117-3 松家 克/アークス建築研究所代表 武蔵野美術大学理事

2013年3月12日 at 12:00 PM

「Archi Future 2009」 を開催して

BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)という言葉を耳にしたことはありますか。建築設計及び生産に関わる様々な情報を、施主、意匠設計者、構造設計者、設備設計者、さらに施工業者などが全員で共有するシステムで、コストや品質を大幅に改善していくものです。日本でもようやく一部で実践が始まっており、注目が集まっています。この 10 月開催された「Archi Future 2009」には BIM ソフトの紹介やパネラーによる対談などが行われ、多くの来場者が訪れました。実行委員長の松家克氏にお話を伺いました。
―昨年に続き 2 回目を迎えた「Archi Future」ですが、松家さんが主催者の一人として関わることになったきっかけは何ですか。

松家:20 年くらい前から何年間か毎年「AEC/System Japan 建築技術展」という3日間でおよそ2万人の来場者を得た大イベントの企画委員を経験しました。コンピュータを手に入れ、「CAD の普及によって、建築は変わっていくぞ」という期待にあふれた草創期でした。あっという間に CAD は普及し、その後コンピュータはさらに進化して、現在はより高度で応用的な表現を生み出しています。
例えば、アルゴリズムといって、ある条件を与えてその結果をシュミレーションしながら、設計者がセレクトしていく方法や「BIM」が今後の設計の重要な手法の一つになると言われています。「BIM」を簡単にいうと、3次元 CAD をベースにいろんなチームが一つのプラットフォームで同時に作業していくというものです。すでに日建設計の山梨和彦氏は BIM を使って御茶ノ水の小さな劇場や新木場駅前の木材会館などを設計しています。
「Archi Future」は、建築の新しい技術情報を収集、紹介する場として昨年スタートしましたが、今年は基調講演に原広司氏を迎え、また厳しい設計環境の中、少しでも若い人たちに「建築は楽しい、面白い」と思ってもらえる機会を提供できたらと、特別対談には藤本壮介氏や和田智氏(Audi の世界的デザイナーとして活躍するプロダクトデザイナー)、石神純也氏や平田晃久氏など注目の若手建築家に来てもらいました。
パネルディスカッションでコーディネーターを務めた山下純一氏が代表を務める「IAI 日本」はいろんなソフトを統合することを目的に集まっている団体ですが、今回 48 時間で BIM を駆使して建物の設計を行うネット上の仮想コンペ「BUILD LIVE TOKYO 2009」を企画してもらいました。
宮崎台にある実際の共同住宅の建て替え工事を想定したものですが、竣工後 38 年、そろそろメンテナンスなどが必要になってくる時期です。内井昭蔵氏の設計で入居者には設計者も多く、実際に改修のコンセンサスを得るとなると、相当に時間が必要だと予想されます。そんなとき、BIM が非常に有効なツールになると期待されています。「このボリュームで何ができるか?法規制に従ってできることは何なのか?」など住民がその場で理解できるように、スピードのあるプレゼンテーションが可能です。デザイン面でも資金面でもいい、いろんな切り口でプランを練ってもらいました。
7 チームが参加、ベスト3が前田建設、大成建設、清水建設の3チームで、最終選考を公開審査として今回のイベントの中で行いました。その結果総勢 68 名の清水建設のチームが優勝しました。12 月始めには、宮崎台の建物でこれらの案を紹介する住民説明会を開催する予定です。IAI の先生方にもおいでいただきますが、皆さん楽しみにしています。
戦後すぐに建てられた団地や、続く民間のマンションの多くが今、建て替えの時期を迎えています。作った当時は、将来のことなど考えていないものがほとんど。効果的なメンテナンスをこの工事で学習してもらえたらいいですね。コンピュータに縁のない高齢者や一般の方々にも、大きな画面で説明し、面白い話し合いになれば、と願っています。IAI としても研究材料になります。
―この方法が主流になると意識することは必要でしょうね。一般的なものになるのはいつ頃でしょう。
松家:5 年くらいはかかるでしょう。FAX が一般に使われ始めたのが 1970 年代、CAD は 1990 年代、両方とも建築設計に不可欠のものとなりました。今回、「BIM」が第 3 期のハンドリングを迎えることになります。将来的にも脈々と状況を把握できるメンテナンスの継続性が可能になります。でもあくまでも「ツール」、目的は「いい建物を作ること」であることを忘れてはなりません。
―本日はどうもありがとうございました。

「建築の新しいコミュニケーションの可能性を多くの方に感じてほしいですね」

 

1947 年 和歌山県生まれ
1972 年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業
1972~88 年 椎名政夫建築設計事務所
1988 年 アークス建築研究所を倉林憲夫,新井国義と共同創設
主な著書に『DA 建築図集 住宅■』(共編著,1980 年,彰国社),『オフィス事典』(共著,
1987 年,産業調査会),『領域を超えて』(共編,1993 年,日本建築家協会),『建築ディティール集成』(共編,1994 年,彰国社),
『建築実施設計図書制作基準』(共編,2000 年,彰国社)他

 

Archi Future 運営事務局提供

今月のメンテ魂でご紹介した「Cubic」(弊社施工)の前で。設計監理担当のアー
クス所員関氏(向かって左)と松家氏、オーナーで1階の保険代理店会社の I
氏(右)と記念撮影。小春日和のいい1日でした。