61-3 建築家紹介12 大堀伸/ジェネラルデザイン一級建築士事務所

2005年2月5日 at 5:31 AM

「適解を求める仕事」

大堀 伸氏

 

今月は、ジェネラルデザインの大堀伸さんにご登場いただきます。弊社では、この3月にH邸ほか2件の個人住宅を竣工させていただきました。
現在、神宮前のマンションに住居を含めた3室を借りている大堀さんは、自分は仕事とプライベートは切り離せないタイプとおっしゃいます。1つは寝るところ、1つは打合せ兼私物のスペース、そして事務所と結果的に職住接近になってしまったそうです。ご自身でリフォームされたそのうちの一室でお話を伺いました。
―お客様は、クリエーターが多いのですか。
大堀:そうですね。ファッション、デザイン、音楽関係の方が多いです。共通の知り合い、過去の仕事を介してのご紹介が多いですね。仕事が掲載された雑誌をごらんになられたお客さんとだいたい半々です。
―武蔵野美術大学の建築学科の出身ですね。
大堀:そうです。卒業後、友人の勤めていた設計事務所に2年勤め、その後2年はぶらぶらしていました。旅行に行ったり、公園で本読んでいたり・・。
―どうやって食べていたのですか(笑)。
大堀:効率のいいバイトなんかで・・。それから武蔵野美術大学時代の友人鄭秀和と遠藤治郎と3人で「インテンショナリーズ」という設計事務所を設立し、住宅からショップのインテリアデザイン、ステージセットや照明、プロダクトデザインなどジャンルにとらわれず片っ端からやりました。3年を一つのタームと考えていたので、その後それぞれの道を歩んでいます。
鄭はそのまま「インテンショナリーズ」を引き継いで、空間のデザインのみに納まらず、家電などのプロダクトデザインまでその活躍ぶりはここでお話しするまでもないと思います、遠藤はオランダ留学後、スリランカへわたり、今は東京とタイを行き来し、住宅からバンコクのコンサートホールのステージデザインなど幅広くユニークな仕事の仕方をしています。僕は一番地味に古典的な設計事務所をやっているのでしょうね。みんなこの近くに事務所を持っていますよ。
―H邸やT邸などを拝見すると、大堀さんは、シンプル、ミニマルな設計が多いのでしょうか。
大堀:特に意識していませんし何をもってシンプルだったりミニマムというのかよくわかりません。そのプロジェクトにおいて必要と思われること、有効と思われること、それらの優先順位がぶれないように心がけているだけです。
―住宅については、どう考えていますか。
大堀:僕はあまり最初から、「住宅」だからこうあるべき、という考え方から始めたくないと考えています。毎回プロジェクトの最適解を模索し、クオリティの高い成果物をクライアントに投げ返すことだけを実践しています。それがたまたま住宅だったり、お店だったり、学校だったりということです。
個人住宅の仕事が多いですが、店舗のインテリアデザインも割とやっています。それと地方の美容専門学校の現場が今竣工直前です。一つのジャンルを専門にというよりバランスよく仕事をやりたい。事務所の業務内容的には効率悪いと思いますが、僕にはその方が精神衛生上いいんです。

―建築家を目指されたのは、いつごろですか。
大堀:祖父が大工で、毎日かんなをかけているような風景が身近にあって、ものを作る現場、建物と空間ができあがっていくプロセスが面白いと感じたのが始まりです。小学校に入る前から漠然と興味を持っていました。
設計という仕事を意識し始めたのは、高校生の頃、それでも将来自分で設計事務所を持ってなんていう具体的なヴィジョンなどは全然ありませんでした。周囲の状況や出来事に流されながら動いた結果、現在に至るという感じです。
今でも様々な関係者の話を聞きながら仕事を進め、次第にプロジェクトが進むべき方向に自然にまとまってゆくという感覚を持って仕事をしている気がします。最終的に出来上がったものは、クライアント、うちのスタッフ、設計協力事務所、そして施工会社その他大勢の関係者がある期間一つの、もしくはそれぞれの、目的に向かって精一杯動いた結果であり、自分もその中の一人でしかないと。
―今、やりたいのはどんなことですか?
大堀:これまで僕の中には評価してもらえる人にだけ評価してもらえたらいい、気の合うクライアントと気分よく仕事がすすめられたらそれでよいというような気持ちがありました。今はもう少し幅広い、いろんな立場の人がその空間に入り、使用し、感じ、意見を持ってもらえる建物の設計をしてみたい。そのためには自分がやっている仕事を世間にプレゼンすることがもう少し必要かなと感じています。
逆に伺いたいんですが、辰さんみたいにこういうニュースレター作って配っていらっしゃるゼネコンって少ないですよね。
―ありがとうございます。建物を建てる楽しみのようなものをお伝えできればと考えています。施工会社の現場監督は大変ですから、うちの仕事ぶりを毎回きちんとご紹介しておきたい気持ちもあります。
大堀:そうですね、監督によって建物の質はかなり左右されますよね。現場がぴりっと且ついい雰囲気である場合とそうできない人がいるし、お客さんに対しても話がきちんとできる方もいるけれど、そうでない場合もある。
―若い人は現場で最初は苦労するようですが、何年か経つと相当しっかりしてくる。学校で誰かに何か教えてもらわないとできない、なんて言っていられないようですよ。習うより慣れろですね。
大堀:僕らもそうでしたよ。ほとんど実務経験無しで友人だけで事務所を開いたときは、手探りの状態。身近な出来ることからやってみようかというスタートでした。設計実務だけでなく社会との接し方、小さいながらも会社のあり方とは、とよく3人で気合いを入れていました。
一人になってジェネラルデザインの最初の仕事は大阪の10坪程度の小さな洋服屋のインテリアデザインでした。その後は仕事も増えましたが、数億の建物の設計をいくつかやりながら、隣の机で小さな古本屋のインテリアデザインを平行してやったりしてきました。効率の良くない手探りのやり方は今になってもあまり変わらず、毎回プロジェクトごとに試行錯誤しているような毎日です。そしてプロジェクトにかける必要なエネルギーはその規模には全く関係がないと日々実感しています。
―今日はどうもありがとうございました。
大堀 伸
1967年 岐阜県生まれ
1990武蔵野美術大学建築学科卒業
1992武蔵野美術大学大学院修士課程修了
1995インテンショナリーズ共同設立
1999ジェネラルデザイン設立
主な仕事
S邸
N邸
富ヶ谷の住宅
ギャラリーロケット
cowbooks
gantan