122-4 藤本昌也/社団法人日本建築士会連合会会長 現代計画研究所会長 

2013年3月17日 at 10:00 AM

撮影:アック東京

専攻建築士制度

―建築士会とは、どういう組織ですか。
藤本:昭和 25 年に建築士法が制定されて発足した建築士資格者の有志で構成された組織です。1 級及び 2 級建築士が誕生して以来、
60 年以上がたちました。昭和 59 年からは木造建築士も誕生し、それらの国家資格を取得した人はこれまでに 100 万人近くになります。建築士会は、現在 47 都道府県ごとに設けられ、それらを後方支援する形で連合会が設けられています。100 万人のうち、引退されたり亡くなったり、資格を持っているだけの人を除くと、実務関係者は数十万人と言ったところでしょうか。そのうちの建築士会の会員は 10 万人ですから、会員率は約 15%というところ。建築士法も大幅に改正され、これまで 1 級は国土交通大臣(国)、2 級と木造は都道府県知事が認定登録業務を行っていましたが、平成 20 年11 月から日本建築士会連合会が、国土交通大臣による「1 級建築士の登録等事務」を実施する「中央指定登録機関」として指定され、47 都道府県建築士会が、1 級建築士(構造、設備も含む)の申請受付窓口になりました。
建築士の資格を持って働いている人は、意匠・構造などの設計者だけでなく、行政や民間の確認審査業務、施工会社の現場監督や教育に携わる人など多方面に亘り、そうした多様な技術集団として建築士が建築産業界に貢献していることは評価されるべき資格制度だと考えています。
一方で、建築士の業務の専門分化は、消費者や建築主側から見れば、業務提供してくれる建築士がいずれの領域を担当できるのか、その業務責任を果たすに足る知識や技能を有しているのか、正確な情報がほしくなります。
「欧米のように、建築士を設計・工事監理のみに特化した法律を新たに構築すべき」という意見もありますが、建築士会は「これまでの法的資格制度を尊重し、その制度を補完する社会的制度を別途考えるべき」という主旨で、「専攻建築士制度」の導入を行ってきました。つまり「耐震疑惑事件」に先立つ平成 15 年から「信頼できる建築士」の職能、専門分野を社会に表示する制度として創設、実施してきた制度なのです。
―その平成 17 年の「耐震疑惑事件」により、建築士に対する信頼が大きくゆらぎ、建築基準法、士法の改正の引き金になりました。
藤本:「耐震疑惑事件」の検証過程で、審議会の意見は、次第に建築士を厳格に管理すべきだという意見に集約されていったのですが、私は発注者・建築主の建築士への金銭的・時間的圧力という行き過ぎた市場主義的行動をそのままにしては本質的な解決はできないと主張しました。建築士に対する過剰な法規制は、市民から見ると一見安心できるように思えますが、実際には、行政や私たち職能側に不必要な負担をかけることになり、結果として市民にマイナスの副作用を与えることになるのです。
法律が果たす役割は<必要条件>までです。<十分条件>としての役割は、職能者と消費者がそれぞれ引き受けなくてはならないのです。いつまでも消費者は被保護者の立場に甘んじていてはいけないのです。
そのためにも、先に述べたとおり、建築士の適切な情報開示が必要不可欠であり、医師免許のように建築士資格を取得後、専門分野における建築士の実績、講習など履歴を開示して、消費者や発注者が「信頼できる建築士」を適切に選択できるようにしていかなくてはなりません。そのために先の「専攻建築士制度」の運用を開始しています。
■CPD 制度=建築士会継続能力開発(CPD)制度
(Continuing Professional Development)
建築士会の作るプログラムに参加すると CPD 手帳にポイントが加算され、専門領域を社会に明示できる。現在の登録者数は全国で 5000 人を超える。この CPD の実績は行政庁発注工事、設計監理入札における評価点に加算されるなど活用され始めている。
■専攻建築士制度=高度化多様化する建築士の職域(8 つの専攻領域)を明示する。実務経験 3件(責任ある立場)と規定CPD単位(5年間 250単位)を取得し、5 年毎に登録更新する。
―プログラムを作っていくことも、大変なお仕事ですね。
藤本:「法的資格制度」(建築士法)と「社会的資格制度」(専攻建築士制度)が相互に補完し合う、成熟社会にふさわしい制度としていきたいですね。

「信頼できる建築士を確保する『専攻建築士制度』の更なる普及をめざしています」

 

藤本 昌也

1937年 旧満州新京生まれ
1962年 早稲田大学大学院修士課程修了
1962-1972年 ㈱大高建築設計事務所勤務
1972-1997年 ㈱現代計画研究所設立 代表取締役
1997-2000年 山口大学工学部感性デザイン工学科教授(他に現在まで多数の大学で教鞭をとる)
2000-2006年 ㈱現代計画研究所 代表取締役  2007年-現在 同社 代表取締役会長
2004 年 – 現在 国土交通省中央建築士審査会委員
2005 年 – 現在 住宅生産振興財団評議員
2006 年 – 現在 国土交通省建設産業政策研究会委員
2008 年 – 現在 (社)日本建築士会連合会会長

三田の建築会館に置かれている日本建築士会連合会の「建築士登録部」の前で。
受付時間帯は、スタッフが仕切りの後方で登録・更新業務を行っている。また一
級建築士の名簿の閲覧の申請も受け付けている。個人情報に配慮し、建築士の住所・連絡先はわからないようになっている。