152-3 マニュエル・タルディッツ /みかんぐみ

2013年4月15日 at 10:31 PM

ワークショップの魅力

「建築も文化も、ローカルの良さを忘れてはならないですね」

今月は「神宮前の家」の設計を手がけた「みかんぐみ」の設立者のお1人、マニュエル・タルディッツ氏にご登場いただきます。

「みかんぐみ」は1995年にNHK長野放送会館の設計をしたのがきっかけで結成された建築家集団。主要メンバーは加茂紀和子氏、曽我部昌史氏、竹内昌義氏、マニュエル・タルディッツ氏の4人。住宅設計などを手がけるほか、東大柏キャンパス新棟や、熊本県のくまもとアートポリスプロジェクトの公民館や保育園、横浜あかね台小学校、伊那東小学校などの教育施設、そして「愛・地球博トヨタグループ館(ディスプレイ産業大賞など受賞多数)」「同フランス・ドイツ共同館」などの展示会や「妻有トリエンナーレ」「横浜トリエンナーレ2008、2011」などのアートプロジェクトへの参加も積極的に行う。
横浜トリエンナーレの会場のひとつ「BankART studio NYK」というアートギャラリーの改修計画を行った関係で、以後、2005年より事務所を横浜・関内に移転、横浜市のまちづくりにも大きな役目を果たしている。

―「みかんぐみ」は、タルディッツさんと、東工大出身の方々のユニットですが、フランス人のタルディッツさんが来日したきっかけを教えてください。
タルディッツ(以下MT):私は最初、パリの国立大学で建築を学びました。卒業後は海外を見たかったので、面白い現代建築があり、文化にも興味があった日本を留学先に選び、東京大学の槙文彦研究室に入りました。槙先生が事務所に誘ってくださり、コンペの準備を手伝いながら、そちらでも設計を学びました。その後加茂と事務所を立ち上げ、NHK長野放送会館のコンペがあるというので、東工大の今のメンバーとチームを作ったのが始まりですね。
―あらためて「みかんぐみ」の仕事を振り返るとどんな感じですか。
MT:例えば教育施設のコンペ形式の場合、建築の専門家と多数のユーザー(学校ならば先生やPTA、地域の人々)とのコミュニケーションが求められるので、話し合いを重視するワークショップが大事だと思います。そういう意味で、我々はプログラムの中身を充分検討しながら、設計を組み立てていくという仕事が多いとは思います。
設立当初は4人で作業することもありましたが、今は一人ひとりの仕事があって、週1回MM(みかんぐみミーティング)を行い、お互いの仕事を報告する機会を作っています。担当スタッフを分担したり、意見交換をしたりして、たまにワークショップを行います。スタッフは現在20人くらい。私自身もワークショップ的な意見交換は好きですね。

―タルディッツさんが外国人ということで何か利点はありますか?
MT:私も、すでに30年日本にいますからね(笑)でもフランス本国から情報は入ってきますし、パイプは切れていないよ。(先日の内覧会でも在日フランス人の設計者や著名グラフィックデザイナーが訪れていた)

ー昨年は大きな震災がありましたが、ご自身はどう思われましたか?
MT:震災直後は、「帰って来い」とか「自分のところに来い」と言う母国の知人もいましたが、自分の居場所はここですね。

地震・津波は日本のいたるところで、今後も間違いなく来るといわれています。だから今、首都圏に都市機能が集中しているのは、ある意味で無責任だと思う。いったん地震がきたら、日本はしばらくだめになっちゃうでしょう。東北地方沿岸の住民の暮らしについても、10mの高さの波に耐えられる建築物を作るより、高台に住居地域を移して法律を決め、危ないところに住まないように規制しないと、また住民は戻ってくるでしょう。ボルドーでも、同様のことがありました。人間とは、忘れやすいものです。

一方で、私は日本の伝統的な建築にも興味があります。日本には、外国にはないプロポーション、ものの使い方、その土地にあったものがある。情報交換はインターネットですぐできます。だからと言って、世界中どこにでも建つような同じ建物を考えるのではだめです。例えば、日本は今、電力消費を減らしたほうがいい。これまでのように、エアコンに頼らない建物が求められる。昔の暮らしを思い出そうという動きもあります。でも単純に昔に戻ればいいというものではない。エネルギーの使い方とか素材は自由なのだから、気候に合わせたローカルな方法を考えて使うべきです。何千年もの間使われてきたのに、忘れられていたものを改めて見直すときに来ていると思います。

―本日はありがとうございました。

著作物の数々。みかんぐみは設立以来、住宅だけでなく、アートやプロダクト、商業デザイン、公共デザインなど幅広く活動しており、出版物も多い

 

みかんぐみメンバー。
右側から、竹内昌義氏、加茂紀和子氏、曽我部昌史氏、マニュエル・タルディッツ氏の4人

959年 パリ生まれ
1984年 ユニテ・ぺタゴシックNo.1卒業
1988年 東京大学大学院修士課程終了
1988年~1992年 東京大学大学院博士課程
1992年 セラヴィアソシエイツ設立 1993年~1996年 芝浦工業大学非常勤講師
1995年 みかんぐみ共同設立
1995年~ICSカレッジオフアーツ教授
1999年~2000年 筑波大学非常勤講師、2001年~2003年 東北大学非常勤講師
2005年~ICSカレッジオブアーツ副校長