219-3 小山貴弘/コヤマアトリエ

2018年6月27日 at 11:28 PM

建築のハードとソフトを両立させる

 

今月は「尾山台プロジェクト」の設計者、小山貴弘氏にお話を伺いました。
小山氏は、前川國男建築設計事務所出身の大宇根弘司(元JIA会長)氏の事務所に勤務され、町田文学館をはじめ多くの公共建築の設計監理に従事、「建築は莫大な資源を使い、出来上がってからは多くのエネルギーを消費する。このことに最大限の注意を払うべき」という教えを受け継いでいるとおっしゃいます。

 

-今回の建物では、コンクリートにレンガタイルを施し、地域の文化的な雰囲気を大事にしながら、さらに長寿命を考えたうえで、省エネにつながる建物を造られたとのことですね。
小山:クライアントは個人の方で、敷地をコインパーキングとして活用している時期にご相談をいただきました。ご家族との会話を重ねながら「建築の目的」についてイメージを膨らましていきました。そのイメージを具体的に計画していく中で「外断熱」や「レンガタイルの外壁」という設計にまとまっていきました。設計は順調に進みましたが、融資事務の過程では苦労しました。銀行は、建築物の性能を評価する基準がなく「コンクリート造の賃貸共同住宅」でしかありません。そんな中、住宅金融支援機構で私の考え方に共感してくれる担当者との出会いがあり、実現できる運びとなりました。金融機関を含め、理解者を増やしていく活動の必要性を改めて感じました。

 

-印象深いレンガタイルですね。
小山:レンガタイルは、設計段階から「織部製陶」の皆さんに協力いただきながら進めました。私のイメージを工場の職人に伝え、土のこと、焼成のこと、テクスチャーを与える技術など沢山のことを教わりました。とても奥が深い領域なので、これからもアイデアを彼らにぶつけながら試行錯誤していきたいと思っています。

 

-保育園の建築コンサルタントはどのような活動をしているのですか。

小山:4園を運営している社会福祉法人です。定期的に理事や園長を始め職員の皆さんと建物に関する意見交換をします。それを基に修繕計画や改修計画などを立案し、行政との打ち合わせや工事の監修などをしています。園児の多様な活動に対応できるように可動の建具や間仕切りを計画するのですが、彼らの好奇心は想像を超えます。可動するものは遊びの対象になりますから金物などの消耗がものすごく早いです。彼らに負けないシンプルなディテールを考えることを楽しんでいます。

-大学でも教鞭をとられていますね。
小山:芝浦工業大学で住宅の設計演習を非常勤講師として担当しています。今年で11年目ですから関わった学生が同じ業界で活躍しています。先日、辰の現場監督の中に授業で関わった方がいて、再会しました。一緒に食事をする機会にも恵まれ、思いがけず楽しい時間を過ごしました。

 

-設計以外の事業もされているのですか。
小山:不動産の取引や企業の顧問なんかをしています。建築の設計では、あらゆる条件をかたちに統合するために色々なアイデアを試しながら進めていきます。他業種でもこの思考の方法が有効であることがあり、プロジェクトを立ち上げる段階で相談を受ける機会が多く、様々な方々との関わりが増えています。かつては、妻がソムリエということもあり、ワインショップやカフェを経営していました。現在は信頼しているスタッフに会社を譲渡しており、彼らのお店として継続しています。こう話していると、設計事務所ではないように思われることが多いのですが、私としては建築的な思考の方法を使った活動なので、違和感なくできています。建築を学んだ人の職域はどんどん広がっていくように感じています。

 

建築は、長寿命化を考えた設計がなされたハードと、残したいと思う人の気持ち、つまりそこにある意味の両方がないと残らないものです。伊勢神宮は記号(そこにある意味)だけが残っています。長い時間軸で建築の在り方を考える必要があります。相続対策目的の建物もそうです。残される側は、「ちゃんとしたものでないと、もらっても」ということがあります。作り手の責任は重いです。ハードとソフトの両方にアプローチすることを大切にしていきたいと考えています。

 

-本日は、どうもありがとうございました。