174-3 平田晃久 /平田晃久建築設計事務所

2014年9月16日 at 2:03 PM

自然と建築

今月は、「コトリク」の設計者、平田晃久氏をお迎えしました。

―「コトリク」は、有機的なデザインが若い方たちの共感を得て、すぐに入居者がきまったそうですね。生き物のような楽しい建物です。
平田:大学の進路では、生物に行くか建築に行くか迷いました。子供の頃から自然の中で遊ぶことが好きだったのですが、「遊んでいるときと建物の中にいるときとは違うな」と、建物の中でも、もう少し自然環境に近づけないものかなと感じていましたね。
大学卒業後は、伊東豊雄さんの仙台のメディアテークに、自分の求めていた感覚に近いものを感じたので入所したいと思いました。当初は3年くらいで独立しようと思っていましたが、結局8年間在籍しました。特に最後の3年は好きにさせていただいて楽しかったですね。あてもなくて独立したものですから、1,2年ぶらぶらするかなとは思っていましたが、数カ月後、あるコンペがあり、応募しました。
―「桝屋」という会社のショールームですね。
平田:シンプルな5mグリッドのコンクリート壁を斜めにカットして森の中のようなスペースを作りました。お店の中に入ってみたくなるような、あるところまで行くとまた別のところに行きたくなる、奥行感を出しました。インターネット上のコンペでたまたま良いクライアントと出会ったのですが、それからも人との出会いが重なって今まで来ている感じですね。

―住宅や、商業地区の計画も手がけられていますが、2011年の東北の震災では、平田さんはどのような経験をされましたか。
平田:震災は高いビルにいるときに遭遇したのですが、延々と階段室を下りていくことになって違和感がありましたね。街の作られ方として、ただ下にいくだけのアクセス、袋小路のような作りは間違っていると感じました。ビルの建てられ方を変えたい、チャンスさえあればそういうことにも挑戦したいと思ったことが一つ。
もう一つは、東北の震災後、建築家としてできることはあるのかと悩んでいたとき、伊東さんから陸前高田でコミュニティのための場所「みんなの家」をつくるきっかけをいただき、藤本壮介さんと乾久美子さん、写真家の畠山直哉さんとの協働作業を通じて、建築の作り方の原点に戻った体験をしたことです。
普通、我々が建築を建てるときには、敷地が決まっていて、法的な制限も予算も決まっています。でもそもそも、建築とは誰のどんな活動のために、どこにどんな建物を建てるか、ということから生まれるものです。
最初は仮設住宅に小さな集会所を建てる予定でした。それが、地域のリーダーのアイディアで一気に違うフェイズに入りました。一時避難所である体育館で生まれ始めていた人々のつながりは、仮設住宅に入居する時点で、各所に散り散りになってしまった。そういうバラバラになった人たち同士が、「会ってあたたかい時を過ごせるような場所がほしい」という思いが生まれていました。そしてリーダーが「ここに」という場所を探してこられた。街のいろんなところから見えて、海も見える。集まるための場所が切実に求められているというリアルな状況の中に巻き込まれながら、3人の建築家が共同して働けたことは、本当に貴重な経験でした。本来、「人が集まる」という根っこの部分から建ち上がってくるものこそ「建築」なわけですから。

―海外でのお仕事も多いのですね。
平田:最近では、日本と海外と半々で仕事をしていますね。
海外では、やはり期待されていることが多く、それなりの責任も出てきますが、やりがいはすごくあり、楽しんでやっています。国内の建築コミュニティとは少し違う規範、例えばヨーロッパで何か建てたいという思いもありますね。今、チリでは、太平洋を臨む住宅、台湾では空港近くの複合施設や、高層集合住宅をやっています。台湾の方は日本を好意的に見てくれている人も多いし、気候が温暖で仕事がしやすいですね。

今後、日本でできる建物の数はどうしても減少する傾向にあります。少なくても、財産として貴重なものを残したいですね。現在、群馬県大田市で図書館と美術館の複合施設を設計していますが、他の地方都市同様、駅前の空洞化が問題となっています。そんなところに、駅前に建築だけポンと建てても人が来なければ意味がない。それでプレイベント的に設計作業を利用者と共有しようとしています。ワークショップなどを開いて、仕事量はほとんど倍になって大変ですけど、最初のきっかけを役所や市民団体といっしょに、建築家も加わって何とかしてつくらなればならないと思います。陸前高田の経験を生かして、建物が建ち上がるときに、そこを使う人たちのエネルギーを最初からどれだけ集め、どれだけ取り入れられるのか、頑張っているところです。

―本日はありがとうございました。

 

「東北の復興支援プロジェクト『みんなの家』では、 建築の原型ともいえる体験をしました」

 

平田晃久

1971年 大阪府に生まれる
1994年 京都大学工学部建築学科卒業
1997年 京都大学大学院工学研究科修了、 伊東豊雄建築設計事務所入所
2005年 平田晃久建築設計事務所設立
現在 京都大学、東京工業大学、多摩美術大学 非常勤講師  東北大学特任准教授

主な受賞歴
2008年 第19回2007JIA新人賞(桝屋本店)
2010年 グッドデザイン賞(alp)
2012年 第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 金獅子賞