78-3 建築家紹介27 阿部泰道/a-scope

2005年7月10日 at 8:28 PM

2人でつくる新たな実績

 

今月は、「玉川田園調布の家」の設計者、阿部泰道さんにお話を伺いました。阿部さんは、芦屋真人さんと共同で「a-scope」という設計事務所を主宰しています。
―建築家を目指したのはいつごろからですか
阿部:小さい時から絵を描くのは好きだったので、工業デザインとかそういう仕事をしたい思いはありました。ところが国語は得意なのに、数学はビリから2番目というくらい苦手。高校の理系クラスでは苦労しました。
―現実には、建築設計の仕事は、国語の能力、コミュニケーション能力を随分と必要とされるようです。
阿部:本当にそうです。おかげで一浪して、東京理科大建築科に進みました。校舎は千葉の野田にあり、田舎だったので集中して勉強できました。学生時代には設計の課題が前期に2題、後期に3題ありましたが、その合間にいろいろとコンペに応募していました。3年生の時にOZONEのデザインコンペ「大切な人に贈る小さな家」で入賞しました。ビルの隙間の地下にある小さい部屋、将来の子供のための小さな家です。僕らが小さいときに路地裏で遊んだような、都市の余白をイメージしました。4年生になってシーラカンスの小嶋一浩先生の研究室に入りました。卒業設計はホスピス+商業施設。社会に出ることがわかっていたので現実的な提案を行い、一次審査では良い評価を頂いたのですが、プレゼンテーションで学生らしくないと言われたりしましてね。卒業後は作品をポートフォリオにまとめたりして、1ヶ月は今でいうニート状態でした。
―厳しいですね。
阿部:それが近所に黒川紀章建築都市設計事務所の元秘書の方がいて、募集があると話を持ってきてくれたので面接に行ったところ、気に入られて採用されました。当時は、手作業からCADによる設計へどんどん移行しつつある時期で、ちょうど自分のような若い即戦力になる人間が求められていたと思いますね。大阪府庁舎プロジェクトのスタッフとして配属されたんですが、すぐにやってきた黒川先生にCADの図面を描く場所に連れていかれ、国内外の美術館や公的な施設などのコンペチームのスタッフとして仕事をするようになりました。
―実際に建設される建物の設計にかかわりたいという思いはあったんですか。
阿部:常にそれがあったので異動願いを出すのですが、すぐにコンペのチームに戻されてしまいましてね(笑)。半ばあきらめていて、4年経ったところで2001年に退社しました。
 それから自分より前に独立していた先輩の芦屋と設計事務所を立ち上げ、彼の地元の静岡を基点に仕事を始めました。はじめは浜松の歯科医院併用住宅で建築面積400㎡、総工費1億2000万円くらいの建物でしたが、設計料は結構叩かれたと記憶しています。
でも「2人でやれば、倍の仕事が出来る」と、それ以後、とにかく実績を重視してやってきました。そのうちどんどん仕事が来るようになりましたね。芦屋の営業力がものを言っていると思います。うちはホームページもないし、わりと土着的な営業をしているかもしれません。
―今回の「玉川田園調布の家」は、阿部さんの仕事ですね。
阿部:自分が以前、専門学校で夜間の社会人向けコースでCADを教えるクラスを持っていたのですが、その関係で建築主の会社に紹介された物件です。担当課長が設計に対して理解のある方で、基本のコンセプトだけで細かいことはおっしゃらなかったですね。
―今後はどういうご予定がありますか。
阿部:この後、静岡で老人ホーム(敷地面積約4000㎡)の設計が予定されています。三島ではオフィス(敷地面積約1200㎡鉄骨造)の計画もあります。コンピュータソフトやシステム開発を行う会社の研究所で、何とか年内に設計を終え、着工にこぎつけたいと考えています。
それから8月23日から26日まで、東京ビッグサイトで行われるグッドデザイン賞2006ノミネート作品プレゼンテーションに我々の作品が出ています。「Pack(s)パックス」という鉄骨造のユニットの建物ですが、住宅、SOHO、店舗に応用できる建築です。
―それはぜひ、拝見したいですね。
阿部:設計事務所として、いろいろなところで機会を得ること、実績を積むことは大事だと考えています。芦屋と2人で組んでいるメリットは、1人でやるより規模の大きいものができること、客観的に見てくれる人間がいること、いざというときに1人ではない心強さですね。もちろんスケジュールやプロジェクトの内容によって担当する物件は振り分け、それぞれ責任を持ってやっていますし、図面を描くのは基本的には1人です。でも2人でやっていて良かったという場面がありますね。
 実は今回の仕事も、最初の基本設計は自分がやったのですが、途中で体調をくずして入院してしまったんです。その間、芦屋が代わりに仕事をこなしてくれて最後は僕が収めたのです。
―大事にならず本当に良かったですね。今後ともご活躍を期待しています。
本日はありがとうございました。
芦屋真人(あしやまさと)
1970年       静岡県静岡市生まれ
1992年        日本大学生産工学部建築工学科卒業
1992~99年     (株)黒川紀章建築都市設計事務所
2001年       Architectural Association School of Architecture (London)
大学院修士課程終了2002年
2002 年    一級建築士事務所a-scope共同設立阿部泰道(あべやすみち)
1973年       埼玉県浦和市生まれ
1997年       東京理科大学理工学部建築学科卒業
1996年 OZONE主催 リビングデザイン賞 奨励賞受賞
1997~2001年  (株)黒川紀章建築都市設計事務所
2002 年    一級建築士事務所a-scope共同設立
2001~2005年   青山コミュニティーカレッジ非常勤講師