131-3 小嶋一浩・赤松佳珠子/CAt ㈱シーラカンスアンドアソシエイツ 一級建築士事務所

2013年3月26日 at 12:00 PM

 

小嶋一浩氏と赤松佳珠子氏/CAt のオフィスにて 撮影:アック東京

develop から cultivate へ

今月は、「下北沢 Apartments+Blocks」を設計された、CAtの小嶋一浩氏と赤松佳珠子氏に登場いただきます。

―『シーラカンス』という珍しい名前の事務所は、小嶋さん達が東大大学院在学中に設立されて、その活動も非常に注目されてきた設計事務所だと伺っています。現在は東京と名古屋、それぞれ CAt、CAn という2つの拠点で活動されていますが、学会賞を受賞した「千葉市立打瀬小学校」のように学校建築の実績はもちろん、住宅やまちづくりなどにも、仕事の分野が広がっています。

小嶋 ( 以下 K): ここ 10 年、海外、特にベトナム、中近東などアジアでの仕事をする上で感じてきたのは、それぞれの極端な気候・風景で、元植民地だとしても欧米の建築のコピーをやっていてはしょうがないということです。自然そのものの土地で新しく何かをつくるときに、開発行為として、ただ建物を作るのではだめなんじゃないかと感じてきました。「メコンデルタ、シルクロードのど真ん中に近代的なものが建ちました」という建て方ではなく、「そこに何が必要か」とチームで考えていくと、「デベロップ(開発)するのではなく、カルティベイト(耕す)する」ということがより大事だと思えるようになってきたんです。日本の里山を形成するようなアプローチで作れないかな、と。

-「モノを作るというより、アクティビティ(行為)を明確にしていく」といろんなところでおっしゃっていますね。

K:スクラップアンドビルドではないので、あるものを有効活用することは大前提です。が、新しいものを作るときにはより社会的寿命の長いものを作らなければならないと思います。今の中国は必要性があるのでたくさん作っているが、もうちょっと考えて作ってもいいんじゃないか、というものも多い。「じゃ、どうすればいいのか」と考えて実践していくのが僕らの仕事の大事なところです。
建築は、何もないところから、発注者と「何をやろうか」とコミュニケーションをスタートさせて、時間はかかるけれども、考えたことを皆が体験できることになるところが、面白い職業なんです。

赤松(以下 A):「建築をつくる」というのは、すごくワクワクすることだと思います。お金を払う建築主もそうだし、施工現場でも、「自分の手で何かができる」ということに魅力を感じる人が仕事をしていると思います。それが、ただ「コンクリートから人へ」、「新しいものができることはいけない」と片付けられては、それは違うだろう、と思いますね。20 世紀にただ開発をしてきたのとは違う態度表明をきちんとしないといけない。社会の中では、それがなかなか的確に伝わっていないと感じますね。建築をやっていると、「何か好きなものを勝手に作る人たち」というイメージがまだある。

―一般の方々の意識もカルティベイトしていただきたいですね。

K:設計はそれでもまだ若い人がくるのだけど、施工のほうは技術者が減っていく。海外で仕事をしていると、日本の施工現場は基本的に図面を描けば仕事をきちんとしてくれる、高いレベルを保持している、と感じます。「やばい」と言われても、まだ信頼感がある世界です。それが、どんどん崩れていくのはいやだな。

A: 学生と話をしていると、非常に苦しみながら、設計しているんですね。「もっと楽しいはずでしょう」と私に言われて、初めて「ああ、そうですね」と気が付く。その辺から変えていきたいですね。
そういう意味では、今回の下北沢の14人のクライアントは、コーポラティブという仕組みがなかった時代にはどうしていただろうと思われるくらいこだわりのある方々でした。

K:すっかり日本の都市に根付いたシステムですね。皆さん、「インフィルは、スケルトンに影響を与えない」などのルールの中での振舞い方や「全体としての統一感を維持しよう」という意識が非常に高かった。われわれは、こういうコーポラティブのように都市だから成立することと併行して中央アジアでしかできないこともやっています。

A:建築しかやらないというスタンスではないですね。

K:建築・都市に関わるときに登場したい、という感じですかね。

-本日はありがとうございました。

 

「この名前では公共工事は取れないかもしれないと言っているうちに 25 年たちました(笑)」

小嶋 一浩

1958 年 大阪府生まれ
1982 年 京都大学建築学科卒業
1984 年 東京大学大学院修士課程修了
1986 年 シーラカンス設立
1998 年 C+A に改組
2005 年 CAt(C+A トウキョウ ) に改組
現在、CAt パートナー、東京理科大学教授、京都工芸繊維大学客員教授

 

赤松 佳珠子

1968 年 東京都生まれ
1990 年 日本女子大学家政学部住居学科卒業 、シーラカンスに加わる
2002 年 C+A パートナー
2005 年 CAt(C+A トウキョウ ) に改組
現在、CAt パートナー、奈良女子大学、日本女子大学、日本工業大学、神戸芸術工科大学非常勤講師

 

赤松氏。「リベラル・アーツ&サイエンス・カレッジ」(2004 年/カタール・ドーハ市)の模型の前で