129-3 髙山正樹・岡由実子/㈱エトルデザイン一級建築士事務所

2013年3月24日 at 12:00 PM

 

髙山正樹氏

 素材への感性を建築に生かす

 今月は、高円寺南 3 丁目住宅の設計者、エトルデザイン一級建築士事務所にご登場いただきます。代表の髙山正樹氏と、岡由実子氏の絶妙なコンビネーションがセンスのあるお仕事を生み出しています。事務所は、銀座 1 丁目のスクラッチタイルのレトロな建物、奥野ビル。手動式の二重扉のエレベータに感動し、ギャラリーのような会議室でお話をうかがいました。
—髙山様は、もともとデザイン関係の仕事をされていたそうですね。
髙山:10 代半ば頃から芸術をやりたいと作品をつくっていました。20代の初めに、フランスと東京に拠点をもつ芸術家の田原桂一先生のところで、ものを創ることを学びました。が、やはり芸術を職業とするのは難しく、デザイン事務所に勤めたのです。プロダクトや内装のデザインをやっている中で、住宅の依頼があり、知人に岡を紹介してもらってつくったのが最初の建築の仕事です。

—岡様は大学卒業後、安藤忠雄建築研究所に勤められています。

岡由実子氏

岡:96 年の春まで 5 年間お世話になり、東京で働こうとしていた矢先に高山のいた事務所を紹介されて住宅をつくったのが一緒に仕事をするようになったきっかけですね。

髙山:安藤忠雄さんは建築家の中でも芸術的な感覚が強い方だと思っていたのですが、いろいろ話を聞いて建築でもアーティスティックなことができるという気持ちが高まりました。インテリアと違い、建築は「表裏一体」、外と内をデザインできるということに強く惹かれたのです。
岡:髙山は立体の身体感覚が鋭くて、敷地を見て太陽を見て、すぐに立体を建ち上げてしまうんです。私は、「プログラムは入るんですか」というようなことが気になるのですが、髙山は立体をベースにプランに落とし込んだり、私が描いたプランでやり取りして創っていきます。存在感の強いかたちや無垢な感じの空間構成、質感の好みは共通点があるので、全く異なる部分が交差しながらまとまっていくのだと思います。

—現在は、三島、軽井沢、東京と3つの拠点での仕事があるそうですね。
髙山:三島は、2003 年、PAM MUSEUM(坂茂氏設計)のオープニング展のインスタレーションの仕事で現場に通い、緑、海、東京からのアクセスの良さに魅力を感じました。1 年後、「車と家」を特集する雑誌に掲載された住宅案を見たカメラマンの方から、三島でスタジオを建てたいと連絡をいただいたのです。農業用倉庫を備え、クラシックカーとトラクターが並ぶガレージ、待ち合いを兼ねたカフェや露天風呂を持つ、ユニークなスタジオになりました。建て主は地元の旧家でもいらしたので、私たちも地域にご縁ができ、そこでセミナーを開いて、いろいろと設計の依頼を受けるようになりました。温暖な気候の三島では、富士山や海など広大な風景を室内に取り込む「ピクチャーウィンドウ」で、新たな自然を感じてもらえるよう提案しています。

一方、軽井沢は別荘地ですが、以前から企画を考えては「ぜひやりたい」と周囲に繰り返し話していました。黙っていてはダメですね。
モデルハウスをつくりたいというお話を頂戴し、ひとつ作らせていただいたのをきっかけに声がかかるようになりました。東京で全く建築が動かなかった時期に、別のエリアにつながりがあって仕事ができたのは、運がよかったですね。
岡:軽井沢の「傾斜屋根でなくてはならない」という取り決めは、四角い建築ばかり考えていた私たちには新鮮でした。300 坪からある敷地を同じような樹々の中でどう読み込むのかも戸惑いました。そして自然が厳しい。冬は -10° C 以下にもなるので、基本性能が高い基準で求められます。そういうことをこつこつ解決しながら、自然と対峙する空間をつくることがとても面白い。今年2月の大雪の日、現場に行く途中で大きな樹が倒れ、まず木を切り分けるのが仕事の始まり、という事態に遭遇しました。「建築って、自然にはかなわないんだ」という感覚が素直に生まれました。都会で建築をつくる時も、根拠あるディテールにデザインを込める、きっちり作ることの大切さを改めて教えてもらったと思います。
髙山:周囲からの限られた景色を取り込む東京、温暖で開放的な三島、厳しい自然の軽井沢、この3つの環境の違うところで建築をつくっているのは、精神衛生上、非常にいいと感じていますね。
—本日はどうもありがとうございました。

事務所会議室内に置かれた木、アルミ、鉄、竹、ガラスなどのサンプル。様々な素材を用意して、手触り、重さ、温度など、同じ質量でもいろいろと身体の感じ方が違うことを訪れる人に感じ取ってもらう。

「建築は、自然にはかなわない。建てさせてもらっているという気持ちを忘れないようにしたいですね」

髙山 正樹

1967 年 東京都生まれ
1989 年 フランス在住・芸術家 田原桂一氏に師事
1992 年 株式会社 SESSA 勤務
プロダクトから建築までを手がける
1997 年 デザイン組織 project Être 結成
2001 年 有限会社 Être Design 設立
2007 年 株式会社 Être Design に改組 代表取締役

 

岡 由実子

1967 年 大阪府生まれ
1991 年 京都大学工学部建築学科卒業
1991 ~ 96 年 安藤忠雄建築研究所勤務
1997 ~ 2003 年 東京大学安藤忠雄研究室のスタッフを務めながら、設計活動を行う
2003 年より Être Design 勤務

 

Être Design(エトルデザイン)

建築・集合住宅/住宅、家具、プロダクト、空間演出の製作展開。
八戸景観大賞(シャトー・カミヤ牛久 2000)
フロントガラス大賞(シャトー・カミヤ牛久 グラスハウス2002)
東京メトロ 新副都心線のサイン計画で、2008年グッドデザイン賞受賞