224-3 田村芳夫/アトリエ・リ・ガ・テ都市建築計画

2018年11月10日 at 7:39 AM

時を経た美しさがある

今月は、「kaede」の設計者、田村芳夫氏率いるアトリエ・リガ・テ都市建築計画の事務所にお邪魔して、お話を伺いました。
―木造の黒塗りの板壁がいい感じですね。年代を経た建物のようですが。
田村:この建物は大正11年築ですので、関東大震災をのりこえて今あります。リフォームして事務所として使用しています。ジャッキアップして新たにベタ基礎を作り、壁をばらして構造補強したうえ元のような仕上げに復元しています。玄関のホールにあたる部分は畳敷でしたが板張りにし、適所に作りつけの本棚を筋交い替わりに配置しています。今年で11年がたちます。昨年この部屋の竿縁天井も取り外し小屋裏を表し、天井の高い空間にしました。
時間が経つと建築はまた違った味わいが出てくるものです。
―田村先生は建築研究所アーキヴィジョンに長くお勤めになられていたのでしたね。
田村:戸尾任宏先生(北海道から近畿地方までの各地に博物館建築及び文化財保存関係施設を設計)の下で修業しました。関西の仕事も多かったですが、今でも依頼が来たものは何処でも何でも受けますよ(笑)・・・・・・。
(以下、最近のお仕事をいくつかご説明いただきました)
千葉の松戸の介護施設ですが、予算がない中、介護施設などでも入居者の方が豊かに過ごせて、ご家族も「大事にされている」と感じることができるような空間を造ることが重要です。
足立区の介護老人保健施設では、環状7号線沿いで周りの環境は決して良くなかったけれども、騒音などに配慮し、内部がうまくつながっていくような空間を作りました。屋上庭園があり、富士山やスカイツリーが見渡せます。この施設は5階建てであったため、中央に大きく1階から2階の吹き抜けと3~5階の吹き抜けを2か所、各ゾーンをつなぐエントランスにも吹抜けを設け、のびやかな空間を造りました。

「ドーミーインPremium 神田(万惣ビル)」はビジネスホテルですが、限られた空間に大浴場と食事を提供するサービススペースを入れて、手すき和紙、なぐり仕上の突板、光り壁、間接照明などで和の空間を作りだしました。

「無極庵」という住宅では、線路とほとんど並行しているので、騒音対策が必要でした。1階は親世帯、2,3階が若者世帯で、事務所と賃貸住宅もついています。中庭を作り、遮音と通風、明るさを確保しました。杉本実型枠のコンクリート打ち放し、竹のルーバー、溶融亜鉛メッキ鋼板の外壁、1階は桐の床、和紙の壁、漆や柿渋の和紙で床の間や襖を構成し、上層は漆喰と打ち放しの吹き抜け空間です。音も予想以上に抑えられて、オーナーも満足されています。こういう賃貸住宅では、それなりに予算があわなければなりませんが、今は工事費がほんとに高く、何とか、施工会社にも頑張ってもらいたいと思っています。

「kaede」の建て主、Sさんにも「街並みに配慮した、クォリティの高いものを作りましょう」と言い続けて頑張っておりますが、単純にお金だけでなく、Sさんはゆったりと考えられている、その姿勢に頭が下がります。何とか収益を上げてさし上げられるようにしたいと思っているのですが、毎回厳しいですね。特に、ハウスメーカーは施工費が安く、工期が短いでしょう。収支が全然違って戦えない。でもやはり周辺がよくなるような良い建物を作っていきたいですね。
「サンポのいえ」は、コルテン鋼の屋根をかけた建物が敷地を回遊するような別荘ですが、構造の梅沢先生が協働してくれたのでできたような建物です。亜鉛メッキ鋼板も耐候性がありますが、最近はコルテン鋼の方が流行っていますね。メーカーによってさらに塩害に強い「ナウテン」があり、海沿いの建物にはこういったものがありますね。
この間、「Kaede」で使用した石の検査にスタッフと中国の「廈門(アモイ)」に行ってきましたが、世界中の石が集まっている、すごいところです。
(福建省南部、九龍江の河口に開けた海浜都市。厦門港には「海上の楽園」と呼ばれる島が浮かび、温暖なリゾート地であり経済特区でもある)
世界遺産の「田螺土楼」でも知られています。建材として使用する石を原石からチェックし、石の特徴を理解し、それがどのように加工されるのか、どのように市場に出てくるかを見ることは、若い設計者にとっても非常に有意義なことです。まずはいろんな経験を積むために、年に1回はスタッフを連れて海外研修に出かけています。

―それは、羨ましい事務所ですね。本日はありがとうございました。

田村 芳夫 (たむら よしお)

1951年 新潟県生まれ
1975年 工学院大学建築学科卒業   建築研究所アーキヴィジョン入所
1988年 アトリエ・リガ・テ都市建築計画設立
代表取締役に就任、現在に至る
2002年~14年 工学院大学 兼任講師
2006年~16年 長岡造形大学 兼任講師
主な作品
佐野市郷土博物館(日本建築学会賞)、都立埋蔵文化財センター(公共建築賞優秀賞)、奈良県橿原考古学博物館(建築業界賞BCS賞)、清瀬市郷土博物館(東京建築賞最優秀賞)、奈良県新公会堂(甍賞・公共建築賞優秀賞)、立山カルデラ砂防博物館(公共建築賞優秀賞)、奥松島縄文村資料館・交流館(屋根コンテスト1等)、龍生会館、朝日学園、葵の園・椿(介護老人保健施設)、葵の園・新潟内野(特別養護老人ホーム)