67-3 建築家紹介18 野口信彦/タカギプランニングオフィス

2004年8月5日 at 11:30 AM

「デザインと採算性」

 

―今月は、タカギプランニングオフィス設計室の野口信彦氏に登場いただきます。「大井町プロジェクト」の設計を担当されています。
―タカギプランニングオフィス(以下TPO)さんが設立されたのが1997年です。それ以前から代表の高木栄一さんが建築家と協働して「一歩進んだ」、なおかつ「採算性」のある集合住宅を手がけ、これまで市場を牽引してきました。現在管理している建物の数はいくつぐらいでしょうか。
野口:約80棟くらいですね。
―初期は、以前のワークショップの作品が並んでいますね。
野口:最初は3,4件でしたね。Radian(1990), Squares(1995), lattice(1997), TRINITE(1997)、 DUO(1997)など。
―野口さん自身はノグチデザイン開設時に、TPOの始めた設計コンペ「TPOレコメンデーション」1999年の受賞者となり(「puzle」)、その後「QUATTRO」、「GRETO」を設計されて、TPOの設計室開設時には、谷内田章夫/ワークショップと、「trevento」を共同設計されています。(GRETO,treventoは辰の施工)
 <TPOの物件はあまり作りこまずシンプルで入居者の生活スタイルの自由度が高いデザインが基本です。またビニールクロスなど壁紙を使わない、コンクリート打ち放し仕上げやシナベニヤのクリア塗装など、メンテナンスフリーの内装で、建て主に対し費用負担の軽減を図っています。>
―そもそも野口さんが建築家をめざしたのはいつ頃ですか?
野口:まず幼少期、実家を建てるために工務店の設計の方が家に出入りしていたことがあって、建物が建っていくもの作りの場面を見ることが楽しかった思い出があります。
実際に建築を意識し出したのは、高校で志望大学を決めるときですね。幼少期の思い出もあり、建築科を志望して武蔵工大に入りました。1,2年は教養の授業が多く、製図の授業がつまらなかったので遊んでばかりいましたけどね(笑)。
3年の後半になって、新居千秋先生という情熱を持った先生に出会って、それからですね、設計を面白く感じ始めたのは―。
それで卒業後、ワークショップ(北山恒、谷内田章夫、木下道郎各氏の共同事務所)に入りました。初めての新卒でしたね。
―その頃は、どんどんワークショップのお仕事が増えていった頃ですね。
野口:僕が内定をもらった10月から入社する4月までの間に、4人は増えていました。
―どういう仕事の進め方でしたか。
野口:担当者が用意した図面をたたき台にして、3人の所長達と喧々諤々でやりあう(笑)。
―厳しそうですね。鍛えられたでしょうね。
野口:4年半いた後、仕事を少しお休みして、それから大手デベロッパーの分譲マンションの設計を主に行なう設計事務所に3~4年勤めました。
土地の仕入れに関する、いわゆるボリュームチェックなどもしていたので、それは数字的には厳しかったですよ。デベロッパーの仕様書というのもあり、よほどの理由でもない限り、仕様書から逸脱することは出来ないので苦労がありました。そういう意味では賃貸の集合住宅の設計は分譲に比べて自由度は高いですね。また分譲は当然ながらお客さんも厳しいです。だから、最近はまだ融通が利いて、デザイン性がよくなってきたようなことが言われていますが、デベロッパーの仕事は基本的には厳しいです。ある意味当たり前のことなのですが、住宅(商品と呼ぶ場合もありますが)の機能、性能、耐久性などを侵す可能性があるデザインは出来ない。別の見方をすればつまらなくなりますね。
―その設計事務所から独立されてからは?
野口:ノグチデザイン室として、1995年から2001年まで活動しました。その後バリエーションのある仕事ができるとTPOに入りました。ノグチデザイン室の頃もTPOの仕事をしていましたが、内部の人間として設計していると、賃貸集合住宅の場合などは、竣工後のオーナーや入居者の声が生で聞こえてくるので、張り合いがあります。

―現在設計部は何人ですか?
野口:3人ですね。あとのスタッフもいれると全員で17人。
―今後、なさっていきたいお仕事にはどんなものがありますか。
野口:今手がけているのが、<個人住宅><オーナー宅+賃貸集合住宅><テナントビル><事務所ビル>の4つなんですが、今まで単独でやったことがないのが個人住宅で、それが楽しみですね。―どんな物件ですか。
野口:個人住宅は敷地面図約300坪と都内ではとても恵まれた広さの計画です。賃貸集合住宅は、自己使用部分の割合が多く、容積的にもかなり余裕のある計画です。―広いですね。今後、都心部では住宅があまってくると言われていますが、その中でいい中古物件があれば手に入れたいと考える人も少なくないでしょう。ほんとにデザイン性もあっていいものが市場にどんどん出てくればいいですね。TPOさんではそういうものをまとめて扱うということはなさらないんですか?野口:今の中古物件市場でも、ほんとにオーナーにこだわりがあって自信があれば、相応の値段で市場に出してくるでしょう。それに買う方の目が肥えてきているし、上物である建物はただ壊すべきものという、昔のような考え方も上物にそれなりの魅力があれば少なくなるかもしれません。現在進行中のものはほかに、以前手がけた電鉄会社の集合住宅を計画中です。最初のプレゼンテーションをしてから3年経ってますね。先ほど述べた個人住宅の方は桜台に来春着工予定ですが、人形町のテナントビルの方は、建て主さんと最初にお会いしたのはもうかれこれ10年前ですね。

―仕込みにも相当時間がかかるものですね。今日はどうもありがとうございました。

 

 

野口信彦

1963年   東京都生まれ
1986年  武蔵工業大学建築学科卒
1986年  ㈱ワークショップ
1995年 一級建築士事務所 ノグチデザイン室設立
2002年 タカギプランニングオフィス設計室 設立と同時に入社
主な作品
puzzle、QUATTRO、GRETO、trevento