179-3 フロリアン・ブッシュ/FLORIAN BUSCH ARCHITS

2015年2月16日 at 11:38 AM

世界中にネットワークをもつ

今月は、「R4 BUILDING」の設計者、フロリアン・ブッシュ氏にご登場いただきます。ブッシュ氏は、ドイツ生まれ。この2月で来日11年目です。

―日本には、なぜ惹かれたのですか。
ブッシュ:初めて来たのは、20年前。20代前半で、主に関西方面を回りましたね。その後2、3年して、東北大学に1997年から1年間留学し、ロンドンなども住んでいましたが、11年前から東京です。学校は推薦があったので来ましたが、とにかく日本の古い文化に触れたくて日本中を旅しました。山にも神がいるとか、そういう発想はヨーロッパではないでしょう。ずいぶん奥深いところも尋ねましたね。
―それから、伊東豊雄さんの事務所に入られています。
ブッシュ:ゲントのコンペから(ゲント市文化フォーラム)ですね。バルセロナのトレスフィラ、台中の メトロポリタンオペラハウス、シンガポールの超高層オフィスなどを担当しました。

伊東氏の事務所では、アルゴリズム(=コンピュータにより問題を解く計算手順。これを用いて、従来では考えられなかった形態や構造を持つ建築作品が生まれるようになった)を操作して建築的な解決方法を見出していく技術で貢献。単にランダムで複雑な形のものを作る、というものではなく、そこには建築と環境や自然との新しい形のためのルールがあるとのことである。

ブッシュ:当然のことですが、僕は、海外の方の仕事が多かったですね。だから感じているのですが、日本の建設業界はすごく閉鎖的です。大手ばかりが仕事を取り、若手建築家の仕事は取らない。これは自分の首を絞めているようなものです。細かい動きはできないし、限られた方向でしか進めない、それは本当に悲しいことです。
日本の文化自体はとても魅力的です。日本に興味があったのは、ある意味、日本の独特な「儚さ」もあります。例えば、バラの美しさを考えてみると、ヨーロッパでは、絶対に一番華やかに咲き誇っているときを最も美しいというでしょう。でも日本では、花が落ちる直前のものにも、美しさを見出す文化がある。建物も強固なものでなく、洋服を脱ぎ捨てるように軽やかに使い、また直して使う。
ドイツなどヨーロッパでは、建物は石で作るし、昔作った教会をリノベーションする場合も、今ではどうやって作るのか、誰もわからない。技術が継承されていないのです。

―日本の木造の力はすごいですね。伊勢神宮の遷宮も、技術継承が目的の一つです。でも今、日本人が家を建てようとするとまるっきり昔の木造というわけにはいかない時代です。「ちょっといい家を持ちたい」というときに、高層マンションを買うくらいしか思いつかないのは、寂しいですね。

ブッシュ:都心は、土地が高いですからね。昔のように家があって庭があって、というわけにはいかない。空間の問題は厳しいですが、田舎には結構いらっしゃいますよ。先日ナビゲーターを務めたテレビ番組で、とてもきれいな茅葺の屋根の家を作られた方がいました。20年経ったら、葺き替え作業があるんです。内部は昔の日本の空間、つまり、畳や縁側、床の生活、そういったものを大事にされているのです。空気もいいし、健康的でしょう。日本人は心の中に快適と感じられるものを、もっと大事にしていってもいいのではないでしょうか。集合住宅も、そういうものは入れようとしないで、何か浅いキャッチフレーズで売っている―僕は心が痛みますね。

―現在は、どのようなお仕事をされていますか。
ブッシュ:設計も行いますが、他に研究も行っています。ドイツの会社とコラボして、自然の繊維を使った断熱材のサンドイッチパネルを作りました。東北震災の被災地支援である仮設住宅ためのプロポ―ザルに参加しました。スティールの仮設住宅よりましだと思いましたが、ダメでしたね。認定が厳しい。ドイツでそのプロトタイプのスペースを3つ作りましたが、イベントにはメルケル首相も見えたんですよ。
―建築について、考えていらっしゃることがあれば教えてください。
ブッシュ:そうですね。建築は環境だと考えています。要するに、環境の中に建物を置いているのではなく、建築は環境を創っていく、環境になっていくと思います。そう言う意味で、「不動」ではないとも言えるでしょう。
一方、空間は動きの変動でしか現れてこない。建築は常にインタラクティブ(双方向)な関係でできています。長いスパンで見ると、決して不動のものではなく、環境の流れの中で実在するものなのです。建築の真髄は、昔から変わらなく、人間と同じように自然の一部であると考えています。
―本日はどうもありがとうございました。

 

「建築は多くの分野の相互インタラクションのプロセスによりできるものです」

 

Florian Busch フロリアン・ブッシュ

1973年 ミュンヘン、ドイツに生まれる
1994年~2003年バウハウス大学、東北大学、
ロンドンAA School of Architectureにて建築を学ぶ2004年~2008年 伊東豊雄建築設計事務所所属
2009年FLORIAN BUSCH ARCHITECTS設立

東京を拠点とし、建築界において数十年に亘る経験と信頼を築き上げた数多くの技術家とのネットワークのなかで設計を追求している。