172-4 特別座談会「新しい街の写真館」

2014年7月16日 at 5:20 AM

村田和哉(不二写真館)+藤瀬弘信(東京建物)+北山恒(建築家)

 

今月は新しく写真館を建替えられた、恵比寿の「不二写真館」の3代目村田和哉様と、企画の東京建物不動産販売株式会社コンサルティング営業部の藤瀬弘信様、建築家の北山恒先生のお3方にご登場いただき、座談会を開かせていただきました。
創業78年、お祖父様が麻布十番で始められた写真館は、戦争で焼失して、中目黒へ。そして恵比寿へと移られました。都心でご商売を続けていかれるための今回のプロジェクト、それぞれのお立場での思いを聞きました。
―恵比寿の駅からすぐ近くですね。完成されてどんなお気持ちですか。
村田:無事完成し、家族一同とても気にいっています。今、すごくわくわくしている状況です。

藤瀬:私がお会いした段階で、すでに建替えをご検討されていたのですが、既存の建物は1階が写真館、2階がご自宅で、その中で敷地を有効に活用されたいというご要望だったのですね。結果的には、1階は写真館、中間階にテナントが入り、5階はご自身の利用されるフリースペースとなりました。
北山:藤瀬さんからお話をいただいたとき、すでに別に図面があったのですがすごく太い柱があって、ごくスタンダードなプランでした。ですから、最初にお父様とお会いした折に、「1cmでもスペースを広くとりたい」というご希望に、「もう少し何とかできるのではないか」という気持ちになりましたね。複数の細い柱で構成しながら、よりスペースを広げ、そのためブレース構造を採用し、耐震性を強化しました。最初の図面に比べ、設計の手間、工事の手間もかかってしまい、施工者側には苦労してもらいましたが、予算が決まっている中で新たな提案をさせていただく着地点を探っていきました。工事コスト、容積を抑えて、オーナー使用となる1階と最上階の天井高を高くとることで、将来の可能性を残しておくことにしました。ビジネスの展開や、スタジオの空間をできるだけ広くとること、中間のテナント階の仕様も考えていきました。細長い形状のスペースは、最初にビジネスを始める人にとっては、結構手ごろな物件なのです。
藤瀬さんもこの地域のマーケットをよくご存じで、良い判断をくださいました。エレベーターも少しでも広く感じさせるように、と5階はシースルーにしましたが、下の階にとっては使い勝手によっては制約してしまい、お金もかかってしまいます。下層階は閉じた形になりました。

藤瀬:不動産会社としては、このように建替えのご相談を受けることが多いのですが、大手の建設会社、組織設計事務所さんにお願いすることがほとんどでした。デザインを作りこまれても、建築費が高くなってしまうと、事業として成り立たないという根本があります。建設費をにらみながら仕事をしていくことが 結局多くなってしまいます。
しかし、今回はオーナー様のご判断もありまして、全く違うプロセスでやっていくことになりました。通常企画の段階で、オーナー様と詰めていくことが多いのですが、実際の基本設計になると、細かい指定、例えば、もう数cm広げたい、というような話は、これまではまったくなかったのです。が、打ち合わせをさせていただく中で、「少しでもお客さんの気持ちになりたい」という北山先生のお気持ちがありましたね。
ですから、先生の新しいプランの説明があったとき、村田様が笑顔になられた瞬間が忘れられません。改めてどんなお気持ちだったか、聞かせていただけますか。
村田:広さを考えてくださったこともありますし、もともと1階の写真館だけでなく5階にも「何か自分達が使えるスペースを残しておこう」という気持ちがあったのですが、「じゃ、何がいいか」ということとなると、漠然としていて自分たちだけではわからなかったのです。それが「一つ絵が見えた」という気持ちになったんです。将来、この場所を使って面白い仕事をやっていけるのではないかと道が開けた思いでした。それは、何もない状態で「写真屋が飲食やるのか」という問題ではないのです。結局、「なんだかわからないけど1個スペースを持つ」ということから、確かな広がりができてきたのですね。
―設計の先生が用意されたスペースによって、気持ちまで変化したということですね。
北山:この場所はとてもいいところだから、写真ギャラリーになったり、バーになったり、カフェになったり、いろんなことができそうです。写真館が和哉さんの代になって、また新しいいろんなビジネスが始まるのではないかと思っています。
村田:何人か呼んでパーティをやったりしていますが、皆、使い勝手がいいと言ってくれていますね。長々と滞在してくれています。ジュエリーの個展、陶器の個展の準備をされている人もいます。テナントでは、美容室さんが「雰囲気のいい5階を利用して撮影をしたい」ということで4階に入られました。2,3階にはバーが入りました。
藤瀬:私は事業として、オーナー様、建築家の先生、施工会社様と組んでというお仕事は初めてでした。これまでの仕事が決して、喜んでいただけなかったわけではありませんが、経済的な側面が大きかったですね。今回はそれ以上にオーナー様の思いに応えていただけた。将来的な期待度、街の中での貢献度、一言でいうと、「いいものができた」と思うのですね。こういうことなら、「もっと早くやっておけば良かった」という思いです。
村田:いろんな人とコミュニケーションを取れますからね。それから街の写真館の大きな使命としては、街の中をずっと見つめていくということがあります。何代にもわたって長く商売をやっているということで、突然「話を聞かせてください」と言われることもあります。「昔の恵比寿はどうでしたか」とか。先代の写真は手元にはあまり残っていませんが、将来的にも同じことを聞かれるだろうから、少しずつ撮影しています。伝統的な写真館のスタイルは堅持しながら、いろんなことに挑戦していきたいですね。

―本日はどうもありがとうございました。

不二写真館
住所:東京都渋谷区恵比寿南 1-1-4
TEL&FAX:03-3713-5517
営業時間
平日:10:00am~7:00pm
日曜:10:00am~6:00pm

木曜日定休
http://www.geocities.jp/ebisu_fujisyasinkan/