183-3 田邊政裕・惠美子夫妻、田邊曜/hkl studio

2015年6月10日 at 2:34 PM

旭町診療所竣工座談会 「地域医療の実践の場として」

今月は「旭町診療所」の建て主のお一人である田邊政裕様(千葉大学名誉教授)と政裕様の奥様で診療所長となる惠美子様、そして設計者であり、娘さんでもある田邊曜氏の御3方に、オープニングを前にお話を伺いました。(以下、敬称略でお送りします)

―この医院を新しく建てられることになったのは、建替えということではないのですね。
惠美子:ええ、現在、私は千葉駅前に皮膚科を開業して10年になります。ここには夫の両親の家があり、夫の母は数十年前から、ここに地域の方々、特に高齢者の健康維持のために役立つ施設を作りたいとの希望が強くありました。一方、夫は医学教育を専門にしていた関係で、この地が千葉大学医学部、薬学部、看護学部のキャンパスから至近の位置にあることから、千葉大学の学生達が「地域で学べる」、地域医療の拠点となる診療所を作りたいという思いがありました。そこで今回、母と夫がそういった形を具現化した診療所を建設し、まず私の皮膚科がここに移転し、今後、発展させていこうということになったわけです。

田邊惠美子氏

政裕:大学の中だけでは、学生や研修医が実際に患者さんの診療に携われる機会はなかなか多くないですね。また教育は臨床、つまり現場に出ないと学べないことが本当に多いのです。特にこの地域では高齢者の方達が増えていて、地域医療の重要性が増しています。ここに長く暮らしている私の母も高齢になり、それを実感していたようで、医院建設を決意したわけです。

田邊政弘氏

惠美子:医学生にとって、大学病院や大規模総合病院の診療の場では、実際の患者様のお気持ちや保険のシステム、経営などに直接触れる機会は乏しく、私自身の経験からも、学生のうちに、こういった地域の診療所での働き方を経験する機会がほしいですね。
政裕:大学病院で教える側の教員自身もそういった経験はないことが多く、学生のうちに見ておきたいですね。
曜:クリニックの設計は初めてでしたが、具体的に母からいろいろと使い勝手などのアドバイスを聞けたのはよかったですね。学生の研修スペースとなるカンファレンスルームを待合スペースと連続する吹き抜けの上部に作りました。
惠美子:カンファレンスルームからうすいカーテン越しに、下の受付、待合にいらっしゃる患者様、スタッフの流れが把握できるのも、実習する学生にとって、診療所の中に身を置いている実感が得られ、良いことだと思います。
曜:L 字型の敷地の建物の形は、隣接するマンションの視線を遮りながら、開口部をずらして明るさを取り込んでいます。

田邊曜氏

―軽井沢のコテージのような心地よさがありますね。
曜:病院のロビーでベンチが並んでいるのは、あまり気分がいいものではないので、患者さんの待つスペースをそれぞれ気持ちよい空間にしたかったですね。
政裕:大学附属病院の本来の機能は、教育、研究と高度医療の提供です。今後はプライマリケアと呼ばれる、大学附属病院では経験のし難い医療を、地域で看護師など様々な保健医療専門職の皆さんと協同して実践し、そこで医学生ばかりでなく看護学部やその他の医療系学部学生も一緒に実習できる体制を構築できればと思っています。

―本日はありがとうございました。

 

田邊 政裕1949 年 千葉県生まれ
1974 年 千葉大学医学部卒業後、千葉大学医学部附属病院第二外科
に入局。 同大学小児外科助教授
1999 年~ 同大学、卒後・生涯医学臨床研究部教授
2005 年~ 同 総合医療研修センター教授・センター長
2014年~ 千葉大学名誉教授

田邊 惠美子
1974 年 千葉大学医学部を卒業。内科研修後、75 年同大学皮膚科に 入局。  国立習志野病院皮膚科医長,東邦大学医学部付属佐倉病院
皮膚科 部長
2005 年 千葉中央皮膚科を開院

田邊 曜
1979年 千葉県生まれ
2002年 日本女子大学家政学部住居学科卒業
2004年 Renzo Piano Building Workshop にて研修
2005年 早稲田大学理工学研究科建築学専攻修了
2005~2012年 伊東豊雄建築設計事務所勤務
2013年 hkl studio設立
2013年~ 千葉大学建築学科非常勤講師