56-3 建築家紹介07 金田勝徳/構造計画プラス・ワン

2004年11月4日 at 7:48 PM

「新しいことへの挑戦と安全性」

今月は、構造設計の先生に登場いただきます。2000年第10回松井源吾賞を受賞した金田勝徳氏です。弊社は「二軒家アパートメント」「二十騎町の集合住宅(20K)」などの施工をさせていただきました。
―構造のデザインを見せる設計が増えているようですね。
金田:確かにそうですね。構造設計者である我々もある意味緊張しています。(笑)
―1つの建物に異なった素材を用いる建物もよく見られます。
金田: 10年くらい前から「ハイブリッド構造」と呼ばれる、混合構造のものが積極的に作られるようになってきました。それには2つの方向があって、1つは構造種別を混合するもの、たとえば柱をRC造、梁をS造といったものです。そしてもう1つは構造システムそのものが混合しているもの、たとえばラーメン構造と壁式構造が混在しているものです。前者はゼネコンが経済性を考えて進めてきた混合構造が主流でした。例えばRC造、鉄骨造の組み合わせを行うときに仕口の部分、納まりをどうするか各ゼネコンが独自開発した技術ですね。一方、設計者が構造材ないしは構造システムの適材適所を意図して、構造種別にあまりとらわれずに、異なったものを組み合わせて混合させるものです。それまであまり見られなかった新しいシステムを形成する試みを積極的に行うようになり、材料の使い方も自由になってきています。
―そういう中で、構造設計の先生に要求されることは難しくなってきていると考えられませんか。
金田:一筋縄ではいかないと言えます。でもいろんなことを話し合いながら作っていくという風潮はいいことだと僕は思っています。昔は「まず意匠の設計があって、それから構造設計事務所に計算の依頼があって」という具合で、とてもコラボレーションといった雰囲気ではなかった。今は、構造の側から提案をしたり、建築家の主張の中で構造上の問題点はどこなのかなどと、構造の面からもきちんと説明したりしてそういう中でコラボレーションができている。建築家の方でも、構造設計者によって設計のやり方が違うので、「今回はこういう構造だから○○さん」というふうにデザインによって、コラボレーションする相手をかえています。
―金田さんは、旧ワークショップの3人の先生(木下道郎氏、北山恒氏、谷内田章夫氏)ともお付き合いが長いですよね。
金田:そうですね、3人それぞれとお付き合いがありますし、3人もいろいろな構造設計の方たちとプロジェクトごとに組む、そういう形ですね。私がお付き合いしているいずれの建築家の方々も我々にとっては気を抜けない、一緒にやっていて刺激的な方たちばかりです。
―構造設計も個性があるわけですね。仕事がバラエティに富んできて、構造設計を目指す若い人が増えているのではありませんか。
金田:うーん、それでもいろいろな大学の先生に聞いてみますと、やはりそれほど増えているわけではないようです。学生の理科離れ、数学離れの影響があるようです。「授業に構造力学、材料工学など力学とか工学という言葉がつくと、とたんに授業を受ける学生が減る。環境系、デザイン系という名前にしないと学生が来ない」という話も聞きます。
―でも言葉を変えて学生を集めても、離れていきますよね。
金田:結局、両極端なんです。かたや数学嫌いでそういうものには見向きもしない。反対にコンピュータ大好きだから、何でもコンピュータ中心で解析などには飛びつくナントカオタクと呼ばれるような若者。構造設計とは、本来そういうもいうものではないんですよ。現実に建物があるわけで、そういう意味でバランス感覚が大切ですね。
―計算など難しいでしょう、大変そうです。
金田:しかし、コンピュータができて、「解く」ということについては、飛躍的に作業が楽になりましたよ。我々がこの世界に入った頃はすべて手計算だったので、ずいぶん時間がかかったものです。その分どういう風に設計していくかということを考えることに時間を割ける。Try & Errorによる検討も容易になりました。それに今の若い人にも大きな期待を感じています。今、大学で構造計画の授業を持っているのですが、最初せいぜい20人くらい来ればいいだろうと踏んでいたら、50人来て、後半になってもまだ40人以上は出席していますね。
―学生側に伝わるものがあるかどうかですね。金田さん自身、自分がやってこれは面白かったという設計をあげるとすると、どういうものがあげられますか。
金田:そうですね、いろいろありますが、最近、辰さんで施工された北山恒さんとの「二十騎町の集合住宅」も面白かったですよ。「ヤジロベエ構造」で中央の柱で建物を支え、先端の鉄骨の柱でバランスを取っているものです。あの先端の細い柱が建築重量を支えているのではなく、地震動による揺れを防ぐ役目を果たしているのです(図参照)。北山さんと、この形をさらに発展させた構造の建物をシリーズで考えようとしています。構造設計も常に新しいことを考えなければ、何のためにやっているのか、ということですよね。
―阪神大震災以後、一般の方々も住宅を耐震構造にするなど関心が高まっています。実際のところ安全性の基準はどのような点で判断されているのでしょうか。
金田:分譲マンションでも免震構造にして、資産価値を持たせるところもありますね。普通のお客さんにわかりやすいのは震度で、「震度5で壁に少しクラックが入ります」などとお話することになりますが、構造設計は、地表面の加速度レベルの「ガル(cm/sec2)」で判断していますね。400ガルくらいなら、壁にはクラックが発生し、柱・梁が部分的に破損するくらい、この辺を基準に考えます。あまり非現実的な数値を前提にする必要はない、しかしどんなことがあっても倒壊させないというところですね。「構造設計は何か」と問われれば、新しいことへの挑戦と安全性が乖離しない―このことにいつも心をくだいていると言えます。そのためにも、自分たちの設計した建物の性能、性質をきちっとオーナー、施工者に伝えていく能力が求められていますね。
―ありがとうございました。
(取材は新潟県中越地震の前日10月22日に行われました。)
1944年          東京都生まれ
1968年          日本大学理工学部建築学科 卒業
1968~1986年 石本建築事務所勤務
1986~1988年 ティー・アイ・エス・エンドパートナーズ
1988年     構造計画プラス・ワン 設立
1993年    1993年度JSCA(日本建築構造技術者協会)賞受賞
2000年    松井源吾賞受賞
主要な作品
静岡スタジアム・エコパ(佐藤総合計画+斉藤公男研究室)
京都アクアリーナ(環境設計・團紀彦設計共同企業体)
東京大学先端科学技術研究センター(シーラカンスアンドアソシエイツ)
名古屋大学野依センター(飯田義彦建築工房)
北京建外SOHOプロジェクト(山本理顕設計工場、C+A、みかんぐみ)