のC様のお宅にお邪魔しました。
施工担当者が退社して時間が経過、メンテナンスをご希望だったC様を結果的にずいぶんお待たせしてしまいました。それでも今回、屋上防水、クラックなどの外壁改修、撥水材塗布工事などの外部の改修工事を行いました。現場担当の小関に工事のフォローの状況を確認しながら、C様にお話を伺いました。

-こちらは高級住宅街という環境もあり、竣工当時はプライバシーに配慮したファサード、そして内部にトップライトから光が降り注ぐ大きな室内テラスがある建物としてご紹介しました(ShinClub59号)

小関:そもそも私が伺うようになったのは、テラスの上のトップライトのサッシの両脇から雨漏りしているとのご連絡をいただいたのがきっかけでした。聞けば、前任の担当者の頃からとのことで、メンテナンスで一時的には修復されたものの、実際は根治していませんでした。
前任者の引継ぎ事項を行うまでに時間が経ち、ほんとに申しわけないことでしたが、今回それに引き続き長期修繕的な外部の改修もお受けくださいました。
C様:家はどんどん劣化していたから、助かりました。小関さんには感謝状を出したいくらいです(笑)

-お引渡しの時はどうでしたか。
奥様:大満足でした。ネットで調べて芦原先生の事務所に突然お邪魔しましたが、小さな個人宅にもかかわらず、とても良く対応してくださいました。ミッドセンチュリーテイストのシンプルで美しい建物ができあがり、感謝感激でした。
C様:妻が風水も少し取り入れたいと言うことで、水周りの配置や建物の凹凸にもこだわりました。
奥様:そうですね。芦原先生も空気が流れる家が良い家とおっしゃっていただけに、植物が良く育つ、気の流れの良い空間になりました。

ところがその後間もなく、風通しの良いはずのリビングのフローリングが黒ずみ始め、日に日に広がっていったのです。原因は床暖房の水漏れによるカビで、2階の床を全部張り替える大工事に発展しました。

-それはうちの責任で対応させていただいたのでしょうか。
奥様:はい、日数はかかりましたが、辰さんに直していただきました。数年後、次に問題になったのがサンルームの雨漏りです。構造上、そうなりがちだとは聞いていましたが、やはり修復も難航しました。結果サッシ周りのシーリングとそれを取り囲むコンクリートの塗装を広範囲にしていただき、一時的には解消しました。でも最も担当者さんを困らせたのは、3階シャワー室から付近への水漏れで、こればかりは原因究明とその修復が大掛かりになりそうでしたので、この時期から互いに連絡が滞るようになりました。

小関:で、その担当者が退社してしまったため、2年位前から私が引き継ぐことになったのです。
本来、建物がいろんな事情で補修していかなくてはならなくなるのは、仕方が無い事なのです。ただ、せっかく有名な先生に設計していただいたバリューを損なうことなく保存していくことは大事なので、適切なメンテナンスを施していかなくてはなりません。

お客様の中にはコンクリートは永久にもつと思っている方も時にいらっしゃいますが、それはないです。木造よりは長持ちしますが、寿命が50年というハウスメーカーの説明書も「10年に一度、大規模改修をしたら」という条件付きだったりしますから、過度に景気のいい話をしても問題です。
お客様が困っているときにこそきちんとお話を伺う関係を築かないとだめだと思います。

奥様:なかなか小関さんのように親身になってくださる方はいないと思いますし、興味深く、為になる事柄をユーモラスにお聞かせくださるので話が楽しく尽きません。
C様:彼女、聞き上手なんですよ(笑)

-奥様は、デザイナーのお仕事を続けていらっしゃいますよね。
小関:ほんとに言われたことをこちらがきちんとやらなきゃならなくなるんです(笑)職人さんも名前で呼んで、工事の全体像までお話くださるから、自然に頑張ろうという気になります。

-職人さんにはお客様の笑顔が何よりですね。室内テラス、続くリビングはお友達を呼んでパーティにも最適な空間と伺っておりました。
奥様:仲の良い友人達を招いて時折食事会をしていましたが、最近は実家や親のケアに週末を充てています。でも余裕ができましたらこの空間を心温まる集いに生かしたいと願っています。
C様:友達は宝ですからね(笑)

-親御様のことで忙しい皆様は、ご自分の生活についての整理は先送りになりがちです。
奥様:はい、ですから消費税増税前のこのタイミングで工事が出来て、ほんとによかったです。
愛着が深いこの家に生涯済み続けていきたいですが、今後のことを思うと、売却にしても賃貸にしても良い状態にはしておきたいですね。

小関:建物のバリューを維持して、その価値をわかってくれる人に使ってもらえるようにお手伝いしていきたいですね。

-本日はありがとうございました。

所在地:品川区
構造:RC造 地上2階
用途:専用住宅
設計:芦原太郎/芦原太郎建築事務所
竣工:2004年12月
改修:2019年5月
工事内容:外部長期修繕改修工事
・ 屋上防水やり替え
・外壁メンテナンス
クラック処理、シール部打ち替え、
化粧塗装

210-4  建物再訪 4.「 M邸 」

大きなデッキの家

今回は、2001年に竣工した、2世帯住宅のメンテナンスのご紹介です。
2001年、奥様のご両親の家を建て替えて、2世帯住宅にされたM邸。1階の奥がご両親の世帯、前面道路側の3層の部分がM様ご夫妻の世帯で、ご両親の世帯の上に、庭に代わる大きなデッキを設置し、2階のリビングダイニングに連なる心地よい空間を作り出していました。当時は、隣接する南側の土地にはまだ建物が建っていませんでしたが、今は住宅が建っています。

竣工後16年が過ぎ、デッキの傷みが目立ち始め、その下の波板の鋼板にも一部錆がみられました。デッキ材の寿命は、「イペ」などのハードウッドで約20年ですが、場所によります。DIYショップなどで売っているSPFやレッドシダーなどでは約2年と耐用年数はかなり短くなるので、あまりお勧めではありません。そして、木粉と樹脂材を合わせた樹脂木があります。腐食や害虫にも強く、天然木に比べ、夏場少し熱くなりやすいのですが、耐用年数は20年以上と言われています。今回は古いデッキ材を撤去して、テラス面は半分に減らし、新たに樹脂木製のデッキ材を貼り直しました。ご両親世帯の屋根として露出する部分には、遮熱塗料を再塗布して温熱環境の変化を抑えました。
白かった建物外壁は全体に黒ずみ、軒裏に一部カビが見られ、また玄関の鋼製の庇にもかなり錆びている箇所が見られました。北側の隣家と境壁もクリーニングし、再塗装。また境壁を利用して、デッキを載せるためにかけられていた梁も、白く再塗装しました。
室内では、地下1階から地上2階までを貫く吹き抜けの鉄骨階段にサイザル椰子のカーペットを貼っていましたが、踏み板の一部が破れていたので、すべて貼り直し、擦れやすい角の部分には、アングルピースを組み込みました。
お子様も独立され、ご両親もお元気な今、M様はご自身の趣味を活かしたお仕事を、さらに楽しんでいらっしゃいます。

 

構造:RC造
用途:専用住宅
規模:地上2階 地下1階
竣工:2001年6月

207-4 建物再訪 3. 「大塚の家(N邸)」 

耐震重視のサスティナブル住宅

今回は、2007年竣工した3階建ての戸建て住宅のメンテナンスのご紹介です。
長野県を拠点にお仕事をされてきたN様ご夫妻は、ご親戚の家に隣接する土地を取得されて、2007年、耐震性を重視したRC造のご自宅を建てられました。設計は都心の住宅設計を得意とする細江英俊氏です。お子様の独立やご夫妻の仕事の仕方の変化など、ライフステージにフレキシブルに対応できるプランを創出。建物前面の駐車スペースに前庭を置いたり、親戚宅に繋がる北側にも裏庭をおくなど採光・通風にも配慮しています。2階のリビングも南側に大きく開口部のある快適空間で、エアコンの室外機は屋上に設置し、さらに太陽光発電パネルも設置しました。
10年を経て、外壁にクラックが出てきたり、水漏れ箇所が見つかったこともあり、建物全体を点検し、メンテナンスを行うことになりました。

―10年を経て、お住まいはいかがですか。
奥様:子供が楽器を弾くので、遮音効果があるのはいいですね。あと冷暖房は、エアコンだけだと厳しくて、大型のガス暖房を入れました。
N様:私は特に不満はないけど、こちら(奥様)は「温熱環境は、床暖とファンヒーターだけで済む松本の家の方が、東京の家より温かい」と言っています。
奥様:松本はとても寒く、最初から温かい家を作ろうと、ハウスメーカーで木造住宅を建てたんです。雪はあまり降らないけど、凍結がすごいんですね。こちらではまず、地震の心配があり、「とにかく頑丈な家」とRC造を選択しました。実際2011年の震災があったのですが、3階の本棚が倒れたくらいでほとんど問題はありませんでした。
―設備など変えたいものはありますか。
奥様:特にないですが、防犯のシステムを変えてもいいかとも思っています。
細江:住宅設備は環境に応じて新しくなります。当時としてはまだ一般的でなかったのですが、東京ガスのエネファームの導入、太陽光発電の採用というご希望があり、屋上はパネル部分で10mを超えてしまうため中高層のお知らせ看板まで出して工事しました。
奥様:今回、たまたま水漏れがあったので、屋上に上がったら、予想以上に土やごみが溜まっていて、ドレインも詰まっていました。でも結構、景色もよくて、「もっと自分で上がってもいいわね」という話が出ました。
細江氏:防犯のことも考え、簡易なはしごにしておいたのですが、「メンテナンスのために、使いやすいタラップをつけるのもいい」という発見がありましたね。
奥様:松本の仕事との二重生活もあと2年くらいで終わる予定ですから、家で過ごす時間も増えることでしょう。1階の北側の部屋には床暖房も設置していますが、部屋を使いこなせていないので床暖房をさらに広げて楽しいスペースにしたいですね。
それから今回、松本の家もメンテナンスしたのですが、そちらは「屋根壁パック」というわかりやすい形で、費用もあまりかかりませんでした。こちらのRC造は予想以上で、RC造の規模の大きい住宅のメンテナンス費がそれなりにかかる、ということを改めて知りました。
細江:資産価値という点では、売却とか部分的に賃貸にするという場面でもない限り、実感いただけないかと思いますが、お二人で1階だけで生活ができるようにもプランニングしております。資産価値を上げるためにも、きれいに使っていただき、十分なメンテナンスを行っていただければ、ほんとにありがたいお話です。
弊社営業:そのためにも、お客様と長いお付き合いをさせていただき、ぜひご意見をいただければ幸いです。
―本日はありがとうございました。

構造:RC造
用途:専用住宅
規模:地上3階
設計:細江英俊建築設計事務所
竣工:2007年1月

204-4  建物再訪 2.「N(エヌ:練馬集合住宅)」 

 

地域を育てる、マンションオーナー

 

 

今回は、ShinClub 74 でご紹介した、「Neri」こと「N」のオーナー芹沢尚弘氏と竣工当時若松均建築設計事務所で現場を担当し、「N」の住人としても芹沢氏と家族ぐるみのお付き合いを続ける、萩野智香氏(萩野智香建築設計事務所)にお話を伺いました。
練馬駅周辺の数多くの不動産物件を先代から引き継ぎ、街の環境を見据えて不動産オーナーのあるべき姿を提案する芹沢氏は、以前勤めていた「PDO」で「地域とのつながりを考慮した美しい共同住宅」案を募集。高齢者の多い下町情緒残る界隈の特性を生かした若松均氏のプランが採用され、2006年3月、共同住宅「N」が完成しました。竣工後10年を迎え、今回、外壁塗装、防水工事などの改修工事を行わせていただきました。

―芹沢様はずっと練馬にお住まいですね。
芹沢:曾祖父の代からになります。農家で、この辺はまだ畑ばかりでした。祖父の代から町の不動産屋さんとアパート経営を行うようになり、父の代で徐々に増やし、その後私が引き継いでいます。
常々疑問に思っていたのはほとんどの地主さんが経営を不動産屋さんに丸投げで、「相続対策としてある程度の収入が確保されればいい」くらいの意識だということ。集合住宅の規模になると、街の景観として影響力はすごく大きいのに、無責任にただ建物を作り続けています。最近はワンルームがほんとに増えてますが、練馬ではある程度の広さが確保された部屋に、シェアして半額ずつ払って住む方の需要が多いくらい。子供ができればファミリータイプに引っ越す、子育てエリアです。新築神話は賃貸住宅においても、最近の若い人には当てはまらないし、竣工後5,6年経って入居者が埋まらなくなっていく物件が多いです。東京の賃貸住宅は総じて余っていくわけで、建築家の設計による建物はもちろん魅力がありますが、それ以上に普通の建物をきちんとメンテナンスしながら、長く使っていくことも忘れてはならないことだと思いますね。
―「N」は近隣の方からの評判も良いそうですね。
芹沢:近所の人が通り抜けられる開放的なプランで、「いいものができたね」という声をいただいています。入居者の方も建物を愛し、ゴミを拾うとか、清掃を心掛けてくれ、長く入居してくれています。ですから工事に関わった設計者の方、工事の方、そして街の人たちをがっかりさせないよう、いい状態を維持していきたいですね。メンテナンスは、工事の最初の挨拶、工事中のお声、終わった時の挨拶など近隣の方や入居者との新たなコミュニケーションの機会です。お互い、顔を合わせて話を交わすことこそ、セキュリティに繋がります。5年後には、防犯や宅配BOX、インターネット環境など入居者のための更なるメンテナンスを計画しています。街行く人に「愛着がないんだな」と思われるような建物にはしたくはないですね。
―萩野さんも「N」の住人でいらっしゃったとか。
萩野:若松事務所に入所した頃、芹沢さんの所有するマンションに入居することになって、いろいろとお話を聞くようになり、物件を担当することになりました。完成後、今度は自分が関わった「N」に住み、自分が考えていたことの答え合わせができたことは得難い経験でした。特に、2つの反転するプランの部屋に住み替えたのですが、「これだけ室内の環境が違うんだ」ということを実感しました。10年間で建物が変っていくことも経験できて、本当に自信をもってお客さんに伝えられることが増えました。改めてお礼申し上げます。やはり、オーナーの志があるかないかの差で、環境はずいぶん変わると思います。芹沢さんのような方とよいまちづくりをしていければと思いますね。
―練馬を救う会、ですね。
芹沢:同世代のつながりは既にあるんです。他のエリアで、やはり先代からの不動産を引き継ぎ、新たに複数のマンションを建てられて、街に良い環境を与えているオーナーとのつながりも生まれそうです。
―本日はありがとうございました。

 

構造:RC造+S造
用途:共同住宅
規模:E棟地上3階 W棟地上4階
設計:若松均 /若松均建築設計事務所
構造設計:多田脩二
照明設計:戸恒浩人
企画:PDO
管理:スタジオエヌ
竣工:2006年3月