150-3 小西利行/㈱POOL代表取締役社長

2013年4月13日 at 4:02 PM

居心地のいいオフィス

「いろんな人がいろんなことをやっているプールが好きですね」

今月は、株式会社「POOL」の代表取締役、クリエイティブディレクターの小西利行さんにお話を伺いました。
大学卒業後、広告代理店博報堂に入社。コピーライターとして活躍後、2006年に独立。最近は商品だけでなく、施設のコンセプト開発からネーミング、店内、広告にいたるまで、企業のトータルディレクションの仕事も増えている。辰では、オフィス「POOL」の1期工事(2010年10月お引渡し)に続き、この6月にも照明や仕切りなど2期工事を施工。

―施工直後、平板タイルの床や空調や照明があらわしになったオフィスを見てどんな空間になるのかが楽しみでした。
小西:若松均さんが以前内装設計した知人のマンションを見せてもらったのですが、そのラフな感じが良かったんですね。事務所はどんどん変わっていくものと考えています。独立して最初に西麻布、2つ目は渋谷。今回で3つ目です。以前の事務所は白く透明感のある建物で、きれいで気に入っていましたが、もう少しぬくもりがほしくなりました。その設計者には断りを入れて、今回は若松さんに設計を依頼しました。もとアパレル事務所だった建物は開口部がほとんどつぶされていて真っ暗でしたが、外から見ると実は窓が多い。僕は開放感があるほうが好きだし、コピーライター、アートディレクターは集中して仕事をする必要もありますが、交流もできる「たまり場」が必要です。大きなテーブルをおいた広い空間が欲しかったんですね。

事務所を独立したとき、周囲には名前を考えてくれる人がたくさんいたのですが、僕はプールが大好きでね。これまで生きてきて一番居心地の良かった空間はどこだろうと考えてみると、プールだったんですね。それで「POOL」という社名にしたわけですが、今回、若松さんが新しいオフィスの話をしている時に、「せっかく『POOL』という名前の事務所なんだから、プールがいいじゃない」と言う。が、物理的に水を張ったプールにするわけもいかないので、全体的にまわりにプールデッキがめぐらされていて、その下に水が張られているという印象にし、できるだけプールに無いようなものは置かないようにしようということになりました。
「プール」というと全体的に明るくて、泳いだり、寝そべっている人がいたり、何かを食べている人がいたり、場所は一つでも、集まる人がやっていることはそれぞれ異なります。肌を焼く人、本を読んでいる人・・・子供は子供で楽しみ、大人は大人で楽しむ。でも基本は同じで、「気持ちいい場所」です。ですからこの事務所のコンセプトは、「いろんなタイプの人がいろんなことを勝手にやっているけど、気持ちがいいプールみたいな場所」ということですね。

―クリエイティブディレクターの仕事について聞かせてください。
小西:基本的には、僕の仕事は「町医者」だと思っています。人は、大きな総合病院に行くときは、自分のどこが悪いかわかった上で内科や外科などの専門外来に受診に行くわけです。でも普段は自分の身体のどこが本当に悪いのかはわかっていないでしょ。企業の経営も同様で、経営者は何かうまくいかないとき、実際はどこをどうしたらいいのか、わからない場合が多いもの。なんかうまくていっていないことだけはわかる。それが基本にあります。一方、昔はどの町にも町医者がいて、「なんか調子悪い」と行くと、その人を診て、薬を出してくれたり、もっと大きい病院にすぐ行け、と診断してくれました。僕はクライアントと会うといろいろ話をするんです。「何かうまくいかない」と聞くと、ずっと話していくうちに、「ここはいい」「じゃ、ここはこうしたほうがいいんじゃないか」、と悪いところについてのお互いの共通認識が生まれてくる。そこで、「こういうことをしたらどうか」と提案をすると、「なるほど」とクライアントも納得する。さらに「WEBのほうは、こういう風にしてみたら」という話をする。クリエイティブディレクターとしてコンサルティングもやるけれども、コピーライターとしても最終的な製作物を作ることもできるので、最終的に「手術」と言われたら、小さい「町医者」はできないけれど、手術まではできる「中規模の診療所」くらいというところですね。
―建築施工会社の広告について、何かご意見いただけますか。
小西:実際施工する人、現場を仕切っている人にもっと光があたるといいなと思いますね。ある意味僕らの業界と似ている部分があります。トータルディレクションが決まったら、あのカメラマンがいるとか、あのアートディレクターがいいからとその人のいる製作プロダクションに頼むんですが、建築の世界は、設計する側に寄りすぎていて、実際に作る側の裏方の情報が少ない。もっと実際に施工する人が立ってくると面白いでしょうね。
―本日はどうもありがとうございました。

1968年 京都府生まれ
1993年 株式会社博報堂入社。コピーライターとして制作局に配属
2006年 同社退社後、株式会社POOL設立。現在に至る
テレビCM、グラフィックなど広告表現のクリエイティブディレクション、コピーライティングを中心にマーケティング、商品開発、コミュニケーション全般の開発を行っている。
主な広告作品:日産セレナ「モノより思い出」、サントリー「伊右衛門」、「ザ・プレミアム・モルツ」、レクサス「LS600hL」、など。内外の広告賞を多数受賞。

オフィスの一番奥にある小西氏のワークスペースと並ぶ談笑スペースで。フロアレベルより350mm高くした「プールサイド」は、冬はコタツになる。今回、手前の柱と柱の間にガラスの仕切りを設けた

「POOL」のHP。まさにプールそのもの、動きのある画面が楽しいサイト。ぜひ訪れてみてはいかが。
http://www.pool-inc.net/