196-3 今井信博/現代計画研究所

2016年7月14日 at 3:58 AM

長く愛着の持てる、住宅・建築・まちづくりに取り組む

今月は、「駒沢の家Ⅱ」を設計された、現代計画研究所を訪れました。SHINCLUB 130号で登壇いただいた、藤本昌也氏(元建築士会会長)と増山敏夫氏、下山政明氏ら3方が設立された事務所です。環境を読み込んだまちづくり、ニュータウンや団地などの建築計画や再生計画の実績で知られ、木造民家型構法の開発も行うなど、仕事は全国各地にわたっています。
現在、社長を務める今井信博氏にお話を伺いました。

―公共集合住宅の設計を数多く手掛けられていらっしゃいますね。今年で設立何年目になりますか。
今井: 44年目になります。設立当時は、オイルショックが起こり、戦後、高度成長路線でひたすら住宅供給が行われてきたことに対して、日本全体で見直しする機運が盛り上がっていました。置き去りになっていた地域性を踏まえた個性的な環境づくりを重視し、スタート間もない78年に「茨城県六番池団地及び会神原団地の企画・設計」(『日本建築学会賞・業績部門』受賞)で、風土を活かした空間づくりが評価され、以後20年くらい前まではコンサルも含めた公的な集合住宅や住宅地計画の仕事が中心で、以後民間の仕事、公共のプロポーザル・コンペでの仕事に変わってきました。

―当時の集合住宅を見ていたら、民間に比べてちょっと贅沢かなと思うくらい、敷地や居住空間にゆとりのある物件もみられます。
今井:おっしゃる通り、昭和50年代に建設された公共の集合住宅は、敷地に対し比較的ゆったりとしていて生活しやすく、今もいい物件として残っています。しかしバブルに向かって、次第に都心部の地価や工事費が高騰し、良質で安価な公共住宅が「民業圧迫」するという声もあったりして、国の住宅施策の目標も改められました。また、これまで高度成長期に建てられた物件が老朽化を迎えてきており、計画にあたっては、建てなおしたり修繕したりする前に、その地域の環境の変化、例えば人口減少のため、その場所で住宅建設の必要性がなくなった場合の跡地利用も含めて、厳しく調査・検討することが求められています。

私自身は、入所以来、東京に10年、広島事務所に10年、また東京に戻り、今年で10年目になりますが、高齢化や過疎化が先行する広島で学んだことは大きかったと思います。2000年、広島で手掛けた団地の設計(レイクヒル福富町営住宅)では、地場産業である木材産業の活性化も求められました。実は広島は林業以上に、輸入材中心の「製材業」・「木材加工業」がとても盛んな地域なのです。県の依頼で、地域の林産資源を活かす住宅生産の仕組みづくりの検討を行い、その後、設計者・工務店・材木店の仲間と地域材を用いた家づくりに取り組み、その良さを伝える活動も20年近くになります。
2007年には、滋賀県高島市の朽木東小学校、中学校共用体育館の改築工事にあたり、住民参加による新しい体育館づくりに参加しました。全国から12のチームが応募するプロポーザル・コンペが行われて、当事務所と水原建築設計事務所・山辺構造設計事務所が提案する、地元の杉材を用いた「持ち送り重ねアーチ梁」による屋根の案が採用されました。地域には、中学校が昭和25年から植林、下刈などの管理を行っている「学校林」と、「市有林」があり、地域材を使うことで誰からも愛される体育館を目指しました。アーチを支える柱と雪に埋もれる外壁はコンクリートで、長い冬期の積雪にも耐えられるものとし、小学校からのブリッジアプローチや、「サブアリーナ(小体育館)」も設け、小中学校兼用による時間割の重複、体格差の問題なども解消しました。夜間の社会体育にも利用されています。

昨年完成した、兵庫県の日本海側の但馬地域の豪雪地帯に建つ村岡小学校の耐震改修と改築では、地元の木材とその加工技術を用いて、校舎を「ふるさと教育の場」として計画しました。全校児童が集まるランチルームを中心にした木造棟は、スギ材の片流れの架構とし、特別教室や幼稚園等も入っています。RC造の既存校舎も木質化して活かした「木の学校」づくりは、世代を超えて受け継ぐ、食育、木育の場となり、木を使ったサイン製作などで児童も建設に参加しました。

こういった実績もあってか、最近では木造建築づくりの技術的支援や、まちづくりなど「建築で新たな環境を作る」、「今あるものを活かしながら、将来へ向けてその場所に必要な建築の仕組みづくりを行う」といったコンサルティング業務も増えています。また、木造建築の担い手の人材育成の観点や建設業界の若手人材の育成にかかわる仕組みやテキストの作成など、国交省や業界団体からの要請にも応えています。
時間はかかりますが、「地域や場所ごとの特性とプロセスを大事にする」当事務所のスタンスは、これからも変らない必要な姿勢だと思います。
―本日はどうもありがとうございました。

 

「今あるものを活かした建築が新たな環境をつくります」

 

 

現代計画研究所

1972年 藤本昌也、増山敏夫、下山政明ら大高正人建築設計事務所のOB、3人が設立。今年で44年を迎える。
2016年現在 所員:16名
東京本店、広島支店

取締役会長 藤本昌也
代表取締役社長 今井信博
http://gkk-tokyo.com/