161-3 渡辺よしゆき/大家魂。

2013年8月6日 at 12:00 PM

賃貸住宅フェア「全国大家ネットワーク」のブースで、大家仲間の皆さんと。手前
右端、ストライプのポロシャツを着ているのが渡辺氏

行動する大家さん

7月30日、東京ビッグサイトで開催された「賃貸住宅フェア2013」に行ってきました(主催:株式会社 全国賃貸業住宅新聞社、開催は30日、31日の2日間)賃貸業界、つまり大家さんや地主さん、投資家、そして不動産会社やコンサルタントなど、業界の方々が一堂に会するイベントです。31日 には、安藤忠雄氏が基調講演を行っていました。

一昔前は、大家さんというとご高齢の方が入居者の生活全般の相談にのってくれるイメージでしたが、最近は不動産管理会社のサービスも充実し、大家さんも楽になっているのではないかと感じておりました。しかし、どうやらもっと大家さんは進化しているようです。税務対策、入金管理も自分で行う勉強熱心な一方、大家さん同志の親睦を深めながら、情報交換を行うネットワークを持つ、元気な方たちが少なくないようです。そんな大家さん達に会いにいきました。

ビッグサイトの西棟、コの字型の会場の左手から入ると、まずマレーシアやタイのコンドミニアムを紹介する海外の不動産投資会社が迎えてくれます。証券会社を含めた投資関係の会社も出展しています。そしてリフォーム・リノベーション関係のブースが続きます。建築・コンセプト関係、つづいて相続対策など法律関係の会社が出展しています。中央には不動産管理会社、出口近くには、IT関連サービスの会社がさまざまな独自サービスを展開しています。

そんな中、目を引いたのが全国各地の大家さん達自身のNPO、ネットワークのブース。「オーナーによる賃貸経営セミナー会場」では、名物オーナーたちが講師として登壇、自身の経験をもとに、空き家対策やトラブル解消へのアドバイスを語っています。
ちょうど私が訪れたとき300人近い聴衆を前にユーモラスに語っていたのが、渡辺よしゆきオーナー。『空き室率87.5%のおんぼろアパートが、8か月で満室になるまで!瑕疵闘争編』というタイトルで、ご自身が埼玉に購入した中古アパート「赤鬼荘」をめぐる話を絶妙な語り口で展開していました。

2010年夏、購入した古いアパートで、7日目にして床下浸水の瑕疵が発覚、40日目にして2人しか居なかった入居者の一人が居室内で亡くなり、90日目にしてアパート一帯が土砂災害警戒危険区域の選定検査を受ける。浸水工事の代金支払いで売主と裁判になるものの、弁護士を通さず、自分で対応。更に途中で東日本大震災を経験するなど、数々の困難に遭遇するも、アパートを再生し8ヶ月で満室に導いた、というものでした。そんな経験を通して、「行動する大家さんの会(AOA)」(http://www.o83nokai.org/) を数人の大家さん仲間と共に創立した渡辺オーナー。スタッフの完全ボランティアによる「大家さんの大家さんによる大家さんの為の会」を標榜し賃貸住宅業界に関係する全ての人々を幸せにする事をミッションとした活動を展開しているそうです。サイトを立ち上げて年4回の勉強会やスピンオフ的な活動も行っていらっしゃいます。
特に渡辺オーナーの講演の中で印象的だったのは、件の中古物件の床下浸水が発覚し、入居者も決まっていたためにすぐに改修工事を行ったところ、その2か月後東北大震災が起きて、入居者の一人から「もし渡辺さんが、きちんと直してくれていなかったら、俺、危なかったかもしれないな」と言われたこと。「大家こそ、日本の住宅環境に責任を持ち、守っていかなくてはならない存在なんだ」と気付かされたとのことでした。中古物件を購入するリスクも思いきり経験された渡辺オーナーですが、2011年5月に「全国大家ネットワーク」(http://www.oya-net.com)に参加、さらに東日本大震災被災者の方を空室に受け入れる運動 「住まいりんぐ」及び「借り住まいの輪」に賛同し、現在も被災者の方をアパートに受け入れています。

「貧乏、暇なし、子沢山」(年収280万程度)だった渡辺さんは、「地に足の付いた堅実な投資」をコンセプトとして、5年間貯金をして不動産投資を始めることにしました。キャッシュで購入した上記の中古アパートを始め、現在では3棟24戸の賃貸物件を所有するまでになりました。
不動産投資の活況が続いていますが、渡辺さんは投資家と大家の違いを次のように見ています。曰く、「『投資家は数字がすべて』であり、大家さんには、『入居者様への愛情、責任。それに付随する建物への愛情』が必要不可欠」と。血の通った人間のステージである賃貸住宅を、「数字」というナイフだけで切り口を入れるのには抵抗のある渡辺さんですが、賃貸経営には「数字に対するバランス感覚が鋭い」ことも必要だと言います。
さらに「不動産、特に土地は古来より綿々と受け継がれる『日ノ本の物』であり、『社会全体の貴重なストック」である事を考えれば、最も愛情を注ぎ『上手く使える者』が形として『所有」し、活用するのが本来であり、それが出来ないプレーヤーは、それが出来るプレーヤーに任せるべき物ではないでしょうか?」と述べています。「古い物件を入手して、手直しして生き返らせることに生きがいを感じる」という渡辺さん。今後もその発信力を生かした、活動が続きそうです。

 

「大家が『住』の提供者として、もっと発信していくことで、よりよい賃貸業界を作ることができるのです」

 

1973年 東京都生まれ
2004年 店舗兼住宅取得。大家を志しては居なかったものの住宅部分のローン返済を店舗賃料より返済することになる
2006年 肉親の土地へ新築マンションを建設する計画が持ち上がり、不動産投資の勉強を始める
2007年 競売により埼玉県越谷市に戸建を落札、家業の傍ら本格的に大家業を開始
2010年 空室率75%の廃墟寸前アパートを埼玉県にて現金一括購入。繁忙期には東日本大震災を経験と数々の困難に遭遇するも、アパート再生し8ヶ月で満室に導く
2011年以降、各種勉強会にて 自身の経験を伝えるセミナーを多数開催。「全国賃貸住宅新聞」「家主と地主」「日経新聞」などメディアにも多数掲載されている

「全国賃貸住宅新聞社」発行の土地資産家受け隔月情報誌(定価600円)紙面には、意識の高い家主さんや、活発な交流会の様子が紹介されている

名物オーナーの講演に訪れた現オーナーや、オーナー予備軍の中には、若い人や女性も多い