118-3 小池秀明/マンションオーナー

2013年3月13日 at 12:00 PM

いいものは余裕のある空間から

 

デザイナーズマンションを建てる方はどういう方なのか。クライアントの方からは、話を聞く機会はなかなか得られないものですが、今回は、昨年末、ご自宅の改修工事を弊社で承った、小池様に登場いただくことができました。これまで、「スクエア(1995 年)」、「トリニテ(1997 年)」という2つのデザイナーズマンションをタカギプランニングオフィスの企画で建てられました。
―小池様がデザイナーズマンションを建てられた当時は、まだ一般にはそのような動きや情報はなかったのではありませんか。
小池:ある日、NHK を見ていたら建築関係の番組で、たまたま人が雨宿りできるパブリックスペースを作った銀行のことを紹介していたんです。そういう空間を自分でも作れたらいいな、と感じたのが最初ですね。ただ普通の箱のマンション建ててもつまらないし。
―地主さんでいらっしゃる立場で、街づくりに意識的に関わることが出来たら、と考えられたんですね。
小池:そうそう。大げさなものではないのだけど。トリニテは3棟で一つの建物を構成しているのだけど、棟の間に道があって、周りの人が多少影響を受けてくれたらとか。誰かがそういうことを始めなくちゃいけないとは思っていましたね。
―建築を専門に勉強されたりしていましたか?
小池:特にそういうことはないけど、昔から、近所の哲学堂アパートなどの建物を母に見に連れて行かれたり、農家だった自宅を小学校 1 年の時に、当時にしては珍しかった鉄筋の建物に建替えることになって、出来上がるまでをじっくり見ることができたり。

昭和39 年には、父が当時「上高田 1 家賃が高い」といわれたアパートを等価交換した土地に建てたんです。出来たときには楽しかったですね。お弁当持っていってそこで遊んでましたよ。1 階は風呂なし、2 階が風呂付、でも当時はそんなもんでしたよ。
―タカギプランニングオフィスさんとの出会いは?
小池:父から相続対策でアパートを建ててくれと頼まれ、友人から紹介されたのが始まりですが、時はバブルの絶頂期。建設費用を計算すると、5 年間は赤字になっちゃう。これはやらないほうがいい、といったんやめたのです。が、数年してあっという間にバブル崩壊。今度は建設費の単価が半分になって、追加工事の代金や設計料も下がりましたね。コンクリート打ち放しにすれば、借り手の負担は相当軽くなる。

メンテナンスフリーがいいですよ。設計の谷内田先生を紹介されて、空間を生かした、その設計が良かったですね。
―建物はどんな点が大事だと思われますか?
小池:建物はまず、安全でなくてはならないでしょう。それはコンプライアンスだからではなく、せめて家の中くらい安全に子供が過ごせる空間という意味あい。次にクォリティ。家具でも設備でも、人に感動を与えることができるデザインや使いやすさが必要だと思います。

そして、プライス、適正価格。安けりゃいい、というのではなく、歴史に学んだ、ほんとにいいものを作って適正と思ってもらえる価格です。思いつきではなくてね。
―建物の種類で要求される点がいろいろあると思いますが。
小池:例えば事務所だったら、人の動線とか実際に働きやすい設備、電気関係がすごく大事。店舗だったら、ガラス張りだったりして、中がよく見える建て方が効果的。外を通る方は、中が見えるだけで楽しいし、見られている方も仕事をきれいにカッコよくやろうとするじゃないですか。そば屋や食べ物屋は特にそうだね。実物見るって大事なことです。ディズニーランドの悪口言うわけじゃないけど、「10 回も行くのなら、ほんとのアフリカやアメリカを見てきなさいよ」と嫁さんや子供には言ってるんですよ。

―本物を見て来い、という話は基本ですね。
小池:僕もずいぶん外国行って、ボラレたり、お金盗まれたりしたけど、でもトラブルのない人生なんてないんだよね。そこから学んで、小さなトラブルが大きなトラブルを回避することになる。失敗を避けたり、清潔を求めすぎたりすると、人間が弱くなるばかり。今、若い人が貧困のために自殺したり、精神的に病んだりするのは、ほとんど戦争状態なんだと思う。真剣にこの状況に向き合って、何かみんなでやることがあると思うんですよ。

人生、短いんだから、楽しまないとだめなんだ。お金は使ってこそ、意味があると思う。今、お金に使われて暇がないとか、どこにお金使っていいかわからない、という人が多すぎる。お金があると言って不摂生して、身体壊してあの世に行ってたら「お金の奴隷」。いい建物建てて、満足していけばいいんじゃないかな。

―本日は、ありがとうございました。

 

小池秀明

1952 年 東京のど真ん中、中野に生まれる。

日新火災海上保険 代理店
ワンプライス有限会社 代表取締役

「ゆとりがなくちゃ、いい建築はできないよ。歴史に学んでいいものを作って残すべきだね」