123-3  安積遊歩/CIL くにたち援助為センター代表

2013年3月18日 at 12:00 PM

 車イスに乗って、世界を変える

 

今、日本の障害者数は 724 万人、総人口に占める割合は 5.5%(障害者白書 2010 年版)、18 人に 1 人が何らかの障害を持っているということになります。今月は、「骨形成不全症」というハンディを持ちながら、障害者の自立生活運動のために、全国、世界を飛び歩く一方、妊娠・出産・子育てを実践してきた、安積遊歩さんをお迎えしました。

―遊歩と初めて会ったのはお互い 20 代の初め。福島で障害を持つ人の自立運動をされているときだったけど、その後しばらくしてアメリカに単身留学したと聞いて、その行動力に驚かされました。
安積:28 歳のときに、アメリカ自立生活運動の研修を受ける機会があって、バークレーで 2 人の車イスの男性と同居して、自分の選択と決定に基づく自立生活を体験し、エキサイティングな日々を過ごしました。
―帰国後、新しいカウンセリング方法を日本に紹介しましたね。
安積:「ピア・カウンセリング」は、アメリカが発祥の地。60 年代から断酒会ミーティングの中で始まったもので、同じ境遇や立場にある人たちが互いに気持ちを聞きあっていく。そのことで自立を応援し合う。障害のある人の自立生活運動に大きな効果を上げました。
ピア(peer)とは仲間という意味。専門家主義を排除し、仲間同士の相談でつながりを深めて自分の人生を生きていくのです。「自立」というと、経済的自立のみに主眼が置かれがち。それでは企業社会から排除されている障害を持つ人には、永遠に「自立」はありえないでしょう。親元か施設かの二者択一を迫られていた重い肢体不自由の障害を持つ人たちが、生活保護や年金を使って、地域で自立生活を実現しようと活動してきました。私たちは 1986 年、日本で初めてそれを支援、実現する機関として、障害を持った当事者による自立生活センターを八王子に立ち上げました。 

 遊歩さんは、「骨形成不全症」という生まれつき骨がもろく折れやすい病気で、20 歳までに 20 回以上骨折、8 回の手術をする。骨折のたびに、補強する針金を足に入れ、骨が固まるとまたこの針金を取り出すという、痛いだけで効果のない手術を、13 歳のとき決然と拒否。足の違和感、脊椎側湾による痛みもあるため、常に身体は不調を訴え続けるが、彼女は「治る」という言葉の意味を考える。「不全」という言葉が示すように、2 本の足で完全に歩くことが唯一正しい姿という考えがそもそもおかしい。骨折しやすいのなら、歩かなければいい。目の悪い人はメガネを使う。年をとったら老眼鏡を使う。車イスもメガネと同じ感覚で使えばいい。「治す」というのは、健常者に近づくことではなく、自分が心地良くなることにほかならない、という結論に至る。


―遊歩は、福島の頃のパートナーと別れ、その後も傷つきながら「女であること」にもこだわって、そういうことを率直に本にも書いていますね。フェミニズムにも取り組んで、14 年前、今のパートナーと暮らし始め、宇宙(うみ)ちゃんという女の子も生まれました。自分と同じ病気が出る確率が 2 分の 1 と知って、この子は絶対に障害を持つ女の子だと確信したとか。
安積: 40 歳という高齢出産で、私は「人類初の大チャンス」と思いました。それ以前から、「優生保護法」廃絶運動に積極的に参加していて、1994 年には国連の「人口と世界開発会議」に出席するためにエジプトのカイロに飛び、20 数カ国のジャーナリストにインタビューを受ける中、日本の「優生保護法」の差別性を訴えました。
生まれた娘の宇宙は私と同様の障害を持っていますが、彼女を通して、さらに多くのことを経験し、教えてもらっています。もし彼女が生まれていなかったら、単に抗議し続けるだけで留まっていたかもしれない。彼女を受け入れてくれる学校の姿勢とか、手術を受けるかどうかの意志決定を彼女が行うプロセスを通して、自分が受けた痛み、苦しみを思い返し、母親として子どもへの接し方を考えます。生まれてくる子を選別する「優生思想」は、幼い子どもたちが受けている医療という行為の虐待や、貧困や無知から来る悲惨をさらに進めることになります。
サンクチュアリ(侵してはならない聖域)があると思います。いのちに関わらない限り、子どもの身体にはメスを入れてほしくない。例え麻酔が効いてもその後の痛みや苦しみを思えば、大人が勝手に子どもの身体をいじるのは人権侵害です。生殖に関わる「精子バンク」「遺伝子操作」「臓器売買」なども。人類はいつのまにか「いのちをどう考えるか」という議論もないままに、人間を作り出せるかもしれないというところまで医学を進めてしまいました。自然の森も、子どもの身体も、子宮も、利潤追求という低レベルの価値感に当てはめることができない、豊かないのちのあふれるところ。そのことを忘れてはならないと思います。
-本日はどうもありがとうございました。

「すべてのからだは百点満点。私のからだはたった一つの私のからだなんです」

国立の自宅近くの一橋大学構内で。フィリピンのストリートチルドレンの支援を行ったり、FGM(女性器切除)ストップキャンペーンにも参加。活動は国内に留まらない。最近はエコロジーにも熱心。「日本熊森協会」の大型動物と自然の森の保護にも関わっている

 

安積 遊歩

1956年福島県生まれ 生後40日で「骨形成不全症」と診断される
1983年アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介
障害を持つ人の自立をサポートする<CILくにたち援助為センター>代表
http://www1.ttcn.ne.jp/enjoy-kunitachi/home.html
コウ・カウンセリングの日本のエリア・リーダー
実践保護団体<日本熊森協会>顧問。立教大学コミュニティ福祉学部兼任講師
主な著書
『癒しのセクシートリップ』『車イスからの宣戦布告』、
共著に『女に選ばれる男たち』(+辛淑玉)、『ねぇ、自分を好きになろうよ』など

2010 年 1 月に発行した、「いのちに贈る超自立論』(発行:太郎次郎者エディタス)本当の「自立」とは何か、を考えさせてくれる