トップ4項目でご紹介しています。全ての記事をご覧になりたい方はバックナンバーのPDFをご参照ください。

87-2  Raffine すみだ

外壁タイルとエントランスの色使いが落ち着いた雰囲気をかもし出す、高級マンション

 

最寄り駅は、本所吾妻橋、押上、業平橋と利便性のよいロケーションである。業平タワーの建設も決定し、町は活気を得ているようだ。
構成は、1階エントランス、2~5階が賃貸、6~7階が建て主の自宅である。
外壁は、タイル貼りで正面の柱型を黒色タイル貼りとし、1 階エントランスも白、黒色の石を使用している。
全体を白と黒のモノトーンでまとめることで、調和の取れた、高級感のある建物となっている。
隅田川の花火が屋上から眺望できる、人気のマンションとなることだろう。

構造:RC造
規模:地上7階
設計:大場大司/司建築設計
竣工:2007年4月
撮影:スタジオミュー

72-1 blocco(王子集合住宅)

多様性を持つ、楽しい集合住宅

 

 

2004 TPOレコメの受賞作品。コンペの時は「スローライフ」がテーマで、今までの集合住宅の住まい方とは質的に違うものを出したかった。エステティック(美学的)なもの、すごくとがったものを押し付けないよう、「十字プラン」、「分棟形式」、「内部の庭」などが生活の基本水準に直接フィードバックするよう、心がけた。
人の暮らし方にもいろいろある。今回は「十字プラン」というモデルはあるが、それをスタンプ式に押して同じような住戸が連なるのでなく、いくつかのバリエーションが展開されているものがいい、と考えた。それら個性的な住戸が一つの集合住宅に展開している方がいい、と感じた。
 40㎡、1LDKという広さは、とりあえずベッドルームは確保できる。しかしそれほど広いというわけではない。寝室で休んでいないときは、その寝室スペースも活動スペースに参加させシェアする、曖昧にベターと広がっているものを作りたかった。但し、単なるワンルームではなく、いろんなアーティキュレーション(分節)というか、キャラクターの違いを出している。場所ごとに条件が違うので、窓の切り取り方、その窓から見える景色、天井の高さなど含めていろんなキャラクターが点在しているようなものを作りたいという思いが基本にあった。
 賃貸で、25~29戸というと、全部の部屋が魅力的でなければならない。個性的にした分、ある部屋は「ごめんなさい」という犠牲は避けたかった。
壁は「ひる石(昔、公団などでよく見られた。)の左官仕上げ」だが、特に手仕事にこだわる趣味は持っていない。経済的な理由からだが、コンクリート打ち放しの壁にすると一つは音の問題がある。左官仕上げは吸音効果があるし、クロスやベニヤを貼るよりは多少汚れがあってもそれが風合いになる。白い壁に見えるが微妙に色を入れて、真っ白ではない。
同様に、型枠の仕上げも安い。ラワンベニヤの型枠の打ち放しは、化粧型枠の打ち放しより、マッシブである。自分は建築を基本的には塊で考えるので、それが肌に合う。やっていて自分の中ではきれいなものよりしっくりいく。
 各住戸の玄関に設けられた「土間」は住戸により異なるなんともいえない広さ。そこにも窓があったり、電気のコンセントがあったり、照明があったりして、靴で生活する、アクティビティの可能性を感じさせるかもしれない。全部がモルタルではなく、ある種の分節があるのだけど、ルーズなところがうまくいっていると思う。
また、生活しているうちに、どうしても普通の賃貸ではこぼれてくるものがある。室内で引き受けられない、ほんとは居住空間では見ないで済ませたいものも、今の日本の集合住宅では室内に入れざるを得ない状況がある。土間やテラスなどのバッファゾーンが、これらのものを引き受けてくれる。
 3年前にイタリアに暮らして感じたことだが、集合住宅の住まい方が成熟している。その経験をある程度参考にして、日本でも、それほどスタイリッシュでなくても、そのような生活を楽しめるという水準の集合住宅が増えていけばいいと思う。
1階の表通りに面した部分には、外部から直接アクセスできるコートタイプの住居もある。SOHOとして利用していただければと考えている。
(長田直之氏談)
 所在地:北区
構造:RC造、地上5階
用途:共同住宅
設計:長田直之/ICU+
竣工:2006年1月
撮影:Kazuo Fukunaga

70-3 建築家紹介21 グエナエル・ニコラ/キュリオシティ

「プライベート」

グエナエル・ニコラ氏

―今月は、C-ONEのオーナーであり、デザイナーでもある、グエナエル・ニコラさんにお話を伺います。
―建物のコンセプトをまずお聞かせください。
ニコラ:(共同設計者の)内海さんとは「どこまで建物の存在感をなくすことができるのか」を一番話し合いましたし、大事にしたかったですね。素材やプロセス、スケールが極力表に出ないようにしたかった。そういうものがわからないほうが面白いでしょう。普通の建築はいろんな要素、例えば、水道、電気などのエレメントが出てくる。私はその情報をなくしたかった。
そもそも最初のデザインで、細部までデザインし、「いいですね、これで行きましょう」と決まったわけですが、その後、いろいろな理由で建築では変更が出てくる。私は長年プロダクトデザインの仕事をやっていますが、プロダクトでは、そんなことはありえない。最初決めたイメージに近づくまでやり通す。モノの機能をきちんと決めてからやっていくんです。だからすごく辛かった。
―なぜですか。
ニコラ:最初は私も建築のことわからないでしょう。途中から「これは必要」「あれもできない」といろんな変更を求められましたが、でもそれは、私の中ではあり得ないこと。「今までそうだったから」とか「普通はこうだから」と、建築はその「当たり前」ということが多すぎるのではないだろうか。でも僕はそれをストップさせたかった。プロセスを僕自身、勉強したかったしね。
―現場でいろいろ変更することで、最初のものからどんどんかけ離れていく。そういう、デザインに対する妥協はいやだったということですね。
ニコラ:3年前に土地を買ったとき、既に作りたいシナリオがあった。どういう敷地かは基本的に関係ないのです。「こういう生活をしたい」という前提があるのです。
ですから、2年前に作った模型からはほとんど変更がない。まず、3Dで空間を作りたいと思いました。普通、建物は扉を開けると、次のビュー(視界)が見えるでしょう。階段もそう。でもこれは、斜めの回廊で建物を上下し、上からでも下の階が見える、シームレス(継ぎ目なし)なものを作りたかったのです。徐々に景色が変わるような、そういう建物です。
―具体的に言うと、どういう点がシームレスですか。
ニコラ:第1に形。今、言ったように建物内を移動するには、回廊を使って、次第に景色が変わっていくスパイラルな構成になっています。シフトしていくのではないのです。
第2に素材。外のファサードは線が見えないでしょう。全部シームレスで鉄板を溶接したものです。壁も外と中が同じテクスチャーになるよう、オリジナルのメラミン素材を作り、統一しました。
第3に、インテリアと建築。建物の形とインテリアやプロダクト、例えば水栓設備がリンクしているのです。オリジナルデザインの水栓は、水道に見えないでしょう。それから、ソファの寸法とインテリアの寸法を、全部合わせて完成させています。今までの建築は、分けているでしょう。「スケルトンにしました、オープンにしました、はいどうぞ」という感じ。そうではなくて、最初から全部考えてデザインしています。
―それは、デザイナーとしてのニコラさんの真骨頂というか、ある意味、完結した建物を作ろうとなさったということですね。
ニコラ:そう。僕は一つのプロジェクトで、全てをデザインするのが好きです。インテリアデザインをするときも、看板のロゴやショッピングバッグまで、全部決めたい。そうすることで、全体のストーリーの中に強弱を付けられるから。ばらばらにデザインすると全部が頑張りすぎてしまうのです。
 昔から建築をやってきた人の仕事は、とても卓越しています。プロフェッショナルです。では、これから建築を始める僕は、どういうアプローチをするか、自分なりに考えるわけです。言葉で説明をするにはむずかしい。ではポイントは何か。それはプロダクトと同じようなプロセスを取るということ。
建築ではなく、「どういう生活がしたいか」というところから、コンセプトが生まれる。だから極端に言えば、建物の形はどうでもいい。もちろんコンセプトによる必然的な形状というのはあるけれど、コンセプトのある箱を作って、中は住み手の自由ということには僕は興味がないんです。
―人間の動線そのもの、生活の方法を大事にする建築家はいらっしゃいますが・・・。
ニコラ:そのことは、ディスカッションしたね。でも、デザインのプロセスが、建築家とプロダクトデザイナーは根本的に違うの。
建築家はサービスをする。ユーザーが何を欲しいのか、コミュニケートして変えていくでしょ。プロダクトデザイナーは、基本的にそれはできない。だって不特定多数の皆が何をほしいか、なんてわからないじゃない。だから常に新しいものを考え出さなければならない。プロダクトデザイナーは、皆が気づいていないことを考える。そういうプロセスを建築でやりたかった、ということです。
―いわゆる、プロトタイプを消費者全体に向けて作ろうというのではないのですね。
ニコラ:全然違う。自分たちがどういう生活をしたいか、何を見たいかを考えてデザインしたもの。別の人たちのためには、また違ったデザインがふさわしいということもある。
―そこまでオリジナリティにこだわるには、どんな理由がありますか?
ニコラ:僕はずっとコマーシャルの仕事をしてきました。コマーシャルはパブリックスペース。プライベートとは、エクスペリエンス(経験)が違うでしょう。モノを使うときは、一人一人皆違う。そのモーメント(瞬間)のデザインが大事なんです。そのデザインこそが僕のテイストなんですよ。
―本日はどうもありがとうございました。

 

1966年 フランス生まれ
パリのESAGでインテリアデザイン学士取得1991年 ロンドンのRCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)でインダストリアルデザイン修士取得。来日
1998年  キュリオシティ設立。
現在、インダストリアルからインテリア、家具、建築まで幅広く活躍している。
主な作品
第39回東京モーターショー「日産ブース」、ソニーショールーム、
タグ・ホイヤーショップ、 プリーツプリーズ(イッセイ・ミヤケ )NY,
Paris,青山店、カッシーナ・イクスシー「ブーメラン」シリーズ、
「au」のロゴデザインなど。

78-3 建築家紹介27 阿部泰道/a-scope

2人でつくる新たな実績

 

今月は、「玉川田園調布の家」の設計者、阿部泰道さんにお話を伺いました。阿部さんは、芦屋真人さんと共同で「a-scope」という設計事務所を主宰しています。
―建築家を目指したのはいつごろからですか
阿部:小さい時から絵を描くのは好きだったので、工業デザインとかそういう仕事をしたい思いはありました。ところが国語は得意なのに、数学はビリから2番目というくらい苦手。高校の理系クラスでは苦労しました。
―現実には、建築設計の仕事は、国語の能力、コミュニケーション能力を随分と必要とされるようです。
阿部:本当にそうです。おかげで一浪して、東京理科大建築科に進みました。校舎は千葉の野田にあり、田舎だったので集中して勉強できました。学生時代には設計の課題が前期に2題、後期に3題ありましたが、その合間にいろいろとコンペに応募していました。3年生の時にOZONEのデザインコンペ「大切な人に贈る小さな家」で入賞しました。ビルの隙間の地下にある小さい部屋、将来の子供のための小さな家です。僕らが小さいときに路地裏で遊んだような、都市の余白をイメージしました。4年生になってシーラカンスの小嶋一浩先生の研究室に入りました。卒業設計はホスピス+商業施設。社会に出ることがわかっていたので現実的な提案を行い、一次審査では良い評価を頂いたのですが、プレゼンテーションで学生らしくないと言われたりしましてね。卒業後は作品をポートフォリオにまとめたりして、1ヶ月は今でいうニート状態でした。
―厳しいですね。
阿部:それが近所に黒川紀章建築都市設計事務所の元秘書の方がいて、募集があると話を持ってきてくれたので面接に行ったところ、気に入られて採用されました。当時は、手作業からCADによる設計へどんどん移行しつつある時期で、ちょうど自分のような若い即戦力になる人間が求められていたと思いますね。大阪府庁舎プロジェクトのスタッフとして配属されたんですが、すぐにやってきた黒川先生にCADの図面を描く場所に連れていかれ、国内外の美術館や公的な施設などのコンペチームのスタッフとして仕事をするようになりました。
―実際に建設される建物の設計にかかわりたいという思いはあったんですか。
阿部:常にそれがあったので異動願いを出すのですが、すぐにコンペのチームに戻されてしまいましてね(笑)。半ばあきらめていて、4年経ったところで2001年に退社しました。
 それから自分より前に独立していた先輩の芦屋と設計事務所を立ち上げ、彼の地元の静岡を基点に仕事を始めました。はじめは浜松の歯科医院併用住宅で建築面積400㎡、総工費1億2000万円くらいの建物でしたが、設計料は結構叩かれたと記憶しています。
でも「2人でやれば、倍の仕事が出来る」と、それ以後、とにかく実績を重視してやってきました。そのうちどんどん仕事が来るようになりましたね。芦屋の営業力がものを言っていると思います。うちはホームページもないし、わりと土着的な営業をしているかもしれません。
―今回の「玉川田園調布の家」は、阿部さんの仕事ですね。
阿部:自分が以前、専門学校で夜間の社会人向けコースでCADを教えるクラスを持っていたのですが、その関係で建築主の会社に紹介された物件です。担当課長が設計に対して理解のある方で、基本のコンセプトだけで細かいことはおっしゃらなかったですね。
―今後はどういうご予定がありますか。
阿部:この後、静岡で老人ホーム(敷地面積約4000㎡)の設計が予定されています。三島ではオフィス(敷地面積約1200㎡鉄骨造)の計画もあります。コンピュータソフトやシステム開発を行う会社の研究所で、何とか年内に設計を終え、着工にこぎつけたいと考えています。
それから8月23日から26日まで、東京ビッグサイトで行われるグッドデザイン賞2006ノミネート作品プレゼンテーションに我々の作品が出ています。「Pack(s)パックス」という鉄骨造のユニットの建物ですが、住宅、SOHO、店舗に応用できる建築です。
―それはぜひ、拝見したいですね。
阿部:設計事務所として、いろいろなところで機会を得ること、実績を積むことは大事だと考えています。芦屋と2人で組んでいるメリットは、1人でやるより規模の大きいものができること、客観的に見てくれる人間がいること、いざというときに1人ではない心強さですね。もちろんスケジュールやプロジェクトの内容によって担当する物件は振り分け、それぞれ責任を持ってやっていますし、図面を描くのは基本的には1人です。でも2人でやっていて良かったという場面がありますね。
 実は今回の仕事も、最初の基本設計は自分がやったのですが、途中で体調をくずして入院してしまったんです。その間、芦屋が代わりに仕事をこなしてくれて最後は僕が収めたのです。
―大事にならず本当に良かったですね。今後ともご活躍を期待しています。
本日はありがとうございました。
芦屋真人(あしやまさと)
1970年       静岡県静岡市生まれ
1992年        日本大学生産工学部建築工学科卒業
1992~99年     (株)黒川紀章建築都市設計事務所
2001年       Architectural Association School of Architecture (London)
大学院修士課程終了2002年
2002 年    一級建築士事務所a-scope共同設立阿部泰道(あべやすみち)
1973年       埼玉県浦和市生まれ
1997年       東京理科大学理工学部建築学科卒業
1996年 OZONE主催 リビングデザイン賞 奨励賞受賞
1997~2001年  (株)黒川紀章建築都市設計事務所
2002 年    一級建築士事務所a-scope共同設立
2001~2005年   青山コミュニティーカレッジ非常勤講師