66-3 建築家紹介17 菊池林太郎/プロパティデザインオフィス

2004年7月5日 at 11:13 AM

「不動産から新しいまちづくり」

 今月は、不動産プロデューサーの菊池さんにご登場いただきます。
菊池さんは、現在辰で施工中の練馬集合住宅PJの建設にあたってコンペを行い、不動産の立場から新しい街づくりへの提案を行なっています。2005年3月にオープンした青山本店にお邪魔してお話を伺いました。
―素敵なお店ですね。間接照明の下、本棚やお酒もあって不動産屋さんとは思えません。週末の夜には「Bar不動産」としてご利用いただいていると聞きました。(インテリアデザイン:高橋紀人/ジャモアソシエイツ)
菊池:物件のオーナーやクリエーターの方たちのコミュニケーションの場として提供しています。いろんな方たちのネットワークづくりに利用していただければ、と考えています。
―豊島区要町のお店も「探偵事務所」をイメージした、個性的なお店だそうですね。
菊池:お客様の情報を大切にするという姿勢をアピールして、大事な情報を入れる「引き出し」をファサードに表現した店です。(デザイン:橋本夕紀夫デザインスタジオ)。新しい不動産屋のあり方を示していきたいと考えて店舗のデザインにこだわりました。
―もともとはどういうお仕事をされてきたのですか。
菊池:学生時代はインダストリアルデザインと建築を学び、卒業後CIA(シー・ユー・チェン主宰)に入り、それから北山創造研究所、ストリームなどで建築プロデュースの仕事を担当していました。しかし、プロジェクトを管理して進めていっても、いろいろな制約が出てきて、結局いいものができない―もっと、不動産の仕込みの段階から関わることができたら、というもどかしさが出てきたんです。また建築設計は、「できれば終わり」ということにも、物足りなさを感じてきていました。
 そんなあるとき、菊池さんは不動産を回る機会があり、多くの不動産屋の顧客満足度の低さに驚く。大家や不動産屋の立場でしかモノを言わない、借り手の気持ちに配慮しないで「早く決めろ」と言わんばかりの不動産屋が多く、こんなことでは街はちっともよくならない、と考えた。
菊池:不動産の客付け、入居を経て、管理をしていく中でお客様とも2年3年とお付き合いして更新をしていただき、長く建築を見ていきたいと思ったんですね。いろいろな不動産物件を内見すると、建物として過剰な設計をしていたり、逆に機能を満たしていないものもあったり、たとえデザイナーズマンションとして最初は人気を博しても、値崩れして部屋が埋まらない状況も出てきている。古くなっていく建築に対して、価値が落ちないようにするには、ローコストにして、10年、20年その地域の相場に合わせた価格設定をして安定した入居率を確保するとともに、周辺にどう影響を及ぼすか、建設時に十分意識していかなくてはならないと思いました。
 
―そこで、不動産業に入っていったわけですね。
菊池:建築家自身は、作品をつくりたいが、長期的な収支計画を立てることは得意ではないでしょう。だから、顧客・地主と建築家を仲介する機能を自分は満たしていきたいと思いました。借り手の相談にも親身に乗っていきたいと考えています。
一方、10年以上建築プロデュースに携わって、北山孝雄さん(北山創造研究所所長)や浜野安宏さん(浜野総合研究所)のような先駆者が見せた「人」を中心にしたきちんと街づくりを考えた企画であれば、何年経ってからも街を活性化することになるとわかっていましたから、そういうプロデュースを不動産屋の立場からもやっていきたいと思っていました。
 
-今回の練馬集合住宅PJは、まさにその「街づくり」の部分で、菊池さんがプロデュースされたものです。
菊池:オーナーは練馬駅北側周辺の点在した土地を所有しており、古い木造の家が密集した狭い路地の多いこの地域に、今後どういう集合住宅を提供していけば街づくりに貢献していけるか、将来的な開発計画を依頼されました。3人の設計者にコンセプトに沿った案を出してもらい、最終的に若松均さんの設計に決まりました。
―どんなコンセプトですか?
菊池:「美しい集合住宅の完成により周辺の住環境の改善を目指すこと」、「デザイン性だけではない、地域とのつながりを考慮した集合住宅を建てること」、「感性の豊かな若い人が住まう場と彼らが集うのに適した場所を提供すること」などです。
―若松さんの案の採用理由はどんなところですか?
菊池:1階のピロティ部分が近隣に開かれ、新たな通路、コミュニティスペースとして利用可能なところですね。街は人と人とのつながりこそ大事です。練馬はこれまでこれといった個性が見られない、郊外の住宅街でした。僕は、ニューヨークのSOHOのように、アーティスト、クリエーターが集まる練馬独特のコミュニティを創出できれるようになればいいと期待しています。―今後の目標は?
菊池:今まで商業施設の企画開発や店舗のブランド開発に携わってきた経験を活かして、商業と住宅環境が融合した物件を開発していきたいですね。箱を作る不動産屋ではテナント個店の企画開発など、細部まで見ていくことは不可能ですが、弊社では店舗デザイン、アイディンティティ開発、商品計画、運営計画等のプロデュース業務を行うことができます。 小さな物件でも街の活性化に繋がっていく物件をプロデュースしていき、代官山ヒルサイドテラスのような魅力ある街並みを作るのを目標としていきたいと考えています。
―どうもありがとうございました。
 
 
 
菊池林太郎(きくちりんたろう)
1973年  東京都生まれ
インダストリアルデザイン、建築デザインを専門学校で学ぶ
シー・アイ・エー、北山創造研究所、ストリームで、建築プロデュース、店舗のプランニングなどを行なう
2002年:有限会社プロパティデザインオフィス(PDO)を設立。
豊島区要町店をオープン
2005年:青山本店オープン
宅地建物取引主任者、2級建築士
<主な仕事>
店舗プロデュース:渋谷ガーデンフロントアネックス、ほか。
不動産業務とともに、都市環境、商業施設、店舗、住居の開発、プランニング、設計、リーシングおよびブランド開発に携わる。