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209-1 戸建てリノベーション

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 今月は、吉祥寺に完成した、リノベーション住宅のご紹介です。写真は2階のリビングダイニング。天井までの大きな壁一面に備えつけられた木製の棚が、温かみのある空間を作り出しています。
 総務省の調べによると、平成25年10月1日現在の日本の総住宅数は6063万戸、うち空き家は820万戸、空き家率は13.5%で過去最高となっています。5年前と比較して空き家は62.8万戸増加しましたが、増えた内訳をみると、一戸建の空き家が49.6万戸で79.0%を占めており、戸建の空き家の増加が著しいことが分かります。また、空き家の種類別割合でみると、二次的住宅、賃貸用住宅、売却用住宅の割合はいずれも減少傾向にあるのに対し、「その他」に分類される空き家の割合が増えています。相続にあたり、相続人がいなかったり、行方不明だったりして、居住者がいなくなる「その他空き家」が増えているのです。
腐朽破損なしで利用可能な戸建ての空き家は約103万戸。そのうち最寄駅から1km以内で、簡易な手入れで居住可能な物件は全国で48万戸といわれています。もったいない話ですね。何とかしたいものです。
 空き家が増えた理由はいくつかあります。
・雇用が都市部に集中し、地方の人口が減少
・高齢者が増加し、介護施設などへの入居で住み手が不在
・世帯数が減っているのに新築物件数が増えている
・更地にすると、住宅を建てているよりも固定資産税が4.2倍
・解体費用が高いのでそのままにしている
加えて、「故郷の親の家を住み手がいなくなったとはいえ、売却する気にならない」とか「中古住宅よりやっぱり新築が人気がある」など、日本人特有の気持ちの問題もあります。
政府は「空き家対策特別措置法」を制定して、「特定空き家」といわれる、倒壊の危険があり、近隣に迷惑を及ぼしている空き家の解体を法的に行えるようにし、また解体した場合は、所有者に費用を請求したり、固定資産税の特例排除などを行えるようにしました。この法律はすぐに全国で一斉に取り締まるというものではなく、むしろ市町村が空き家の調査に費用を充てられ、必要な情報、調査が行えるようになる利点があるのです。
それにしても、使わないで放置している住宅は、いつかは空き家になるわけで、所有者は空き家になる前に建物を有効活用する方法を考えなければなりません。売却・更地化などを受けとめる中古住宅市場も、これまで日本は欧米に比べて規模が小さかったのですが、活性化に向けて施策がねられています。市場が充実すれば、住み手がどんどん手を加えて、建物の資産価値を上げる欧米のように、個々の建物そのものの品質、性能が評価されるようになってくるでしょう。
今ある建物を長く使うために適切なメンテナンスを行い、現代の生活にあったデザインにリノベ―ションする、例えば、仕事ができるスペース、趣味を活かせるスペースを作るほか、人が集う「住み開き」を行うなど、さまざまな工夫が既存住宅の新たな価値を生み出します。
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209-2 吉祥寺の家(リノベーション) 

減築して生まれた吹き抜けで、個性的な空間を創出

建て主N様は、以前我々がつくった「井の頭の家」の再販募集で、2番目に手を挙げられた方である。リノベーション住宅のプロデュースを手掛ける「リビタ」とのコラボ企画だったが、公園が近い環境、デザインを気に入られたN様は、新たに家を購入、リビタを通して、僕らに改修設計を依頼くださった。
既存の建物は1階の採光が不十分だったので、第一にLDKを明るい2階に持ってくることにした。そして暗い1階に光を落とすため、2階和室の床を抜いて大きな吹き抜けを作り、すべての部屋の採光を満たした。仕上げ材にも工夫を凝らし、例えば、和室の床は手斧掛けとしたり、吹き抜けのホールと寝室のタイルは素材を変えてパターンを合わせたり、とリノベーションと言っても、チープなものを使わず、本物を使うことで豊かさを生み出している。
内装だけでなく、外部のバルコニーや玄関ポーチの柱などにも、以前のブロックやタイルの面影が感じられるような左官仕上げにしている。以前の雰囲気を残しながら新しいものを加えて新旧の共鳴を生む、それがリノベーションの醍醐味である。
「井の頭の家」では吹き抜けの階段は直線であったが、この家では、階段も単なる上下移動の機能ではなく、ゆったりと移動を楽しんでもらえる場所にした。浴室もミストサウナのためのベンチを設けている。寝室の裏側は、和室の方にまで伸びる広い収納スペースになっている。

戸建てのリノベーションは、耐震性、断熱性能などの向上を見込めるだけでなく、減築を行いながら豊かさをも生むような、さまざまな可能性に満ちた建物づくりが行えるのである。

  (納谷新氏 談)

209-3 納谷新/納谷建築設計事務所

リノベーションはさらに可能性が広がっています

今月は、「吉祥寺の家」を設計された、「納谷建築設計事務所」の納谷新氏にお話を伺います。5歳上の納谷学氏と、ご兄弟で設計事務所を立ち上げられたのが1993年。以来24年間、武蔵小杉の倉庫を改修した事務所でお仕事をされています。

―住宅をかなり設計されているのですね。都心はもちろん、ご出身の秋田だけでなく、全国にお客様がいらっしゃいます。
納谷:これまで建てた住宅は、180件くらい。毎回、僕らは、環境ということをとても重視しています。それは、「北国の秋田」といった自然環境だけでなく、隣の家も、美しくないもの、見たくないものも環境と考えています。クライアントが変るたびに、その条件を整理していき、形にする。言葉にするとわかりやすいけど、感覚的にやっているときもありますね。

―ご兄弟で設計事務所を開いている方は多くはないと思いますが、小さい頃から、お二人で建築を一緒にやろうと決められていたのですか?
納谷:いえいえ、たまたまです。兄が先に独立し、僕も他の事務所から独立する頃で、ちょうど一緒にやらないかと言われ、下に付くのは嫌だったので、兄の納谷学建築設計事務所の「学」をとって「納谷建築設計事務所」としてスタートしました。

―受賞数も数多いですね。
納谷:まっとうなことを追求していって、それが形になったということでしょうか。
ー事務所の特徴はどんなところにありますか?
納谷:「脳みそが2つあるんで」とよく言っています(笑)兄弟なので、枝葉がいろいろでも根っこのところが同じで、互いに冷静に批評し合えるところがいいかな。一緒に設計をするのではなく、それぞれが自分のプロジェクトをやって事前にプレゼンします。仕事が進むにつれ熱くなるときがありますよね。そんなときに冷静なもう一人の自分がいる、そんな感じですね。
―「井の頭の家」に引き続き、リビタさんとの戸建て住宅のリノベーションが今回実現しました。今、中古住宅が市場に余っていて、うまく回らないから空き家問題も増えていて、いよいよリノベーションに対する社会的ニーズが高まってきた感じですね。
納谷:本当にそうです。事務所のスタート時、リノベーションという言葉もまだ世間に根付いていなかった。でも、自分の家でリノベーションを発表して、多くのメディアで取り上げられました。一般誌の「AERA」まで来ましたね。

1999年、神奈川県茅ケ崎でつくった自邸「s-tube」は、2000年「あたたかな住空間コンペ リフォームの部最優秀賞」を受賞するなど、注目を集めた。軽量鉄骨造のプレハブ住宅(ナショナル住宅)に木造の箱(s-tube)で増築を行って生まれた細長い空間は、薪ストーブや洗練された家具、OSBの壁やルーバーなど、外観からは想像がつかない室内を作り出し、多くの雑誌に掲載された。

納谷:まだ、誰もやっていませんでしたから、それがあって、今も「リノベーションなら納谷」という感じで、その分野ではずっと途切れることなく仕事が来ています。当時、文章も書いたりしましたけど、今はもっとリノベーションの要請が増えて、それが、「住宅から住宅」だけでなく、「住宅から民泊(宿泊施設)」だったり、「住宅からカフェ」だったり、いろんな活用のされ方に変わってきています。人の暮らし方も様々で、リノベーションの可能性はいろいろと広がっていると思いますね。
環境の調査、リサーチも徹底しています。耐震性能も断熱性能もしっかりチェックしていくことは、最低限やっていかなくてはならないですね。

―集合住宅も手掛けられていますね。
納谷:基本的に賃貸の、デザイナーズ案件が多いのですが、僕等の設計した部屋はわりと空き室率が低いみたいですね。やはりリサーチをかけて、環境に適した必要なものを作るので、広さだけ稼ぐような作り方は、リノベーションでもしません。むしろ減築をしても豊かな空間を作れることを見せていきたいですね。

―本日は、ありがとうございました。

納谷 新(なや あらた)

1966年  秋田県生まれ
1991年  芝浦工業大学卒業
1991-1993年 山本理顕設計工場
1993年  納谷建築設計事務所設立
2005年~ 昭和女子大学非常勤講師
2008年~ 芝浦工業大学非常勤講師
2016年~ 早稲田大学、東海大学非常勤講師受賞歴(納谷建築設計事務所)(受賞多数のため直近の数件を抜粋)
2008年 第2回JIA東北住宅大賞2007大賞(湯沢の住宅)
2009年 第3回JIA東北住宅大賞2008優秀賞(八戸の住宅)
2011年 JIA日本建築大賞2011日本建築家協会優秀建築100選(門前仲町の住宅、鷹ノ巣の2世帯住宅)
2014年 JIA日本建築大賞2014日本建築家協会優秀建築100選(GILIGILI)
2015年 住まいの環境デザインアワード2015最優秀賞(360°)
2017年 こども環境学会賞デザイン奨励賞(昭和こども園)

209-4 「防水工事」について社内勉強会を行いました

7月の社内勉強会は防水工事について、協力業者の「トミヨシ商会」富岡大和代表取締役をお迎えしました。

防水工事には、主材料、施工方法、部位などにより、いろんな分類があります。主材料による分類では、大きく分けて、「メンブレン防水層」(有機質材料)、「セメント防水層」(無機質材料)、「金属質系防水層」の3つがあります。その中で一般建築に重要度の高い屋根、浴室などには、メンブレン防水層が採用されます(表の3つに複合防水層が加わる)

主なメンブレン防水工事分類

主なメンブレン防水工事分類

メーカーのカタログには「耐用年数30年」等と書いてありますが、実際には各現場、建物で環境は全く違います。耐用年数は基本「10年」と思っていただき、適切なメンテナンスを行うことが必要です。また新しい材料は、プライベートでオーナーがいいといえば施工することはできますが、実績が少なかったり、JIS規格に通っていなかったりすると、施工者側は不安なものです。設計事務所様は、メンテナンスしやすい、漏水が起きない工法をまず考えていただければと思います。
本日の資料は『シーリング施工本』(2000円)という本になっていますので、ご希望の方はぜひお声かけください。
(講義一部抜粋)

富岡大和 トミヨシ商会代表取締役
富岡氏は防水工事業協会で若い施工者のための実技指導も行っています。

TEL:03-3775-2203
URL:www.tomiyoshishokai.com/