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216-1 保育施設

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「尾山台みどり保育園」  撮影:村田和聡/フォトスペース・パッション

写真は、先日竣工した世田谷区尾山台に建つ認可保育園「尾山台みどり保育園」です。2016年の事業者募集に応募・選定されて、この春開園を迎えることになりました。事業者の社会福祉法人神戸保育会の岡崎真子(なおこ)園長、設計の石川恭温氏にお話を伺いました。

岡崎真子園長

岡崎真子園長

―このたび、神戸の事業者様として開設されたのは、どのようなきかっけからですか。
岡崎:保育施設は特に東京で不足していると聞き、神戸で100年以上保育事業に携わっている実績がある私どもがお役に立てる場面があると思って、応募させていただいた次第です。

 

―100年ですか。
岡崎:前身は、兵庫県の外郭団体の事業で、出征軍人の方たちの残されたご家族を預かったことから始まったと聞いています。その後、次の戦争の時に県の財政が厳しくなり、民間に移行していったそうです。

 

―園舎を建てるにあたって、ご希望されたことはどんな点ですか。
岡崎:木を使った、温かみのある空間ですね。それから、子どもたちが動き回れる十分な広さの園庭を作ってほしかったですね。

  
―保育の面で重要視されていることはありますか。
岡崎:子どもたち一人ひとりに担当の保育士が付いています。家庭の中で暮らしているのと同じように、継続的に子どもを見ることが大事です。その方が早く信頼関係を作れるし、ちょっとした体調の変化にも気が付きやすいです。特に0-1歳児のお部屋は、0歳でも1歳でも使えるようなお部屋にしてほしいという点をお願いしました。日々成長する子どもたちは、少し部屋の環境が変わるだけでだいぶストレスを感じるものです。2歳では生活面での自立ができるよう、しっかりと躾をし、3歳からは身体をよく動かし、運動や料理など楽しいことを友達とどんどんできるようにします。だから、子どもたちが十分に動き回ることができる広い園庭を作ってほしかったですね。

石川:初めてお会いしたのは、2016年7月だったのですが、現地をご覧になっての第一声が「せまーい」だったですね。限られた敷地で1階に広い園庭を設けられないということで、1階から2階、屋上を斜面をつないで、全体を1つの園庭とする今の形を提案しました。

岡崎:園庭については何度説明してもらってもわからなくて、模型を作ってくださってから、やっとイメージが掴めました。

保育園を運営する側としては、建物だけでなく、働く人たちのレベルアップがないと、やはり親御さんが子どもを預けてくださるのは難しいと思います。神戸の保育方針を全職員に理解し、実践してもらいたいと考えています。職員の関わり方一つで子どもは変わります。子どもは本当はお母さんが育てるのが一番、でもそれができないから、私どもがお引き受けするわけです。どんな分野でもいえることと思いますが、大学を卒業しただけではまだ一人前ではありません。きちんと働ける人間を育てていく、その仕組み自体も今の保育園には求められているのだと思います。

―本日はどうもありがとうございました。

 

 

 

216-2 尾山台みどり保育園

町に開かれた保育園 ~緑と回遊性のある立体園庭~

 

 2階建て、80人定員の認可保育園。敷地は東急大井町線尾山台駅近くの町中、交差点に面する。面積的に地上レベルに広い園庭を取ることが難しかったため、1階から屋上までを園庭として緑の斜面で連続させ、そこに滑り台も参画させて回遊性をもたせた。子どもがループを描いて走り回ることのできる立体的な園庭である。
1階から2階への斜面には果樹を中心に樹木を配した。子どもたちが果実を取り青虫を見つける自然の遊び場であると同時に、町に緑の景を提供している。園庭廻りの外壁はスサ入りの茶色い土壁仕上とし、汚れてもいいという風情にした。
内部は1階に0、1歳児室、2階に2歳児室、3-5歳児室、一時保育室を設けている。
保育室はオーク材を中心とした仕上とした。ホールや階段は木と土壁仕上とし、柔らかい雰囲気と外部との連続性を創出した。西・北側の隣地側は最小限の窓とすることで相互のプライバシーに配慮しているが、北側は現在は住居ではないため、暫くは電車の見える窓として子どもたちに楽しんでもらいたい。屋上は斜線制限までRC壁を立ち上げ、遮音性能を持たせつつ、保育室のハイサイドライトを設けている。部屋全体が光に包まれた温かみのある保育室を意図したものである。
保育施設は、音や交通安全などの理由で迷惑施設と目されることも多くなってきている。園側も様々な要望に真摯に、あるいは過剰に応えることを考える。外部に対しては、侵入に対する安全性やプライバシー保護も考えなければならない。必然的に建物は外に閉ざし、内に向かうものとなっていく。果たして、方向性はそれだけだろうか。
この敷地は、初めて訪れた時から「開く」ことがある程度許容される条件が整っていると思われた。住民説明会でもその感じは覆らず、見守られている雰囲気も感じられた。
まだ開園していないが、やがて緑が整い、子どもたちが園庭を走り回り、屋上から町を眺める日が訪れる。町は子どもにとっての風景であり、子どもは町にとっての1つの風景となる。町の人たちに温かい眼差しをもって見守ってもらえるとすれば、それは子どもたちにかけがえのない安心感をもたらすはずである。心身共に健やかなこどもがこの場所を巣立っていくことを願っている。
(石川恭温/石川恭温アトリエ)

構造:RC造  規模:地上2階
用途:保育園
設計・監理:石川恭温/石川恭温アトリエ
担当:村田、尾内
竣工:2018年2月
撮影:村田和聡/フォトスペース・パッション

 

216-3 石川恭温/石川恭温アトリエ

周囲との関わりが建築をつくる

 

 今月は、「尾山台みどり保育園」の設計者、石川恭温氏にお話を伺います。

—九州大学大学院を修了され、坂倉建築研究所東京事務所に入られました。
石川:坂倉事務所は日本の近代建築を牽引した坂倉準三によって創られた事務所です。入所を考えていた頃はすでに3代目の時代で、東京と大阪に事務所がありましたが、作風で近代建築の流れを汲む東京の方がいいかな、と。約16年間勤めました。

 

—どんな建物を担当されましたか。
石川:坂倉建築研究所は、住宅から公共建物まで大小問わず「建築」として仕上げていく職人的な集団という印象がありました。
私も坂倉を卒業するまで、小規模な集合住宅から「東京国立近代美術館本館増改築」や「都立保健科学大学」(現首都大学東京健康福祉学部)の増築など規模の大きなものまで幅広く経験させてもらいました。
独立してからはマンションや住宅からスタートし、その後教会やショールームなども手掛けさせていただきました。規模は小さいですけど、密度の濃さは坂倉の頃と同じようにやりたいと思っています。
最近は、窓から何を見せられるか、どのような光が取り込めるかとか、周辺との関わりの中でどういう空間を作れるかを強く考えているような気がします。「近隣」を意識することが多いからですかね。

 

―保育園のお仕事もいくつかなさっていますね。
石川:最初の設計は、小手指の保育園です。きっかけは、ある日「保育園のコンペがありますが、参加しませんか?」という電話を頂いたことでした。
その時も敷地が狭く、園庭をどう作るかがテーマでした。いくつかの園庭をスキップさせながら屋上まで連続させる園庭を提案し、選定していただくことができました。設計の中で、どうせ繋ぐのであれば山にした方が楽しいのではと事業主さんとのやり取りの中で実施案が定まっていきました。
その後もいくつかの園を依頼されましたが、町の中で敷地が限られているようなケースでは、園庭を立体化する手法は、子どもたちの活動に広がりを与えられる有効な解の一つだと思います。

 

—保育施設の建設に対して、音の問題で反対する住民は多いですね。今回は、比較的スムーズにご理解を得られたと聞いています。
石川:今回の敷地は線路が近く車が比較的多い道路に面している場所だったので、音については割合寛容的に見て頂いたのではないでしょうか。
それぞれの敷地で施設に対する見方は変わります。戸建の多い静かな環境では保育園建設、特にその音は気にされやすくなりますので、説明会の重要性が増してきています。

 

—子どもの声が町から聞こえなくなる方が寂しいですね。セキュリティも考えなくてはならないし、建築だけで解決されない部分も多いと思いますが、子育てを地域で応援していける環境を整えるのが大人の役目だと思います。
石川:そうですね。子どもの声を聞こえなくすることは、技術的には可能であっても健全な保育園とは言えないでしょう。
「窓は少なく」「遮音壁を高さ何mまで」という要望が出ることもあります。園側もプライバシーを守るため、なるべく園児の顔が隣や道路から見えないようにと言います。そうやって閉じていくと、保育園、園児と周辺住民との距離はより離れていってしまいます。
今回の敷地では、「開く」ことを考えることができました。物理的にはプライバシーや音の問題を解決しながら、子どもの遊ぶ風景が外から見える施設になっています。どういう子供たちがどう遊んでいるかがわかれば、きっと町の人たちも温かく見守ってくれるのではないでしょうか。近隣との良好な関係は先生の働きやすさも生むはずですし、子どもたちが安心感をもって生活するための基盤だと思います。

 

—本日はどうもありがとうございました。

216-4 「法政大学卒業設計有志展2018」に協賛しました 

 2月、「法政大学卒業設計有志展2018」の開催に協賛させていただきました(2018年2月20日~28日 於:Gallery IHA)
都心で多くの建築家の方のお仕事を受注させていただいている施工会社として、建築を志す人たちの学びの場の更なる充実に、弊社も少しでもお手伝いができればと願うものです。
  建築学科としては初めての学外展示とのことで、オープニングパーティには社長森村、副社長岩本(法政大学OB)がお祝いに参上。22日の「ゲストクリティーク」では法政大学の小堀哲夫先生を始め、ゲスト建築家の、島田陽/tato、西田司/ondisign、今村水紀/miCo.、川辺直哉/NAOYA KAWABE ARCHITECTS、田井幹夫/architect cafe、の6名の先生方による公開講評が行われました。
まず、ポスターセッションとして一人2分、出展者全員が自分の作品のプレゼンテーションを各ゲストの先生に対して行います。その後4分間、その先生から質疑応答を受けます。つまり一人の学生は2分+4分=6分を使って、自分の作品を6回、アピールするわけです。各先生方は20作品分、巡回しながらその評価を行います。その後、選抜された7作品のプレゼンテーションと公開審査が行われ、そして全体でディスカッションして入賞作品を決定、という運びになります。
会場の「gallery IHA」は、長谷川逸子・建築計画工房のオフィスとして使ってきた「BYハウス」が、ギャラリーとしてリフォームされたもので、1,2階のスペースにたくさんの模型が所狭しと並べられていました。  このギャラリーは、2016年のオープン後、アートや建築の展覧会、春秋のレクチャーシリーズを実施し、2017年5月にNPO法人『建築とアートの道場』となりました。このような公開セッションは、まさに「道場」の名にふさわしい催しです。
ただ新しいものを創るのではなく、敷地の現状を読み解いた学生さんのフィールドワークはそれぞれに面白く、また先生も学生の意図するところを解釈し、問題点を指摘し、良さも見つけ出し、さらに今後につなげる視点を短い時間で伝える……、見ているだけで、タフな作業が繰り広げられました。
最後まで拝見せずに会場を後にしましたが、学生さんの最終日のツイッターの書き込みには、「得るものがあまりにも多く、来年以降も続けてこれを伝統にしていきたい」というコメントが掲載されていました。