114-3 土谷 貞雄/コムーネ・コムーネ 代表

2013年3月9日 at 12:00 PM

土谷貞雄氏。池尻ものづくり学校にて

みんなで考える住まいのかたち

今月は、昨年まで「無印良品の家」のプロジェクト・マネージャーを務めた、土谷貞雄さんをお迎えしました。

無駄な装飾を一切排除し、機能性を第一に考えたデザインの日用品、「無印良品」というブランドが登場したのは、今から30年も前のこと。スーパーの西友の一角にたった40品目の調味料や食料品でスタートしました。透明な袋にはいった商品には、「わけあって安い」とセンセーショナルなコピー。すべてに安さのわけが丁寧に書かれてありました。その後「無印良品」は次々と商品を開発し、現在は7000アイテムの商品を供給しているそうです。西友からも20年前に独立。直営店舗だけでなく、海外にも進出。その生活用品を売る企業が2003年には、住宅事業への進出を開始して話題になりました。スケルトン+インフィル、SE構法を基調とした「無印良品の家」は、「窓の家」で2008年「グッドデザイン金賞」を受賞しました。

―「無印良品」のHPは、会社概要や商品をネット販売するだけではなく、商品に対するお客様の意見や感想をアンケートの形で吸い上げ、本当にお客様が求めるものを提供しようという姿勢が貫かれていますね。
土谷:そうです。その中で僕らは2004年に「無印良品の家」というオリジナル商品を作ることになったのです。それまで何千点もの商品を作ってきたので、生活を見せる事において家も作ることができると踏んでいたのですが、実際には、初めはほとんど売れなかったですね。今はずいぶん伸びてきて、年間140棟くらいの売上になっています。「木の家」「窓の家」というプロジェクトを通してわかったことは、お客さまの期待は単に家を買ってくださるというより無印という思想に共感していただいてるんだということです。家というのは暮らしのシンボルであって、「無印商品が人々の暮らしを豊かにしていく」ということを提案し続けなければいけないと思いました。通常のハウスメーカーとは違う中立的な立場で、お客様のニーズを掘り起こしていくことが大切だと思っています。僕はいったん家づくりの企画からはずれましたが、本当のお客様の暮らしを知りたいと思い始め、1年半前からこの7月までお客様に向けて、インターネットで毎月アンケートを行いました。
―それが、「みんなで考える住まいのかたち」というサイトですね。
土谷:まず、あるテーマを掲げ、メールマガジン(以下メルマガ)で問題を投げかけます。例えば、「あなたはテレビをどこで見ますか」とか「洗濯機はどこにおきますか」など。すると、それに対して回答が寄せられ、更に細かい質問を続け、それを間取りにしていく、ということを行います。それによって浮かんでくる課題などを考えて、今度はもっと細かくアンケートをとっていきます。洗濯機の問題を聞くのであれば、家事についてのアンケートを行い、何を、いつ、どこで、どのくらいしていくのか、などということを調べます。反響が次第に大きくなり、最終的にはアンケートについては1万人を超える方が参加してくれるようにまでなりました。
このプロジェクトを進めていくうちに、アンケートはコミュニケーションのツールであり、答を出すことよりも、いい問いを作ることが重要だとわかってきました。いい問いをつくるために、実際のお客様の家にも行き、課題を見つけるようにします。現場をみることで様々な発見があります。とにかくお客様の声を聞くこと。そのことでアンケートのリアリティをあげていくことができるのです。

「無印」の原点はお客様と一緒に考えることです。平均値である必要はないし、メジャーであること必要もない。パーソナリティは、端っこ、マイナーな部分に出てきます。たくさんの数のデータから浮き上がってきた一つ一つの問題は小さなことや、マイナーなことのほうが大切です。無印良品ではこうしたユーザーから多くのことを学びました。
この6月に無印を退社して、「コムーネ・コムーネ」という組織をつくりました。暮らしの延長としてコミュニティのありかたを研究し始めました。豊かな暮らしにはお互いが支え合う理想的なコミュニティが必要だと思ったからです。持続可能な社会の仕組みや環境に負荷のない暮らしや建築を考えていこうと思います。無印での経験を生かして、暮らす人の目線を忘れずに、暮らす人と一緒に考えていきたいですね。
―本日はありがとうございました。

 

「コミュニケーションでは問いかけが大事、答は全てユーザーから学びました」

この8月27日、入居が決まった「池尻ものづくり学校」にて。自身の主宰するコミュニティ「コムーネコムーネ」の活動拠点にしていく予定だ。
http://www.comunecomune.com/