112-3 吉田 太一/キーパーズ 代表取締役

2013年3月6日 at 12:00 PM

 天国への引越し屋さん

今月は、2002 年、「天国へのお引越し」をキャッチフレーズに、日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ」を設立された、吉田太一さんを訪ねました。
「遺品整理業」とは、亡くなった人の遺品を遺族に代わって整理し、あるものは処分に廻し、あるものは遺族に形見として届け、あるものは僧侶を呼んで供養し、故人の元へお送りするという仕事です。吉田さんは『現実にある出来事の紹介』(http://www.at-at.jp/)というブログの中で、何週間も発見されなかった孤独死や自殺の現場を語り、各方面に反響を呼びました。
年間 3 万人の自殺者、増える老人の孤独死。皆様、人生のエンディングへの備えは万全ですか。
―これまで出版されたご本を拝見しましたが、孤独死で亡くなった方の話などを読むと、本当に他人事ではないと痛感します。死後何週間も経ってから発見される現場は、想像を絶する空間になっているわけですね。そもそも、こんな大変なお仕事を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
吉田:若い頃からサラリーマンには興味がなくて、いろいろな仕事をやりながら、常に「人がやったことのない商売をやりたい」と考えていましたね。運送会社に5年ほど勤めた後、コンビニ経営を目指しましたが挫折、自己破産の一歩手前まで行きました。借金して軽トラックを買って独立し、運送業を始めましたが、頼まれたら何でもやりましたね。断るのは大嫌い。棚をつけてくれ、とか、内職やる人いないかとか、どんな相談にものって、自分が応えられる―それが満足につながるんです。その後、全国に先駆けて引越し屋のリサイクルショップも始めていましたし、HPの自社制作も 1997 年から行っていました。

ある時、ご遺族の依頼で遺品整理をお手伝いする事になったのです。しかし、当時は遺品整理の何もかも相談に乗って手伝ってくれる会社がありませんでした。そこで私が「全てお任せ下さい!」とお話したらとても感激してもらえたのです。その時、私は「よっしゃ!遺品に関する一切を断らない会社を創ろう」と思ったのです。変死や自殺現場は想定外でしたけどね。
―ブログ「現実にある出来事」は、目線が暖かいですね。
吉田:もともとブログは求人のために始めました。仕事の内容を書いて、自分の考えを添えると、会社の業務への理解が早い。さらに現実の出来事を描いたら、一日に数千人が見てくれるようになったのです。そのうち出版の話も来るようになり、自著を出版したらベストセラーになったのです。
最近はキーパーズというブランドを知っていてくる人も増えて、今後はブランド力をどう伸ばしていくかがテーマですね。
実はこのビジネスを始めてから、需要はあるが遺品整理をビジネスとして続けることには葛藤がありました。便利なサービス業は、本来、人間が持っている機能を弱めることになるからです。
遺品は、本来遺族が片付けるのがベストですが、実際に身内の遺品整理に時間を取る余裕のない方がとても多いのが現実なのです。身内の遺品整理を初めからやる気のない人が増えるのも問題です。しかし、現実には困っている遺族が多く、お手伝いをするととても感謝の言葉をたくさん頂けるので、現在はその葛藤は無くなり自信をもって提供しています。
―「孤独死」の老人を扱ったアニメDVDも製作されて、無料で配布されていますね。講演会の依頼もあると聞いています。
吉田:行政やNPOなど様々な方からも話を聞きたいと言われ、月に何度かは講演に出向いています。このDVDを見てもらい、ショックを受ける事によって自主的に孤独死を避けたいという気持ちを持ってもらうのが狙いです。自宅での変死が減れば不動産価値の下落を防ぐ事にもなるのです。無料で配布しており、行政の方も希望され勉強会に使っていらっしゃいます。計算が面倒くさいから、どんどんコピーして使ってくださいと言っています。

―本日はありがとうございました。

 

「人間どうせいつかは死ぬけれど、誰にも気がついてもらえない生き方はやめて、楽しく暮らしましょう」

 

吉田 太一
天国への引越し屋さん キーパーズ 代表取締役/ 吉田 太一
1964 年 大阪府生まれ
1983 年 高校卒業後、日本料理店で板前修業
1984年 単身上京、21歳で飲食店店長に抜擢されるが、1年後閉店。職を転々とする。
1988 年 結婚、大阪へ戻り、佐川急便に入社。宅配ドライバーを 5 年間勤める。
1994 年 独立、大阪市に吉田運送創業。運送業、引越し業務開始。
1996 年 全国に先駆けて引越し屋のリサイクルショップを開く。
2002 年 名古屋市に遺品整理会社「キーパーズ」を設立。刈谷市に名古屋支店開設。
2003 年 キーパーズ東京支店、大阪支店を開設。 04 年 福岡支店設立。
2005 年 引越し・リサイクルショップ閉店、遺品整理業に特化。
2006 年 著書『遺品整理屋は見た!』を刊行し、以後マスコミで話題になる。

東京支店の倉庫にて。各支店に祭壇を設けて、2 ヶ月に 1 度、僧侶を招いて遺品
の合同供養を行う。故人縁の品物が天国に届くようにとの願いをこめる。
http://keepers.jp

 

キーパーズ関連出版物(左から):家族のために残しておきたい情報を記入する「エンディング・ノート」、さだまさし著「アントキノイノチ」、吉田太一著「遺品整理屋は見た!!」