215-3 山縣洋/山縣洋建築設計事務所

2018年2月13日 at 9:37 AM

揺らがない骨格を持つ建築

 今月は、「浅草バレエスタジオ」の設計者、山縣洋氏にお話を伺いました。
大手ゼネコン竹中工務店に15年勤務の後、独立。それから15年、「ちょうど半々のキャリアになりましたね」と語る山縣氏。事務所のある生田は、ご実家も近く、同じ沿線にあるご自宅ももちろんご自身の設計です。(写真③)ガラスで囲まれた開放的な内部空間、豊かな自然環境を活かした家の領域が魅力的な住宅です。
-学生時代から、住宅づくりを希望されていたのですか。
山縣:いえ、最初はそういうことではなく、大学を出るときに、「一番技術力のある会社に入るぞ」という気持ちから、私の目からみて当時一番だった竹中に入りました。設計も重視している会社でしたし、学べることはどんどん学ぶ、という気持ちでしたね。
―竹中工務店では、もちろんRC造をかなり手掛けられたのですね。
山縣:大学校舎、病院など、ある程度の規模のものが多く、トータルで15年くらい勤務しました。7年経ったところで、2年間オランダのOMA、レム・コールハースの事務所ですね、そこで「ボルドーの住宅」を担当しました。いわゆる企業研修留学です。帰国して、6年ほどまた竹中で設計業務を行い、「オーディオテクニカ」の事務所を最後に担当して、独立しました。
 独立してからは、やはり個人の住宅が多いですね。ときどき事務所ビルも設計する機会がありますが、半分以上は木造です。予算と構造、住み心地も熱環境的には小さい規模の住宅は木造がいいですね。コンクリートは蓄熱性が高いので、1度冷えると温まりにくい。唯一、音の問題は、コンクリートの方が安心です。今回のスタジオのように、音が出る要素を持つ建物であれば、RC造です。
 建築のおもしろいところは、毎回クライアントが違うところです。敷地の条件、建てたいものが建て主によって毎回違う。だから、やっていて飽きない。楽しいですね。新鮮さを感じます。毎回「そこでしかできないものは何なのか」を考えます。だから、無理にRC造にしませんし、木造に拘るということでもありません。「このお客さんには、こういうやり方がいい」と判断します。また、設計だけでなく、土地探しや家具など、クライアントのいろんな要望にも応えています。
―今回は、大きなバレエスタジオを持つ住宅ですが、打ち放しのコンクリートの持つ力強さが際立つ1,2階部分に比べ、3階の住宅部分の色彩が鮮やかです。
山縣:1、2階のコンクリートの打ち放しの色と白、黒の色分けをする一方、ご主人は、イタリアにいらした頃、住んでいた家の壁の赤をとても気に入られていて、これまで東京でお住まいになっていたマンションでも、壁を赤く塗られていたと伺いました。日本人の感覚からするとショッキングな色ですが、それが、意外といい。私も最初、どうかなと思っていて、奥さんも反対でしたが、ご主人はどうしてもやりたいとおっしゃいますので、いろいろな赤のサンプルを出していくうちに、結局「いいね」ということになりました。
私も勉強になりました。リビングの基本の赤と、キッチン廻りはオレンジっぽい赤を、お母さんの部屋はピンクがかっている赤を合わせ、トイレは真っ青なティファニーブルーを使っています。それは、お母様のお好みですね。
これまでずっと設計をしてきましたが、色を使い分けるチャンスはめったにないんです。白とコンクリートと木の色。この基本色が多い。いろんな色を使いたいのですが、センスを要求されます。そういうことに長けているお客様の場合は、お話をよく聞いて、チャンスですから、もっと色を使っていきたいですね。天井も黒く見えるけど、実はこげ茶なんです。赤とこげ茶の組み合わせ。ガラスの仕切りが光を効果的にしています。
―今後は、どういう建物づくりをされていきたいですか。
山縣:建築の骨格として、しっかりとしたものをつくり、クライアントの要望を取り込んでいっても揺らがないようなものを創りたいと思っています。
―いくつかの学校で教鞭もとられています。
山縣:これまで、明治大学、東海大学や東京都の職業訓練校で教えてきましたが、学校で教えることは、図面を見て、その評価を瞬間的にアドバイスしなくてはならず、こちらにとってもいい訓練になっています。
最近の若い学生は皆、真面目ですね。ほんとに素直に言われたことをやってきます。でも、コミュニケ―ション能力が落ちていると感じます。携帯一つで何でも簡単に検索できてしまう。連絡もすぐにつく。実際に人と会って話をして解決する能力が、建築では重要なのですけどね。

-ほんとに、そうですね。本日は、どうもありがとうございました。

山縣 洋(やまがた よう)
1962年  東京都生まれ
1985年  東京工業大学建築学科卒業
1987年  東京工業大学大学院修士課程修了
1987年  株式会社 竹中工務店入社
1994-1996年 OMA (オランダ レム・コールハース事務所)
竹中工務店より研修勤務(「ボルドーの住宅」担当)
2002年  山縣洋建築設計事務所設立
2004年~ 明治大学兼任講師
都立品川技術専門校非常勤講師
2007年~ 東海大学非常勤講師
2011年~ 東海大学大学院非常勤講師
東京都立職業能力開発センター 赤羽校非常勤講師
川崎市住宅政策審議会委員
2016年~ 早稲田大学芸術学校非常勤講師