235-3 横堀健一・コマタトモコ/横堀建築設計事務所

2019年10月10日 at 1:38 PM

「そのままお使いください」という所まで

今月は「元麻布の家 K邸」の設計者、横堀健一氏とコマタトモコ氏にお話を伺います。2年前に建てられた、田園調布の素敵な自宅兼事務所に伺いました。

―お二人ともアルド・ロッシの事務所のご出身でしたね。
横堀:私は、ロッシの日本事務所がスタートした時に入りました。その前は内田繁さんの事務所「STUDIO80」のまちづくりなどの部門に勤務していました。内田さんがロッシと設計事務所を提携することになり、私たち建築部門のスタッフがそちらに移ることになったのです(隣のビルでしたが)。内田さんのプロデュース、ロッシの設計で初めて実現したのが福岡の「イルパラッツォ」でしたね。
コマタ:私は内田さんの事務所のオープンデスクで仕事を始め、スタッフにしていただくことになった時に、ロッシの事務所のお手伝いをすることになりました。内田先生の事務所では夫婦になっているスタッフが実は多いんです(笑)。10組はいるかしら。

―ロッシの作品は日本にも結構あるのですね。
横堀:ええ、バブルの頃は計画がとても多かったのですが、バブルがはじけて多くのプロジェクトがとん挫してしまいました。
―それに知らなかったのですが、ロッシ自身が1997年にミラノで交通事故で亡くなっているんですね。66歳、若いですね。
横堀:ええ、それで東京事務所は閉じられました。
95年に独立しましたが、当初は内田さんの事務所から仕事をいただき、少しずつ自分達でも仕事を取れるようになっていきましたね。

―でもロッシの事務所で仕事をしていたという強みはあったでしょう。
横堀:そうですね。最初に取れた仕事というのが、奥様がドイツ人の方の住宅でした。それまでもヨーロッパ的な空間の考え方はロッシのところで勉強していましたが、この方との家づくりが大変勉強になりました。一般教養としての建築のレベルが非常に高いんです。素材、設備、機械のこと、本当に詳しかったですね。
コマタ:シックハウス症候群とか環境問題に詳しく、選ばれる素材が日本人のお客様と全然違うのです。自然素材のものを使い、オイルフィニッシュで仕上げる。意識が全く違いました。また、日本の伝統工芸品を上手に洋の空間に取り入れられていました。その時が、私たちも日本の素材や伝統的なものを日常に使えるような心掛けをしたいと気がついた時期でした。
横堀:モノが朽ちて経年変化いくということを大前提として受け入れられている。スタート地点がまず違うんです。私たちも引き渡し後、残念なことにならないように植栽、アート、全て「そのままお使いください」というところまで作りこみ、お客様と長いお付き合いができるような事務所として生き残っていきたいと考えるようになりました。

―お客様はご紹介が多いのですか。
横堀:そうですね。事務所ができて来年で25年、そろそろ2件目というお客様も多いです。また個人病院、産婦人科の設計も10件ほど行っていますが、建てた医院の半分くらいが増設、もう1棟というお話をいただいています。
コマタ:この少子化の時代にうれしいお話です。産婦人科も今や女性だけの空間ではなく、男性も育児に参加される意識が高いので、ホテル滞在型であったり、男性が立ち会う場としての新しい空間を提案しています。お子様が独立されてリノベーションを、というお話も多いです。

横堀:基本的に打ち合わせは我々とお客様ご夫妻と4人で行います。片方の意見だけでいくより、1度でもいいから、皆で話し合ったというプロセスが大事ですね。
コマタ:満足度、納得度が違うのです。
横堀:事務所がこの建物になってから、セミナーも2回開催しました。自分達の考え方、実績、建物づくりについて、実際の空間をみて頂きながらレクチャーできるようになったのがいいですね。
コマタ:きちんとした建物はいつまでも残していってほしいと思います。それには土地所有の考え方から変えていかないと。イギリスでは、女王の土地を借りているという意識が普通ですが、日本は土地を自分だけのモノと囲い過ぎている気がします。横堀は今、ヘリテージマネージャーという資格を持っているのですが、どんな素晴らしい建物でも、個人の方が所有していくには厳しく、取り壊されてしまうことも多いです。
横堀:資金調達のストーリーをきちんと作ってあげて、地域と密着した建物を作ることが役目です。相続放棄になって空き家が増えることはなるべく避けたいものです。

―本日は、どうもありがとうございました。

横堀健一  (よこぼりけんいち)

1960年 石川県生まれ
1986~88年 マイアミ大学建築学科留学
1988~89年 STUDIO80勤務
1989~95年 アルド・ロッシ建築事務所勤務
1991年~ ICSカレッジオブアーツ講師
1995年 横堀建築設計事務所設立
2002~06年 桑沢デザイン事務所研究所講師
2017~  金沢大学非常勤講師

コマタトモコ

東京都生まれ 聖心女子学院英語専攻科卒業後
1988年 ICSカレッジオブアーツ卒業
1990年 桑沢デザイン研究所スペースデザイン科卒業
1993年 早稲田大学芸術学校建築設計科卒業
1992年~95年 アルド・ロッシ建築設計事務所勤務
Master at KLC school of Design 修了
2011年~ICSカレッジオブアーツ講師