233-4 山下真平/山下真平建築設計事務所

2019年8月13日 at 11:13 PM

開かれた環境が仕事をつくる

今月は、神宮前の「NC BUILDING」の設計者、山下真平さんにお話を伺います。

―山下さんは、横浜国立大学大学院を修了後、当時横浜国大の教授をされていた北山恒先生主宰のarchitecture WORKSHOP に9年間在籍されて、弊社もいくつかの仕事で現場担当者がお世話になっています。 横浜国大の建築意匠系OB会「円錐会」の役員もなさっていますが、大学は東京理科大学を卒業されていたんですね。

山下:そうですね。大学で建築の勉強を始めて、最初に出会った建築家がシーラカンスの小嶋一浩さんでした。大学で受けた講義の中には小嶋さんの建築思想が詰め込まれていて、非常に大きな影響を受けています。小嶋さんはご自身が京都大学から東京大学の修士課程に進まれた方で、「外に出た方がいいよ」と話されていたのが横浜国大大学院への進学を考えたきっかけです。
大学院では北山さん、西沢立衛さんの設計スタジオをとる他、今は無くなってしまいましたが、みなとみらいにあった北仲WHITE(歴史的建造物をオフィス・アトリエ・ギャラリーに転用した暫定的創造空間)で社会に開かれた環境の中で建築を学ぶ機会を得る事が出来ました。またこの頃、北山さんがY-GSAを立ち上げる準備をされていました。

Y-GSAは建築家を養成する日本で唯一の大学院として2007 年に創設されました。スタジオ制の教育方式を採用し、少人数制の教育により、濃密な設計教育を行っています。学生は、建築のスキルではなく、思想性のある建築のありようを学びます。(横浜国立大学大学院 Y-GSA HP から)

Y-GSAが始まる以前の横浜国大大学院では、1年目にある程度単位を取ると2年目はかなり暇になるわけです。本格的に修士論文に取り組み始めるまでは学生コンペに参加したり、設計事務所でアルバイトをしながら過ごしていました。大学院修了後、これから就職活動を始めようと考えていた時期もarchitecture WORKSHOPでアルバイトをしていたのですが、北山さんから新規プロジェクトの模型製作を頼まれた事もあり、それならスタッフとして採用を検討いただきたいとお願いし、そのまま9年間お世話になりました。

私自身はY-GSAで学ぶ機会は得られませんでしたが、architecture WROKSHOPへ入所後、北山さんや後輩からその話を聞いていました。在籍5年目の2011年には、前年に北山さんが日本館のキュレーションをされたヴェネチア・ビエンナーレ建築展の帰国展が開催され、展示デザインを担当しました。ギャラリーの壁一面にスタイロフォームで作った都市模型を展示したのですが、製作をY-GSAの学生に手伝ってもらいY-GSAの環境に触れる機会がありました。私は親族に教職が多い家系で、もともと教える仕事に興味はありましたが、この頃から独立後にY-GSAで設計助手をやってみたいと具体的に考え始めていました。

在籍中はさまざまなプロジェクトを担当しましたが、木造、S造、RC造をすべて経験できたのは非常に運が良かったです。そして在籍9年目の年末にY-GSA設計助手の募集に応募したところ、採用いただける事になり独立することになります。当時担当していた神宮前の「原宿TWビルディング」は実施設計の途中でしたが、引き続き竣工まで関わらせていただきました。

独立後は自身の仕事に取り組む傍ら、Y-GSAでの教育にも携わり、同じタイミングで円錐会の役員参加のお声がけもいただきました。一般的には独立すると今まで在籍したチームを離れて一人になるわけですが、その時にY-GSAや円錐会のように開かれた環境に身を置けたのは非常にありがたいことでした。そこでは様々な建築家の方々に出会う事ができますし、多様な思想に触れることができます。

architecture WORKSHOPで得られた経験は私にとっての大きな財産ですが、独立後は今までの経験を踏まえつつも、自分のやり方を模索しなければいけません。そんな状況で大きな刺激をもらえましたし、今まで自分がいた環境を客観的に見つめ直すことができました。Y-GSAでの仕事は2018年の秋で任期を終えましたが、また機会を与えていただければ、大学での建築教育には携わりたいと思っています。

今までを振り返ってみると、社会に開かれた環境の中に身を置くことが新しいプロジェクトに巡り会う機会を作ってくれているように思います。Y-GSAや円錐会での取り組みから得られたものもありますし、「NC BUILDING」のプロジェクトもそういった面が少なからずあります。

神宮前ではarchitecture WORKSHOPで担当した「キャピタル原宿」、「原宿TWビルディング」から継続して、今回で3件目の設計・監理となったわけですが、先日「NC BUILDING]でお会いした方から神宮前での指名コンペにお誘いをいただき、取り組んでいる所です。

-そのときはまた弊社に工事をご依頼いただきたいですね。

本日はありがとうございました。