181-3 柴 肇一/リジェンティス株式会社 代表取締役

2015年4月17日 at 2:30 PM

 ビジネスと研究の両立で道を開く

今月は、「リジェンティス株式会社」新社屋を建てられた、代表取締役兼研究開発リーダーの柴肇一氏にご登壇いただきます。
柴氏は、大阪大学大学院で医学博士を取得し、北海道大学で理学部の助手を務めた後、1993年、米スタンフォード大学へ留学してノーベル医学生理学賞受賞者のアーサー・コーンバーグ博士に師事し、日本人で初めて生体内「ポリリン酸」研究に携わることになりました。帰国後、北海道大学でも研究を続けられ、ポリリン酸が線維芽細胞増殖因子の機能を増強することを発見し、各種医薬品関連製品に応用できる技術開発に成功しました。それは、昨年のノーベル生理学賞受賞で注目された、iPS細胞やES細胞のように、再生医療分野への画期的な応用が期待されるものでした。

―発見があって、それから製品開発へと研究が実を結んだのでしょうか。
柴:当時、日本では「日本再生医療学会」が発足したばかりで、「医療用医薬品」扱いになると、莫大な費用と時間がかかりました。特に再生医療の分野となると、無限の可能性を秘めている分、リスクもますます高くなります。そこで、まず「医薬部外品」の分野から製品開発をとりあえず進めていこうと思いました。
北大での教職も続けながら、文部科学省の補助金を受けて、製品化につながる『ポリリン酸を有効成分とする歯周組織再生用医療機器の開発』を行って経産省からの助成金も活用し、2004年、当時定年退職した父が始めた会社を現在の「リジェンティス」に社名変更し、本格的に父と共同事業を開始しました。父は長野県、私は東京農工大小金井キャンパス内に学内ベンチャー企業として東京事業所を置き、2005年第5回バイオビジネスコンペJAPANにおいて優秀賞を受賞するなど、評価をいただくようになりました。
長野と東京の2か所で事業を行っているのは、地元が長野であることもありますが、長野県の場合、薬事に関する承認業務が非常にスムーズであることがあります。東京や千葉、埼玉等の首都圏では、半年以上かかる県の承認業務が、長野では1か月程度で済むこともあります。

起業当初は売上が伸び悩み、赤字続きだったというリジェンティスだったが、ラジオショッピングの人との出会いにより、育毛剤「H-C-Bローション」のコマーシャルを流してもらったところ、急激に問い合わせが増えたという。前年に販売を開始していた分割ポリリン酸配合の「高級薬用歯磨き粉」も脚光を浴びることになり、2008年には年間販売数が30万本に到達した。

柴:ほんとにメディアの力に驚きました。今では、Amazonなどのインターネット通販や、ショップチャンネルでも取り扱っており、ネットだけでも歯磨きは年間40万本くらいになりますね。OEM商品も手掛けていて、スキンケアサロンの特別の商品も作っています。もともと体の中にあるもので、安全ですし、特許だけで4-50件あり、大学や企業と共同研究を行っています。

―そこで今回、この国立の研究ラボを新設されたのですね。
柴:そうですね、小金井キャンパスの事業所が手狭になったこともありますが、本当は2011年の東日本大震災が直接的な原因です。多くの研究施設が同じようなことになったと思いますが、あの時原発事故が起きて、計画停電を余技なくされたこともあり、電源を自力で確保する必要を感じました。
―この新しい研究所は生産施設もありますが、施設全体が内装に木や土壁を用いて住宅のような居心地のいい空間になっていますね。屋上には庭園もあります。2階の事務室と研究室は一つの大きな空間でスタッフ全員の作業を見ることができます。研究施設とは思えない雰囲気ですね。
柴:アメリカでの留学時代に過ごした研究施設の環境は、ほんとによかったですからね。コミュニケ―ションの取りやすい空間は、研究の実績に結びつくと思います。
―我々一般人は往々にして、研究者の方々は研究室だけの生活に明け暮れていると思いがちですが、柴先生は大変お忙しく、いろいろなことをこなしていらっしゃると伺っています。
柴:人に会うのも、好きですね。研究だけやっていても、やはり続きませんから。ビジネスも大事にしながら、今後も医療分野に貢献できる開発を行っていきたいですね。
―本日はありがとうございました。

柴肇一氏

1961年 大阪府に生まれる
1991年 大阪大学大学院医学研究科博士課程修了
1993年 米国スタンフォード大学医学部生化学科、アーサー・コーンバーグ教授(1959年ノーベル医学生理学賞受賞)の研究室に博士研究員として留学。日本人初の生体内ポリリン酸の研究を開始。その後、北海道大学大学院に助教授として赴任、研究を継続
2004年 研究を続ける一方、父の事業を受け継ぎ、共同事業として現在の「リジェンティス」に社名変更、代表取締役兼研究開発リーダーに就任。ポリリン酸入りの、「育毛剤」、「歯磨き粉」が売上を伸ばし、大学や医薬品メーカーと「メディカル分野」でさらなる商品開発を進めている。

「ポリリン酸で医薬部外品の開発を同時に行いながら、再生医療の研究開発も推進していきます」