209-3 納谷新/納谷建築設計事務所

2017年9月1日 at 2:45 PM

リノベーションはさらに可能性が広がっています

今月は、「吉祥寺の家」を設計された、「納谷建築設計事務所」の納谷新氏にお話を伺います。5歳上の納谷学氏と、ご兄弟で設計事務所を立ち上げられたのが1993年。以来24年間、武蔵小杉の倉庫を改修した事務所でお仕事をされています。

―住宅をかなり設計されているのですね。都心はもちろん、ご出身の秋田だけでなく、全国にお客様がいらっしゃいます。
納谷:これまで建てた住宅は、180件くらい。毎回、僕らは、環境ということをとても重視しています。それは、「北国の秋田」といった自然環境だけでなく、隣の家も、美しくないもの、見たくないものも環境と考えています。クライアントが変るたびに、その条件を整理していき、形にする。言葉にするとわかりやすいけど、感覚的にやっているときもありますね。

―ご兄弟で設計事務所を開いている方は多くはないと思いますが、小さい頃から、お二人で建築を一緒にやろうと決められていたのですか?
納谷:いえいえ、たまたまです。兄が先に独立し、僕も他の事務所から独立する頃で、ちょうど一緒にやらないかと言われ、下に付くのは嫌だったので、兄の納谷学建築設計事務所の「学」をとって「納谷建築設計事務所」としてスタートしました。

―受賞数も数多いですね。
納谷:まっとうなことを追求していって、それが形になったということでしょうか。
ー事務所の特徴はどんなところにありますか?
納谷:「脳みそが2つあるんで」とよく言っています(笑)兄弟なので、枝葉がいろいろでも根っこのところが同じで、互いに冷静に批評し合えるところがいいかな。一緒に設計をするのではなく、それぞれが自分のプロジェクトをやって事前にプレゼンします。仕事が進むにつれ熱くなるときがありますよね。そんなときに冷静なもう一人の自分がいる、そんな感じですね。
―「井の頭の家」に引き続き、リビタさんとの戸建て住宅のリノベーションが今回実現しました。今、中古住宅が市場に余っていて、うまく回らないから空き家問題も増えていて、いよいよリノベーションに対する社会的ニーズが高まってきた感じですね。
納谷:本当にそうです。事務所のスタート時、リノベーションという言葉もまだ世間に根付いていなかった。でも、自分の家でリノベーションを発表して、多くのメディアで取り上げられました。一般誌の「AERA」まで来ましたね。

1999年、神奈川県茅ケ崎でつくった自邸「s-tube」は、2000年「あたたかな住空間コンペ リフォームの部最優秀賞」を受賞するなど、注目を集めた。軽量鉄骨造のプレハブ住宅(ナショナル住宅)に木造の箱(s-tube)で増築を行って生まれた細長い空間は、薪ストーブや洗練された家具、OSBの壁やルーバーなど、外観からは想像がつかない室内を作り出し、多くの雑誌に掲載された。

納谷:まだ、誰もやっていませんでしたから、それがあって、今も「リノベーションなら納谷」という感じで、その分野ではずっと途切れることなく仕事が来ています。当時、文章も書いたりしましたけど、今はもっとリノベーションの要請が増えて、それが、「住宅から住宅」だけでなく、「住宅から民泊(宿泊施設)」だったり、「住宅からカフェ」だったり、いろんな活用のされ方に変わってきています。人の暮らし方も様々で、リノベーションの可能性はいろいろと広がっていると思いますね。
環境の調査、リサーチも徹底しています。耐震性能も断熱性能もしっかりチェックしていくことは、最低限やっていかなくてはならないですね。

―集合住宅も手掛けられていますね。
納谷:基本的に賃貸の、デザイナーズ案件が多いのですが、僕等の設計した部屋はわりと空き室率が低いみたいですね。やはりリサーチをかけて、環境に適した必要なものを作るので、広さだけ稼ぐような作り方は、リノベーションでもしません。むしろ減築をしても豊かな空間を作れることを見せていきたいですね。

―本日は、ありがとうございました。

納谷 新(なや あらた)

1966年  秋田県生まれ
1991年  芝浦工業大学卒業
1991-1993年 山本理顕設計工場
1993年  納谷建築設計事務所設立
2005年~ 昭和女子大学非常勤講師
2008年~ 芝浦工業大学非常勤講師
2016年~ 早稲田大学、東海大学非常勤講師受賞歴(納谷建築設計事務所)(受賞多数のため直近の数件を抜粋)
2008年 第2回JIA東北住宅大賞2007大賞(湯沢の住宅)
2009年 第3回JIA東北住宅大賞2008優秀賞(八戸の住宅)
2011年 JIA日本建築大賞2011日本建築家協会優秀建築100選(門前仲町の住宅、鷹ノ巣の2世帯住宅)
2014年 JIA日本建築大賞2014日本建築家協会優秀建築100選(GILIGILI)
2015年 住まいの環境デザインアワード2015最優秀賞(360°)
2017年 こども環境学会賞デザイン奨励賞(昭和こども園)