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205-1 若い世代こそ和空間

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「八芳マンション」撮影:千葉顕弥/KENYA CHIBA PHOTOGRAPHY

写真はこの度、スカイツリーの近くに建ち上がった賃貸マンションです。
オーナーのYさんは、10数年前、自宅ビルを建てる際、近くでT社の工事現場を見て、現場監督に「自社ビルをぜひ施工してほしい」と依頼しました。個人住宅はあまり手掛けないT社でしたが、Yさんの熱意に受注することになりました。地上5階建てのRC造のビルは、濃い色のタイル張りの現代的な外観です。

もともと木造も得意とされていた設計の太田耕司氏は、上層階のご自宅部分には、高齢のお母さまのことを考え、以前の建物のプラン、内装のレイアウトを変更しないで、格子の天井、床柱、漆喰の壁などの和の部分を活かした内装設計を行いました。
今回の「八芳マンション」も、やはり太田氏の設計ですが、Yさんは近くで辰の施工で昨年竣工した、「浜田製作所本社ビル」の工事をご覧になられて施工をご用命くださいました。
建物は地上3階建て、建物の裏にも出入口があります。なぜでしょう?答えはp2をご覧下さい。

 「自宅に和空間が1つあるといいですよ」と木造建築の設計も多く手掛ける太田氏。確かに、畳の暮らしは落ち着きます。布団の上げ下げが苦でなければ、部屋も多用途に使いこなせますし、低い目線が天井までの空間を広く感じさせ、何しろ障子やふすまの引戸、縁側など外の自然や光とのゆるやかな付き合い方は、日本の風土に合ったものです。湿気の多い日本では畳や木部のメンテナンスは、昔は年間の行事に組み込まれていました。

しかし、高齢化の進む現代、年を取ると膝や足腰が弱り、畳の縁くらいの段差でも転びやすくなります。布団の上げ下げも苦労です。何しろ、膝を曲げることは苦痛です。介護状態になると、食べ物をこぼしたり、汚したり、不潔になりがちですから、介護する側もされる側もベッドの方が楽。高齢者が和室を望んでいても、洋間が勧められるわけです。

 一方、日本文化は茶道、華道に始まり、やはり和室という入れ物があってこそ、その良さを堪能できるものです。畳でなくて板の間であっても、建具、家具、絵画や書など、そこで芸術が生まれてきました。ですから、むしろ身体が丈夫な若い世代こそ、和室を活かした空間を積極的に活かした暮らしを取り込んでいただきたいものです。お雛様や五月人形を飾るのは、やはり和室。それに、赤ちゃんをちょっと寝かせる、子供たちを遊ばせる、両親など急な来客の一室としても機能します。

 畳屋さんの仕事が減っているとは言いますが、実は、和室はまだまだ根強い人気があるようです。中古マンションには和室が付いている場合も少なくありませんが、リフォームされるときも、琉球畳を入れたり、現代的な床の間スペースに変更したりして、おしゃれな和モダンスペースに生まれ変わっているケースも多いようです。

いつまでも和室生活を楽しむためにも、立つ、歩くという運動機能はキープしておきたいものです。あなたのロコモ度はいかがですか?

205-2 八芳マンション

シンプルでゆとりのあるマンション

 スカイツリーの足元、所有する築30年と20年のマンションの1階を合わせて、自社の工場として使っていたオーナーが、ご商売を閉じるにあたり、新しいマンションを建てることになった。
前面には、7階建てのマンションも建っているが、今後都心のマンションは供給過剰になることも予想され、息子さんの代に問題を残さない計画を提案。ワンルームマンションは避けて、余裕をもって3階建ての、入居者に長く住んでもらえる質の良いものを作るよう心掛けた。
シンプルでメンテナンスもあまり費用が発生しないものを希望されたが、その条件に合うコンクリート打ち放しはあまりお好きではないという。結局、外壁は打ち放しにルーバーを設け、共用部もなるべく打ち放しにして、各部屋には一面だけ壁を残すことにした。床は、以前ご自宅を施工したゼネコンから、竹のフローリング材を安くゆずるという申し出があり、採用。普通のマンションにはない、味わいを出している。
自分が設計すると、いつも広めになってしまう共用廊下には、トランクルームを設け、北側に大きく開口を取っている。子供の声が聞こえるのはいいことだ。当初、1階のテナントに幼稚園が入る予定だったため、裏の公園にも出入り口を設けることを行政に折衝、認められたが、諸事情で入居は取りやめとなった。だが、今後同様の施設利用には有効なプランだと思う。

(太田耕司氏 談)

構造:RC造
規模:地上3階
用途:共同住宅
設計・監理:太田耕司/K・O総合計画事務所
施工担当:郷 富安
撮影:千葉顕弥

205-3 太田耕司/K・O総合計画事務所

施主と向き合う建物

 今月は、八芳マンションの設計者、太田耕司氏に登場いただきます。

 

―コンクリート打ち放しだけでなく、木造もSRC造の大きな建物の設計も数多く手掛けられていますね。
太田:なんでもやりますよ。大学卒業して、できて2年目のプランテックに入りました。当時はまだスタッフも4,5人でしたが、今は大きな会社になりましたね。22年前に辞めて独立しました。
独立後、初めに設計させていただいたのは、「ネオ製薬」という会社の長野工場で、一般にはあまり名前は知られていないかもしれませんが、歯医者に行くと、皆さんが必ずお世話になる製品を扱っている優良企業です。プランテック時代に本社ビルを担当していました。
それから昭文社という地図会社の深川本部ビルや本社ビルも設計させていただきましたね。

 

―今回の八芳マンションのオーナーY様は、自宅の施工を近隣の工事現場を見て、その現場所長にお願いされたとのことでした。
太田:個人住宅物件をほとんど断る施工会社で、Y邸もいったんお断りにいったのですが、統括所長が施主側の熱意に負けて請けることになりました。そういう人と人の結びつきは大事だと思いますね。
今回も、八芳マンションは、昨年、辰で本社を建てられた浜田製作所さんの紹介でした。浜田さんには手摺等、鉄部を製作していただきました。
Yさん自身は「コンクリ―トの打ち放しは、あまり好きでない」とおっしゃっていましたが、自宅では打ち放しの内装を基本に、和空間を活かした、いい仕事を施工会社にしていただきました。

 

―近くの「圓通寺」の設計も手掛けられたそうですね。化粧型枠のコンクリート打ち放しの内部が素晴らしく、高い天井の梁に圧倒されます。それに建具や和室の部分の細工が凝っているようですね。
太田:木の部分はM工務店が力を入れて、施工していただきました。昨今、和風に特化した建築が少なくなってきていると聞いています。
「和室」は、皆さんもっとご自宅に作られてもいいのにと僕は思いますよ。一つあるだけで、いろいろな用途に応用がききますから。今進行中の千葉にある日蓮宗7大本山の一つの寺で、和風木造建築の本院を手掛けていますが、江戸時代より建て増ししてきた茅葺屋根の木造建築物を壊して計画をしました。茅は近隣で栽培してメンテナンスしてきたそうですが、生産農家がいなくなり、作れなくなったそうです。残念ですが、需要が少ないからですね。

 

―福島県の方で、木造の住宅を結構作られていますが・・・。
太田:もともと福島の出身です。原発の大熊町に、会社経営している施主がおり、木造の住宅兼迎賓館の設計を依頼されました。2008年に竣工したのですが、玄関を開けると、真っ白な砂利が敷き詰められた木とガラスの空間が広がり、その上を裸足で歩き、バーベキューもできるように計画しました。現地の大工さんとああでもない、こうでもないと精魂込めて作りました。

その3年後、ですよね。東北地方太平洋沖地震があり、東京に避難してきた施主と2週間後、現地に行きました。計測器を持ちながらの視察でしたが、放射能が非常に高く、大熊町にはもう住めないと感じました。施主が建物を気に入ってくださっていたので、「移築」を考えましたが、「その方がお金がかかる」とのことで、結局、住宅メーカーで同じようなものを新たに移転先に建てられました。が、似て非なるものですね。大熊町にはその建物だけが残っています。

 

―残念な話ですね。
太田:本当にそうです。今頃は使用していないので、無残な姿をしていることでしょう。

先ほど話した日蓮宗の本院がそうだったのですが、木造の大型物件は、結構難しいですね。500㎡以上だと、構造計算書を出さなきゃならないのですが、私の周りにはやってくれる構造事務所が少なかった。「木造計算はやらない」というところが 多かったですね。

施工は当然のことですが、設計と熟錬した棟梁がいて、意見を交わしながら進めないと、面白いデザインができません。ときには、図面と違うものができる。それが両者を育てるのだと思います。
木造でもコンクリートでも、建物は、たくさんの人がたずさわって造るものです。それを取り仕切る現場監督がデスクで書類管理ばかりだと、現場が職人任せで、取り合いがいい加減になり、問題になる。困った現状ですね。辰は若い人が多く、どんどん現場に出ていますので、これから伸びる会社だと感じますね。大事なことだと思います。
先日、渋谷区役所で打ち合わせをしていたとき、担当者から「太田さんはベテランですね」と言われてどきっとしましたね。初めてでしたから!
「俺がベテラン?」その技量が備わっているのか、深く考えさせられました。建物余りのこの時代、設計者はいかに施主、施工業者と向き合い、自分が計画する物件を造っていけばいいのか、日々考えています。
―本日は、ありがとうございました。

 
太田 耕司

1962年 福島県生まれ。
1986年 明治大学工学部建築学科卒業
1986年 設計事務所勤務
1995年 株式会社K・O総合計画事務所 設立

 

設計実績
ネオ製薬工業新長野工場、昭文社深川本部ビル、昭文社本社ビル、Y邸、圓通寺庫裏、富津クリーンセンター、I.C.E迎賓館、ネオ製薬第二ビル、大本山清澄寺本院、その他、個人住宅など多数

205-4 プレートラーメン構造 見学会

さる3月10日、11日、現在、世田谷区松原で施工中の「(仮称)松二荘新築工事」の現場におきまして、設計のHoribe Associates architect’s office の主催による構造見学会が開催されました。
一種低層住居専用地域での建造物は高さ10mまでに制限され、住環境条例により最低住戸面積25㎡ 以上、室内天井高 2.3m 以上と定められています。
この厳しい法規制の中、快適な居住環境と、1戸でも多くの住居を計画するために、設計を担当された、Horibe Associates architect’s  officeが生み出したのが「鉄筋コンクリート・プレートラーメン構造」です。投資額の大きな建設事業において、建築物の長寿命化とニーズの変化に対応できる間取りの可変性の両立を可能にします。

 

プレートラーメン構造は通常のラー メン構造とは違い、柱と梁を壁と床の厚み程度の扁平なプレート状とすることで、柱型や梁型が現れることがなく、間口方向に耐力壁も必要ありません。
そのため、間口に対しての最大開口を確保することができ、法令の定める高さ制限の中においても、最大数のフロアを確保することができます。
柱型や梁型の無いフラットな構造躯体は、凹凸の無いスッキリとした居住空間を実現できるため、多様化するニーズに対して様々なプランを実現することが可能となります。
また鉄筋コンクリ ー ト造の特徴でもある高い耐震性や耐久性、耐振動性・耐騒音性により、安全性と快適な居住性を兼ね備えた、非常に優れた建築を実現できる構造といえます。(見学会パンフレットより)

 

構造:RC造
規模:地上4階
敷地面積: 338.54㎡
延床面栢: 467 .06㎡
容積率: 137.97%<150%
建ぺい率: 57.97%< 60%

意匠設計: Horibe Associates architect’s office
構造設計:高橋俊也構造建築研究所
設備設計:グランドファシリティ