163-3 渡辺 健児/COMPUTER VISUALIZATION

2013年10月11日 at 12:00 PM

CG独自の可能性を追求

渡辺健児氏。隅田川の河畔にある事務所にて 撮影:アック東京

 

今月は、この9月にお引渡させていただいたた「表参道けやきビル」で、独特な形の柱の納まりやその型枠を検証するためのCGを作成された、渡辺健児氏にお話を伺いました。

―ロンドンオリンピックのスタジアムのCGを作成されるなど、海外でまず仕事の場を広げられました。
渡辺:大学を卒業してストリートファニチャーや家具を作っているメーカーでプロダクトデザインの仕事をしていたのですが、かねてから海外での生活をしてみたいと考えていました。当時は、ロンドンのデザインが非常にパワフルで、最初の1年くらいは語学の勉強とヨーロッパ中をとにかく旅行しました。なんとか英語が出来るようになり、小さなデザイン事務所に潜り込み、プロダクトデザインを1年ほどやったのですが、イギリスではプロジェクトベースの契約が普通なので、その仕事が終わると同時に次の仕事を探さなくてはなりませんでした。プロダクトデザインの業界は、もともと3Dの普及が早く、私もCGで自分のデザインを人に見せていたのですが、それを見た現地のインテリアデザイナーやディベロッパーなどからCGの仕事を請け負うようになりました。そうこうしているうちに、知人の紹介で建築のCGを制作している事務所で働くことになったのです。リチャード・ロジャースといった著名建築家の仕事を数多くやっている事務所で、当初から国際コンペなど大きな仕事に携わることができたのはラッキーでした。
その頃からデザインの興味の対象が建築の方へと移っていきました。「今更建築の設計は出来ないがCG制作でなら何かができる、しばらくやってみよう」と思いました。その後ワールドトレードセンター跡地の再開発事業やロンドンオリンピックといった仕事を経験し、2008年に帰国して独立しました。帰国してからは槇総合計画事務所といったアトリエ系設計事務所から、組織設計・ゼネコンまで幅広くお手伝いさせて頂いています。

―CGというと、マンションなどの広告で拝見することもありますが、どんなかたちで作られていくものなのでしょうか。
渡辺:建築のCGといってもいろいろあるのですが、うちの事務所では企画や設計の段階でのビジュアライゼーションが主な仕事です。特にコンペなどでは、最初、詳細な情報のない中で形を3Dにおこし、マテリアルやライティングの設定をし、パースやアニメーションにしていかなければなりません。すべてが同時進行でタイトなスケジュールの中、設計者といかにコミュニケーションを密にするかが重要となってきます。設計者が発する言葉を聞き、何を表現したいのかを確認し、さらに最適な表現を考えます。
私はこの仕事をある意味「DJ」のようなものではないかと考えています。建築家にいかに気持ちよく踊ってもらうか―。建築家が自信を持ってプレゼンテーションに臨めるようなビジュアルを提供したいのです。
以前は、建築家が自らパースを描いていたのですが、現在は分業化が進み、第三者が代行しています。そうなるとまずは、建築家の意図を正確に表現することが重要ですが、さらには建築家が考える以上のものを提供できるよう意識しています。現在の国際コンペでは、これまでのフォトリアルCGでは印象が弱いと考えています。かといって「手描き」に戻るのは、効率の面で難しい。やはりCG ならではの新しい表現を常に探求していかなくてはと考えています。

―これからのご自身のCGは、どんな方向に進んでいかれると思いますか。
渡辺:前述したとおり、常にCGやアニメーションの新しい表現を追求していくのはもちろんですが、3Dを中心とした設計サポートも要望としては増えてきています。今回お手伝いさせて頂いた「表参道けやきビル」がわかりやすい例ですが、3次元曲線で構成された複雑な形状のSRC造の構造体の場合、2次元の図面では1本の柱の形状ですら把握できません。そこで我々が正確な形状をまず3Dでモデリングし、それをもとにすべての納まりの検証を行いました。さらには発泡スチロールを使用した型枠制作のためにも使われました。もともと我々はCG制作のために3Dモデルを作るのですが、今回はその精度を上げて施工に必要な情報として使用したのです。設計事務所でも3Dで設計していくことは珍しい時代ではありませんが、やはり施工のサポートをするまでには至っていないのが現状ですので、今後も我々がお役に立てることがあるかと考えていますし、実際、同様の仕事を頂いています。
今後はCGやアニメーション制作とともに3Dモデルを中心とした設計・施工サポートまで幅広いサービスを提供していきたいと考えています。
―本日は、どうもありがとうございました。

 

「建築家が自信を持ってプレゼンテーションに臨めるようなビジュアルを提供したいのです」

 

ロンドンオリンピックのオフィシャルイメージとして使われたCG

渡辺健児

1970年 東京都生まれ
1994年 日本大学芸術学部卒業、国内メーカーにプロダクトデザイナーとして勤務
1999年 渡英。デザイン事務所の後Team Macarie(ロンドンのCG制作)に勤務
2004年 リチャード・ロジャースの上海国際空港コンペのCGおよびアニメーションにてSIGGRAPHのCGアワード建築部門入賞
2007年 ロンドンオリンピックメインスタジアムのCG 制作、2008年帰国、独立
2009年 槇総合計画事務所によるGyeongGi-Provincial Government Office( 国際招待コンペ )のCGおよびアニメーション制作
2012年 伊東豊雄建築設計事務所による南洋理工大学 のアニメーションCG制作
2013年 槇総合計画事務所によるナーランダ大学( 国際招待コンペ )のCG制作

現在、JARA/日本アーキテクチュラル・レンダラーズ協会・理事も務めている。
http://www.jara-net.com/

③表参道けやきビルの複雑な形状を制作。施工に必要な精度でモデリング