216-3 石川恭温/石川恭温アトリエ

2018年3月16日 at 11:47 AM

周囲との関わりが建築をつくる

 

 今月は、「尾山台みどり保育園」の設計者、石川恭温氏にお話を伺います。

—九州大学大学院を修了され、坂倉建築研究所東京事務所に入られました。
石川:坂倉事務所は日本の近代建築を牽引した坂倉準三によって創られた事務所です。入所を考えていた頃はすでに3代目の時代で、東京と大阪に事務所がありましたが、作風で近代建築の流れを汲む東京の方がいいかな、と。約16年間勤めました。

 

—どんな建物を担当されましたか。
石川:坂倉建築研究所は、住宅から公共建物まで大小問わず「建築」として仕上げていく職人的な集団という印象がありました。
私も坂倉を卒業するまで、小規模な集合住宅から「東京国立近代美術館本館増改築」や「都立保健科学大学」(現首都大学東京健康福祉学部)の増築など規模の大きなものまで幅広く経験させてもらいました。
独立してからはマンションや住宅からスタートし、その後教会やショールームなども手掛けさせていただきました。規模は小さいですけど、密度の濃さは坂倉の頃と同じようにやりたいと思っています。
最近は、窓から何を見せられるか、どのような光が取り込めるかとか、周辺との関わりの中でどういう空間を作れるかを強く考えているような気がします。「近隣」を意識することが多いからですかね。

 

―保育園のお仕事もいくつかなさっていますね。
石川:最初の設計は、小手指の保育園です。きっかけは、ある日「保育園のコンペがありますが、参加しませんか?」という電話を頂いたことでした。
その時も敷地が狭く、園庭をどう作るかがテーマでした。いくつかの園庭をスキップさせながら屋上まで連続させる園庭を提案し、選定していただくことができました。設計の中で、どうせ繋ぐのであれば山にした方が楽しいのではと事業主さんとのやり取りの中で実施案が定まっていきました。
その後もいくつかの園を依頼されましたが、町の中で敷地が限られているようなケースでは、園庭を立体化する手法は、子どもたちの活動に広がりを与えられる有効な解の一つだと思います。

 

—保育施設の建設に対して、音の問題で反対する住民は多いですね。今回は、比較的スムーズにご理解を得られたと聞いています。
石川:今回の敷地は線路が近く車が比較的多い道路に面している場所だったので、音については割合寛容的に見て頂いたのではないでしょうか。
それぞれの敷地で施設に対する見方は変わります。戸建の多い静かな環境では保育園建設、特にその音は気にされやすくなりますので、説明会の重要性が増してきています。

 

—子どもの声が町から聞こえなくなる方が寂しいですね。セキュリティも考えなくてはならないし、建築だけで解決されない部分も多いと思いますが、子育てを地域で応援していける環境を整えるのが大人の役目だと思います。
石川:そうですね。子どもの声を聞こえなくすることは、技術的には可能であっても健全な保育園とは言えないでしょう。
「窓は少なく」「遮音壁を高さ何mまで」という要望が出ることもあります。園側もプライバシーを守るため、なるべく園児の顔が隣や道路から見えないようにと言います。そうやって閉じていくと、保育園、園児と周辺住民との距離はより離れていってしまいます。
今回の敷地では、「開く」ことを考えることができました。物理的にはプライバシーや音の問題を解決しながら、子どもの遊ぶ風景が外から見える施設になっています。どういう子供たちがどう遊んでいるかがわかれば、きっと町の人たちも温かく見守ってくれるのではないでしょうか。近隣との良好な関係は先生の働きやすさも生むはずですし、子どもたちが安心感をもって生活するための基盤だと思います。

 

—本日はどうもありがとうございました。