113-3 織山 和久/アーキネット代表取締役

2013年3月7日 at 12:00 PM

建築家と創るコーポラティブ住宅

コーポラティブ住宅は、入居希望者が組合を結成して、共同して事業計画を定め、土地の取得、建物の設計、工事の発注等を直接に行い、住宅を取得するものです。アーキネットは、このコーディネーター事業を始めて 14 年。現在、弊社でもいくつか企画に参加させていただいております。社長の織山氏に改めてお話を伺いました。
―コーポラティブ住宅を手がけようと思われたきっかけは何でしたか?
織山:コーポラティブといっても、僕はいわゆる「コミュニティの形成」を目的にしているのではなく、建築家の作る空間を一般の人にも提供したいという思いからスタートしました。当初 HP で建築家の仕事を紹介しようかと思いましたが、それだけでなく僕らの役割を考えたとき、集合系の建物を建てていくことが街にとってもいい仕事になると考え、最初に建築家による空間を提示して、インターネットというリーズナブルな手法でそこに住みたいお客さんを集めるシステムを作りました。
―いまや、会員は 3 万人を超えるそうですが、最初は何人くらいでした?
織山:20 人くらいですね。関心持っていただけることはありがたいですね。

―コーポラティブ住宅は時間や手間がかかって大変といわれますが・・・。
織山:一生のものを作るのですから、建築家との話し合いを会員の皆様は楽しみにしています。それを面倒だと思って出来合いの高額の分譲マンションを買って、一生後悔するよりも、精神的にも経済的にもずっといい。
―分譲マンションはまず、自由度がないですよね。
織山:お客様によっては、コーポラティブにしようか、中古マンションをリフォームしようか、という選択で悩む人もいますが、素性の知れない建物に何千万円もかけてリフォームするなら、もともと器が良くて、内装をあまりいじらなくてもすむような建物を建築家と新しく建てる方がいいですね。
―昨年来の金融ショックで、多くの不動産会社やデベロッパーが大変な状況です。
織山:「分譲マンション」は日本に特異な仕組みです。欧米だとコーポラティブの方が普通ですね。「分譲マンション」という手法がもう限界が来ている証拠です。上がると思われる土地をどんどん仕入れて、建物を作って売れるうちはいいけれど、ひとたび下落になると、マンションは売れ残り、景気の変動をもろに受ける。結局、売れ残りリスクを前提に販売に乗っけていたり、広告宣伝費を乗っけていたりしますから、担保価値は 5-6 割です。
そんなものは長続きするわけはありません。コーポラティブを手がけるのは、小さな会社でいいです。その代わり外部リスクを受けない、安定していい住空間を提供することになるのですから。
またコミュニティ形成の適正規模は 10-12 戸と言われています。集合住宅の修繕や建替えなどの決定は入居者の5分の4の賛成が必要ですから大規模集合住宅になると大変です。50 世帯あれば 1 世帯は変わった人がいるから 200 戸ならば―という簡単な算数です。こと、住まいに関しては、もっと大切なことを消費者に理解してもらわないといけないと思います。
―そういう意味では、内覧会もよく開かれているようですね。
織山:お住まいになって 1 年後の方にお願いしていますが、皆さん快くオープンハウスに協力くださいます。単純にいい家では、「ぐっすり眠れる、早く帰宅したくなる、家で飲む、パーティをする、楽しく家事をする」ということなんです。こんな当たり前のことが満たされていないのが、日本の住宅なのです。
家は単なる消費材ではありません。資産価値のあるものにお金をかけることは、大切なことです。スケルトンとインフィルを分けて考え、「こういう建物を建てれば、資産価値が落ちない」というものであれば、住宅ローンも有効です。実際、わが社で手がけた建物で、事情があって転売されたお客様がいらっしゃいましたが、「価格が上がった」と喜ばれていました。
建物に対する評価がマーケットできちんと行われるようになってきている、と感じますね。コーポラティブはまだまだマイノリティですが、エンドユーザーに正しく理解してもらいたいと思いますね。

―本日はありがとうございました。

渋谷のアーキネットの事務所で。作品の模型がところ狭し、と飾られている。
 弊社施工で 2008 年 1 月に竣工した、目黒の「Glasfall」の模型を前に。
http://www.archinet.co.jp/

「建物づくりに本当に必要な情報を、もっときちんと開示していくべきだと思いませんか」

織山 和久
建築家と創るコーポラティブ住宅 アーキネット 代表取締役/ 織山 和久
1961 年 東京都生まれ。
東京大学経済学部卒業。三井銀行(現三井住友銀行)を経て 1983 年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。コンサルタントとして、建築・不動産、金融、官公庁をはじめ、地域・都市経営に関する分野を中心に活動。
1995 年、株式会社アーキネットを設立。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む(特許申請)。
著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

 

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