234-3 再生建築のプラットフォーム   神本豊秋/再生建築研究所代表取締役

2019年9月13日 at 5:20 PM
今月は、「ReBreath Hongo 2018」の改修設計を担当した、再生建築研究所代表の神本豊秋に登壇いただきます。再生建築研究所のオフィスでもあり、企画、設計、運営も行っている神宮前の築60年の木造住宅を改修したシェアオフィス「ミナガワビレッジ」に伺って話を聞きました。

 

―再生建築を手がけられるようになったのは、どうしてですか。
神本:もともと小学校の卒業文集で「建築家になりたい」と書いているような子どもでした。ちょうど大学のときが就職氷河期で、新築の建物はもう建たないと言われ始め、既存ストックの活用や、リノベーションという言葉が流行り出した時代でした。
でもリノベーションと言っても、根本は変わっていない、お化粧直しに過ぎなくて、建物の資産価値が上がることはないと感じていたのです。そもそもなぜ日本の建物はすぐに取り壊されてしまうのだろう、と調べたらコンクリートの歴史はまだ80年くらいしか経っていない。建物は平均2、30年でとり壊されてしまう。なのに欧米では平均が140年。この差は一体何なのだと考えたのが最初です。

 

当時、再生建築の分野でトップランナーだった方が大分に講演にいらしたとき、すぐに事務所に入れてくださいと談判しました。インターンで入所して、大分事務所に。それから福岡事務所に出させていただき、東京事務所を開設というときに東京に出てきました。26歳でした。
先生が論文を書いたプロジェクトや自邸の改修工事に携わらせてもらえたのは運が良かったですね。
8年勤め、神本建築設計事務所として2011年独立。始めたら、新築を最初1戸やっただけでやっぱり再生しかなかったんです。既存ストックの再生をご相談いただくことが多く、デザインだけでなくチームとしてプラットホームをつくる、違法建築を適法化する、(建て替えの)不可能を可能にする、という矛盾したことをやるシンクタンクとしての活動が広がり始めました。構造も、環境も、法も統括することが出来る事務所、「再生建築研究所」を創り、今年で4期目に入ったところです。

 

設計事務所として、「再生建築研究所」は研究機関としての人格、「神本豊秋建築事務所」は建築家としての人格、この2つを両輪として体制を整えられたのは、非常に大きな事ですね。我々はデベロッパーさんと不動産言語で会話をすることが出来ます。検済済証がない建物に検査済証を得ることができる。耐震補強すると普通下がってしまう利便性や資産価値を上げてしまうとか、建て替えると5階建てにしかならない建物を再生により10階建てを維持できるとか、そういう回答ができる設計事務所、チームとしての存在価値が認められているのですね。

 

―簡単ではないですね。大変な労力が必要と思いますが、何が大事なのでしょう。経験が必要ですね。
神本:経験とコミュニケ―ション能力ですね。再生の多くは無理と言われることから始まりますが、協議に行って「ダメ、と言われました」では止まらない。どうやったらいいか、落ち込まずにそのニュアンスをつかみ、ダメなものをどうすればいいかを考える。そこは日本の教育と違うところだから、なかなかむずかしいんですよ、ロジックが。
普通に相手に「どうすればよいですか?」と聞いたら「ダメ」と言われるんです。「これこれこういうことだから、こういう研究も、プロジェクトもあるし、実例もあるから大丈夫ですよ」と言うと、相手は「ああ、大丈夫ですね」と言います。そういう、歩み寄り、相互の責任の担保を、お互いが白黒じゃなく拮抗されることが、法でも建築でも必要になってくるし、その隙間にこそ面白い建築ができるのではないかと思いますね。法にないことも、「例えば、こう解釈したらどうですか」と言ってみたりします。

 

―再生建築では、ボリューム維持もありますが、既存の建物のいいところを拾い上げていく作業もされているのですね。
神本:どんな建物もいいところがあって、世の中のマジョリティは建築家のデザインした建物ばかりでない、誰でも作れる色のない建物がほとんど。そんな建物達に対して少し手を加えるだけで、モノのあり方が変っていくことを伝えたい。既存のフレーム躯体をリスペクトしながら、反転していく瞬間を切り取ってそれをデザインに転用していく。そこに面白さがあり、事務所内でも発表していくということをしています。
ここ、ミナガワビレッジもまさにその反転の瞬間があり、緑豊かな庭を引き継ぎ、建築と庭という主従関係が逆転して、庭を中心に建物が生まれ変わりました。さらに耐震補強し、環境設計を行い、60年ぶりに検査済証を取り直して、不動産価値的にも再生することができたのです。
また、事務所としての両輪にさらにエンジンを積むことが出来ました。
というのも、このシェアオフィスの運営も任され、建築によって自分もスタッフも育てられているし、そういう「場所」、「こと」をどう自分達で発展させて行くのかがテーマなのです。こういう面白いプロジェクトをやらせてくれるクライアントに120%応えていかなくては、やる価値はないですね。自分達で何を生み出せるか、それは自分で考えないとだめだと若い人たちには、伝えていきたいですね。
―本日は、ありがとうございました。

 

 神本豊秋(かみもと とよあき)

 

1981年 大分県生まれ
2004年 近畿大学九州工学部建築学科卒業qr_code1568006933
青木茂建築工房(-2012)
2012年 神本豊秋建築設計事務所設立
東京大学 生産技術研究所川添研究室 特任研究員
2015年 再生建築研究所設立
2018年 ミナガワビレッジ運営■受賞歴
・グッドデザイン賞:「渋谷商業ビル」(2013)、「YS BLD.」(2012)、「FTK BLD.」(2010)、「IPSE目黒鷹番」 (2008)
・日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)「FTK. BLD」(2010)
・人間サイズのまちづくり賞(兵庫県知事賞)「FTK. BLD」(2010)
・近畿大学九州工学部卒業表彰 学部長賞(2004)