116-3 團 紀彦/團紀彦建築設計事務所

2013年3月11日 at 12:00 PM

撮影:Toshio Mita

「土木と建築をもっと融合させて、 景観を守っていかなくてはなりません」

―愛知万博の頃に比べて、環境に対する社会の意識が変わってきました。
團:建築家は、誤解を受けやすい仕事だと思います。ただ言われるがまま設計して、建物を建てることで「環境を破壊することに加担している、町並みを壊す」と見られがちです。事実、そのシンボルになっていた時期がありました。中国が今、まさにそういう時代です。国威高揚、あるいは「どうせやるのなら、美しいものを」ということを建築家は期待されるのです。しかし、「どうせやるのであれば、ものを建てなくてもいい環境を」という遺伝子が、もともと日本人にはあったはずです。
公共工事では、「この建物を建てる目的はいったい何なのか」というはっきりしたビジョンを持っている建築家が必要です。莫大な費用をかけるのに、「(造成した)キャンバスの上にきれいな絵を描いてくれ」という提案に対し、キャンバスそのものに対する拒否権を発動できるような建築家がもっといなくてはなりません。環境問題の活動家や学者より、実際に自然環境にメスを持つ建築家の方が環境に対して効果的な仕事をすぐにできるものです。
もう一つは土木ですね。土木に携わる人間が「造成をしなくても、建築周辺を工夫して環境に配慮したものができる」と社会に提案していくべきで、それらが建築家の職能だと思いますね。
愛知万博の「海上の森」で政府がやったことは、「とりあえずやり易いように山を切り拓く」ということで、長年の分業化と入札の制度により、それが当たり前という仕組みができあがってしまっているのです。戦後、必要とされた緊急性の高い住宅開発促進策が、その後も当たり前の方法論になってしまった点が問題です。
それから感じたのは、建築家のデザインが、社会から離れて、商業的なシンボルになってしまったということです。例えば、愛知万博の計画の調整過程で「山の中だろうが、ガラスの建築を建てれば、建蔽率 70%超えても、緑が見えて、開発のイメージがやわらぐ」という意見も出たのですが、それは環境を破壊する免罪符にはなりません。建物の建蔽率が 5%くらいでないと、本当は緑のイメージは守られません。商業地域並みの建蔽率を持ち出すためのことでし
ょうが、建築・デザインの先端の脆弱さ、制度の持っている過ちをいろんな意味で映し出すプロセスだったと思い返されます。
―建築と土木は切り離せない問題ですね。團さんは都市工学科で教鞭を取られており、都市と景観にはお詳しいですが、日本では海外に比べてまだまだ遅れているしょうか。
團:そうですね。でも土木と建築をもっと融合させなくてはならないという動きは高まってきましたね。東大でも建築家の内藤廣さんが土木学科で教鞭を取るようになっています。非常に大きなことだと思いますね。土木というのは、100%官の管轄で、「景観を守る」ということは昔はほとんど省みられてこなかったのです。トンネル一つ、道路一つにしても、デザイン教育、それを担う人を育成しないとだめです。
―先ごろの東京オリンピックの招致は、「日本は市民の盛り上がりが欠ける」という点がマイナス評価につながりましたが。
團:アジアの急成長、例えば、中国が北京オリンピックのように、一つのイベントを契機にして地域開発を進めていくのは、それはそれで重要な意味もあるけれど、東京の今後を考えた場合、「またあの 1960 年代のやり方はないだろう」という実感を持つ市民が多かったのは事実でしょう。これから東京はどちらに行くのか、オリンピック以降の開発に対して新しい考え方が必要です。
―今後のお仕事について、お聞かせください。台湾でのお仕事が 2つあるようですね。
團:2 つの国際コンペで 1 位を取りました。「日月潭風景管理所及び修景計画」と「CKS国際空港 (台湾桃園国際空港)第一ターミナル」です。台湾は公共工事がすべてコンペで行われています。まだ 3割という日本は文明国とはいえませんね。7 割は設計入札で決めていて、それも一番安い札を入れたところ、設計士が何人以上いなければだめ、など結局大手事務所にいくようになっている。コンペも審査員自体が問題だったりします。審査委員長もきちんとし
た人を選出して、審査経緯も公開して行くべきです。

 

―本日はありがとうございました。

1955 年 神奈川県生まれ
1979 年 東京大学工学部建築学科卒業。1982 年 東京大学大学院修了(槙文彦研究室)
1984 年 米国イェール大学建築学部大学院修了。
1986 年 團紀彦建築設計事務所設立
東京工業大学工学部建築学科専任講師、慶応大学藤沢キャンパス非常勤講師、昭和女子大学非常勤講師など歴任。
2006 年より、東京大学都市工学科講師

受賞
1987 年第 1 回吉岡賞受賞
1995 年新日本建築家教会 JIA 新人賞受賞
1999 年日本建築学会賞業績賞受賞
2002 年土木学会デザイン賞優秀賞受賞
2003 年” NEW TAIWAN by design” 国際コンペ 1 等
2005 年 IOC/IAKS AWARD 2005,Silver Medal
2008 年ARCASIA AWARDS 2007,2008 Gold Medal
ほか受賞多数。