230-3 設計・デザイン・BIM、多彩な仕事で自分を活かす 保田佳美/株式会社インクス

2019年5月10日 at 6:31 PM

 

今月は、K-house(桜樺苑)の設計を担当された、保田佳美氏にお話を伺います。

―建築関係に興味を持ったきっかけは何ですか?

保田:母校の普連土学園を設計したのが大江宏だったことからですね。
大学の専攻は建物の設計というより、まちづくりと街から捉えて建築を勉強する「環境システム学科」に進みました。建築をまちづくりから考え、複合的な再開発を多角的に解析していけるような人間を育てる学部で、新設されて3期目、新しい学部でした。当時は手描きが主流で、ようやく2DのCADに移行しようとし始めている時代でしたが、先駆けて3DのCADでの設計や3DモデリングからのCGも学びました。一昨年、私の事務所が事業統合した㈱インクスは、BIMのコンサルティングをやっている会社ですが今は自分が学び始めた原点に帰っている感じですね。

大学卒業後は、店舗など商業施設の内外装デザイン・プロデュースを行っている会社に入りました。その中でも私は、施設のマスタープランニング・コンセプト立案~デザインを担当しました。全体の計画を立てていく部署でしたので、街の中から、施設全体として、アプローチや回遊性を考え「目線・動線」を育ててもらいました。

4年ほどいて、その後10年、建築の設計事務所に勤めました。26歳の転職だったので、マンションや住宅などだけではない、様々な用途のものを手掛けている事務所を探したのです。師匠が前川國男事務所出身で、ビジネス感覚とデザイン性を両立させている事務所でした。その時代でもまだ珍しかったのですが、3DとかCGを自分でモデリングできたので、仕事に活かせたと思っています。

―設計もでき、そのような技術もあると、強いですね。
保田:そうですね。外注でもいいのですが、設計意図を自分達が思うように表現できるわけですから、事務所としてのフットワークはよくなります。神社の拝殿から、病院、ホールなども手掛ける事務所で、住宅、マンション、事務所ビル、老人ホームなどいろいろ担当しました。

学習塾の設計ではコンセプトや空間にこだわりがあるクライアントが、特に色を重視されていて、こちらもウィリアム・モリスの壁紙を提案したりして、内装色彩計画、ピクトサイングラフィックも好評でした。ジェイアール東日本建築設計事務所での経験も含め、商業施設の設計での色彩・動線・ピクトサイン計画などの経験が、多用途の建築設計にも活かせていると思います。

大学で学んだシステマティックな目線を持ちながら、全体を見ることを学んできた保田さん。建築設計に軸足を置きつつ、目線はまちづくりでありたいと願い、デザインだけでも、PMだけでもない、特定の用途専門に設計を絞ることもなく、いろいろな面を使ってもらえる人でいたいと2014年独立。弊社でも神宮前に2016年、テナントビルの施工をさせていただきました(Cabina表参道)

保田:何家の皆様とお引き合わせいただいたのがちょうど3年前。新たに茶藝館を作るにあたり、台湾で流行中のJAPANESE ZENなデザインを日本に持ってきても、お客様は台湾っぽさや異国情緒を感じることはできないと思いました。宛樺様も同様に感じられていて、お付き合いが深まる中で感じた宛樺様の雰囲気をより活かせる、シノワズリ・プラナカンのようなアジア×ヨーロッパというフュージョン感の出る内装を提案しました。

 

※台湾では茶藝館というと、日本時代の建物をリノベーションした侘び寂びを感じさせる店や、逆に石やダークカラーの木材を用いた重厚感のある中国の大陸系デザインが少なくないとのことで、「それは違う」と宛樺様も感じられていたそうです。

―店舗と住宅を1度に設計する上で心掛けられたことはどんな点ですか。
保田:建物の設計と店舗の内装、さらに店舗のコンセプトとデザイン(内装、サイン、パッケージデザイン等)がバラバラにならないように注意を払いました。対話を重ねた上で、まず根幹となるコンセプトを立て、そこから建築、内装、店舗、それぞれのデザインのコンセプトに派生させ、関係者に浸透させる。これはお施主様、設計者、サインデザイナーだけでなく施工者・職人さんまで全員が同じ方向を向くことができるからです。店舗ならなおさら、ここがいかにぶれないかが事業収支にも影響します。
今回は、3カ国を行き来するご家族3人を包み込み、ベースキャンプのような「いつでも帰ってこられる場所」というコンセプトの下、3枚の表皮が包み込む外装を考えました。日本古来からある「折形」に着想を得て、枝ものを包む「木の花包み」の形を外壁のレイヤーに反映させました。
全員で一つのチームになってものを作り上げる楽しさをもっと知ってもらいたいということも、独立当初からの思いの一つです。辰さんはそういう意味でも、いっしょに考え、共に作り上げてくださる施工会社の一つだなと感じました。

―本日は、どうもありがとうございました。

保田 佳美(やすだ よしみ)
神奈川県生まれ

1997年 芝浦工業大学システム工学部環境システム学科卒業
1997年 株式会社スペース
2001年 株式会社アル.パートナーズ建築設計
2013年 株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所
2014年 KRATER DESIGN 設立
2017年 株式会社インクス

おもな作品
Cabina表参道、アーバンフラッツ湯島