203-3 金沢と東京の2拠点で道を拓く   小津誠一/E.N.N.代表

2017年2月20日 at 10:04 AM
(203-1 からつづく。ここからはインタビュー形式で)
―東京から金沢へ、拠点を本格的に移して変化はありましたか。
小津:どちらかというと、「地方の方が移住しないと信用されない」とすごく感じました。理想を掲げていても本当に食っていけるか不安でしたが、移住した直後から、様々な仕事に関わる相談が降ってきました。こういう会合があるから出てくれないかとか、こういう団体があるから来てくれとか。疎まれていると思っていたところからも話がくるし、行政からも声がかかります。もっと皆さん、2拠点での生活を考えてもいいと思いますね。
―金沢と東京の2拠点で活動されて、どんなことに気が付きますか。
小津:建築の存在感は、金沢の方が東京より圧倒的にありますね。リノベーションのような仕事が多いのですが、5年前に建てたにもかかわらず「あの八百屋さんができて良かったよね」と今でも言われます。
逆に東京にやってくると新陳代謝が激しすぎて、数か月前にそこに何があったかわからない状況。僕らの仕事は存在感が希薄になっています。友人たちも「面白い仕事はもう地方に移ってる」と皆、言いますね。巨大なプロジェクトに飲み込まれて、受注者側だけでなく発注者側もJVだったりする。かたや狭小住宅が多く、辰さんに頼めるような仕事がある方が珍しい。でも何か地域で学んだことを東京で活かせないかなと思っています。東京だってしょせん地域の塊なわけですから、地域性は対立するものではないし、東京を経由して金沢にUJIターンで戻ってきた建築の仲間とも「我々で何か議論しなくてはならない」という話を最近よくするんです。
―金沢では、「金沢R不動産」という事業も展開されています。これはあの「東京R不動産」との連携なのですか。
小津:そうですね、R不動産は事業者としては別ですが、東京と全く同じ仕組みを使ってます。「東京R 不動産」ができてから3年後に初めて僕が地方版を金沢で立ち上げました。「東京R不動産」の馬場さんとは知り合いなので、「東京の次に大阪、じゃつまんないでしょ。中核都市で、『R不動産』そのものの可能性があるところを選んでやってみたい」と。東京のように賃貸手数料だけではやっていけないですから、売買中心になりますね。
ほかの建築家のプロジェクトに必要な条件の土地を探してくるような地味な仕事もします。そうするうちに土地や建物など空間の活用方法や運営やまちづくりといった相談も受けるようになりました。最前線でゲリラ戦やってる感じです。その土地を残した結果、新しい事業を付けて変えるというのは楽しいですよ。何も古いものが好きというわけではありません。そういうことをやっているうちに、北陸界隈でどんどんつながりが生まれています。
不動産と建築は、「不動産がなければ、建築は建たないし、建築がなければ、その不動産の価値も決まらない」という相補的な関係です。考えてみれば、建築をやっている人間はなかなか不動産にコミットしていないし、不動産をやっている人間が建築にコミットするときは、常に経済的な話だけです。 今まで、建築家は土地や物件の選択にあまりコミットしていなくて、与えられた土地や建物を条件として受け入れてきた。そこに一歩踏み出すことで、建築の可能性も広がると思います。不動産そのものも、空間を作っている立場からいうと、まだまだ面白くできる可能性がある。不動産側にも建築をやっていた人間は多いのだから、土地区画など建築設計の領域として、単体でなくエリアを考える、軸足を動かすことでもっと自分の仕事が豊かになることに気が付いてほしい。
 自分はよく「多角経営者」と言われますが、建築を成立させるためにその周辺にも積極的に関わりをもっています。「空間を見つける仕事=不動産」の段階でも土地や建物を考えることをしたいし、また建てたものは使いっぱなしではなく、何でも実践して使いこなしていく場にしていきたいと感じているのです。物販店の運営もやっているんですが、それも「設計してリノベーションし続けていく」仕組みづくりです。自分が建築の仕事をした以上、建築がちゃんと活かされるために、やれることをやっていきたいのです。
「あまりお金のことを言うな」と言われるときもありますが、お金が回る仕組みを作らないと建築は残らない。建築みたいな複雑な事をまとめる仕事をしていると、例えば病院を設計するとなると、病院のことを一から勉強して設計にとりかかるわけですからね。僕らは毎回、いろんなことを解決したり、問題提起したり、しかもそれをたくさんの予測不可能な中で努力していくことが仕事なので、不動産でも何でもちゃんと学べばできない仕事はない。何かそこから一つ遠ざけて、まだ形作りに逃げている人が多いんじゃないかな。それを一歩超えてみたら何が見えるか、やってみたらと思います。
「なんで自分のところに仕事が来てるのか」と思うと、そういうことを考えているからだと思います。そこにチャンスがあるし、領域の広がる設計そのものに影響がある。そうでないと請負業から委託業へと転換していけない。
学生の時に独り言のように先生に言われました。「我々はモダニズムを信頼して突き進めばよかったが、君らの時代は大変だ。○○イズムという答えがない」当時はあまりピンと来なかったんですが、仕事の領域も多様な時代になり、一歩踏み出して自分で考え、リスクを負って実践する必要性がある時代になっている、と思いますね。
―金沢の若い人たちのメンターとしての役割も担っていらっしゃることと思います。本日はありがとうございました。

小津誠一 Seiichi Kozu

有限会社E.N.N.代表/株式会社嗜季代表
1966年石川県金沢市生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業
東京の設計事務所勤務を経て、1998年京都にてstudio KOZ.を設立し京都と東京を拠点に建築やインテリアの設計などを行う。
2003年金沢にて(有)E.N.N.を設立。廃墟ビルの再生と同時に飲食店a.k.a.を開業し、東京、金沢の二拠点活動を開始。
2007年(有)E.N.N.にて金沢R不動産をスタート。
現在は活動本拠地を金沢に移して、(有)E.N.N.にて建築・不動産事業を、(株)嗜季にて飲食店事業を行う。
有限会社 E.N.N.
〒920-0995/石川県金沢市新竪町3-61RENNbldg./tel:076-263-1363
E.N.N. TKO
〒151-0071 東京都渋谷区本町2-45-7RENN bldg./tel : 03-5358-2333
有限会社 E.N.N./建築設計チーム:studio KOZ./不動産チーム:金沢R不動産/移住マガジン:real local
http://www.enn.co.jp/ http://www.realkanazawaestate.jp/ https://reallocal.jp
嗜季・LUGU・a.k.a./http://www.shiki-inc.com/
八百萬本舗 /http://yaoyoroz-honpo.jp/