2012年2月号 Vol.143

目次 : MONTHLY TALK / MONTHLY ARCHITECTURE / FRONT LINE / Spirits of Maintenance / TOPICS & INFORMATION

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「五本木の家(S邸)」  撮影:アック東京


ライフスタイルと器


写真の建物は、昨年末竣工した住宅です。設計は、森山善之さん率いる「バケラッタ」。ユニークな名前でしょう。森山さんが独立した1997年当時、設計事務所の名前は硬いところが多く、仕事を始めた頃からお客様が電話をかけてきやすい名前にしたかったそうです。設立当初は、年5~6件だった受注も、今では年12~13件と、お仕事は順調に伸びています。

「広告などは、エンドユーザー向けのものに限っています。
コンセプトや図面をホームページに掲載しても、エンドユーザーにはわからないし、興味がないと思うんですね。だから実作につながらないコンペや、エンドユーザーがあまり読まない専門誌なども、結局事務所の労力ばかりが多くなるのでやる気がありません。
逆にエンドユーザー向けのラジオやテレビ、ファッション誌や会報誌などには積極的に出るようにしています」と森山さん。
エンドユーザーが自分のライフスタイルをイメージできるように、バケラッタのHPでは、実際に家具や雑貨が入っている写真をふんだんにアップしています。「すべては施主のために」という事務所のスタンスを徹底させているそうです。

 

確かに建築の専門誌は一般の方にはなかなか難しく、業界関係者向けであることは間違いありません。が、専門誌の方でも、より一般の読者に読んでもらおうと編集努力をされていることでしょう。
 改めて、「建築」を知ってもらうのは難しいことと感じました。
施工会社である弊社が、竣工した建築を記録するには、なるべくお客様の入居後の生活にご迷惑をおかけしないようにお引渡しの前、お引越しの前に、家具など何も入っていない写真を撮影することがほとんどです。家具、雑貨に囲まれた生活が感じられる写真、通行人や町の雰囲気が伺える写真、お客様ご自身が写っている写真の方が効果的ですが、辛いところです。

 一方で、完成した建物に生活感が出る説明写真を嫌う設計の先生もいらっしゃいます。お客様の中にも個人情報が晒されることに抵抗がある方が少なくありません。限られた日程や周囲の環境を鑑み、デジタル化が進む昨今ではなるべく建物の形や設計主旨がよくわかるようにと、建物の周囲の電線を消したり、近隣の不要なものを消し、画像の加工を行なうこともあります。

しかし、「お客様が選んでくださる」という点では、「良い建築」ははっきりしています。すなわち、耐震性に優れ、長寿命であり、質の良い素材を用い、適切な温熱環境が保たれ、お客様の好みの家具や設備を生かした内部空間が実現されていることです。
 デザインは千差万別、なにより適正な金額で行なわれるミスのない施工が、普通の人にとって「良い建築」だと思い至ります。「信頼」をいただくことが、すなわち「良い建築」につながることになります。

 

作品紹介 MONTHLY ARCHITECTURE

「五本木の家(S邸)」

Photos


①3階リビングダイニング。周囲より高い建物のため、360度のパノラマが楽しめる。奥に見えるエレベーターもガラス張り

②西側外観。地下1階はガレージ。1階は 白い外壁で閉じ、内側のテラスに面して、浴室と和室がある。2階は2つの居室。手前の隣家ととは壁で仕切られている

③地下1階エントランス。大きな鏡と高い天井


④変形の和室の奥に備えられているのは水屋ではなくホームシアターのためのAV機器

⑤浴室。写真の右側にはデッキテラスが広がる
⑥階段踊り場に埋め込まれたトイレ

リビングでパノラマの景色を楽しめる住宅

 

 閑静な住宅街の、少し傾斜のある敷地。
部屋数と家族それぞれのスペースをシュミレーションした結果、地下を含め4層の変形の建物として与件を満たすことになった。
 地下1階はガレージとエントランス、1階、2階は居室と浴室を配し、最上階の3階は、家族の集まるリビングダイニングを配置。周辺の屋根より頭一つ高いため、全方位のガラス張りの開口部から広々とした景色が楽しめる。
 周囲からの視線を配慮し採用した熱線反射のガラスに、昼間は青い空が映り込み、夕暮れには真っ赤な夕焼けが映し出される。下層階では閉じた無機質な建物に、最上階のガラスが有機的な変化を与えている。
リビングに現れるエレベーターは目立たないようガラス張りで透明にし、トイレは視覚的な妨げにならないよう2階への階段の踊り場に埋め込まれている。
 内部の素材は特別なものを使っていないが、オーナーの希望を十分に考え、白を基調とした落ち着いた雰囲気に仕上げている。    
 

(森山善之氏 談)


Data

所在地:目黒区
構造:RC造
規模:地下1階 地上3階 
用途:専用住宅
設計・監理:森山善之/バケラッタ
施工担当:村山
竣工:2011年12月
撮影:アック東京


TTMA BLDG改修工事

Photos


①before全景。外壁のルーバーは竣工時にはなかった

②before外壁コンクリート部分の劣化。新築当時の撥水材の効果がきれた状態

③beforeトップライトのスチール建具部分の劣化

④beforeスチールサッシの水切等錆び腐食

⑤before3階のスチールサッシの水切等錆び腐食

⑥after1階ガレージの撥水材再塗装後


⑦after2階外部スチールサッシ及びコンクリート再塗装後


⑧after3階螺旋階段周辺再塗装後


⑨after3階ガラス部分シーリング塗装後

築20年のテナントビルが補修工事できれいに

 

 バブル期に周辺に次々と建てられたデザイナーズビルの1つ。現在はタイ古式マッサージなどを行なう会社が新しいオーナーである。竣工後20年が経過して、劣化の見られる場所が出てきたため、管理会社の㈱ニート様より、弊社へ改修工事の見積依頼が寄せられた。今回、早期に補修工事が必要な部分ついてのみ、工事を行なうことになった。
    1. 外壁部分コンクリートの撥水材塗布工事 2. 外部鋼製建具の塗装、水切腐食部分の交換工事 3.外部鋼製建具ガラス部分シーリング代替工事
 鉛+ステンレス複合板の西側外壁の再塗装工事は今回は見送られたが、打ち放しコンクリートやサッシ廻りは美しく生まれ変わった。


Data

所在地:渋谷区
構造:RC造+S造
規模:地下2階 地上4階 PH1階 
用途:店舗・事務所
設計:WORKSHOP
施工担当:柴田
竣工:1991年
改修引渡:2011年12月
撮影:before工事部
    after 編集部



Vol. 45

エンドユーザーの期待に応える

森山 善之/建築設計事務所バケラッタ


1964年  岡山県生まれ
1987年  山口大学卒業類設計室、PAO設計勤務を経て
1997年  建築設計事務所バケラッタ設立
2006年~2011年 日本大学工学部建築学科 非常勤講師

Photos


ゲームのような画面で、訪れるエンドユーザーを楽しませる バケラッタのホームページ。http://www.baqueratta.com/

神南のオフィスにて。ラフな塗装の壁にスタッフの自転車がかけられている

「施工会社も長い付き合いの中でよりグレードアップしてくれるよう願います」

  今月は「五本木の家(S邸)」の設計者、バケラッタの森山善之さんにご登場いただきます。事務所設立後、手がけた住宅は150件近くとのこと。その人気の秘密をお伺いしたく、神南にあるオフィスにお邪魔しました。

森山善之/建築設計事務所バケラッタ 撮影:アック東京


 個人住宅の設計を多く手がけられています。


森山:お客様に一番似合うものをつくろうと、とことん話をします。
 設計事務所として自分たちのスタイルにこだわることには意味がないと思っていますから。
洋服でも、ある人の服がかっこいいと思っても、その服は自分には似合わないということがありますね。いろんなスタイルがあっていい。
 基本的にうちに頼みに来る人は、センスの良い方がほとんどですが、その人に似合うものをとことん考えると、「良い建築」をつくることにつながるのです。クラシックな方、ミニマムが好きな方、やればやるほど我々の幅が広がっていきます。

   もちろん時間はかかります。最初は、その希望はあやふやで、断片的なスクラップブックを作っていくようなものですが、聞くことによって、多くの情報をまとめ、お客様と一緒に考える。
 金額的には建築費が1億円前後のものが多いのですが、それを年間10件ほどつくり続けるのは相当難しい。
 でもこのお客様に合うものを探る行為こそ、モチベーションの元。ただ建築が面白いというだけでは、海のそばとか崖とか特異な条件でもない限り、変わったことは出来ません。

 またセンスの良い方であればあるほど、自分のライフスタイルにこだわりがある。しかし好みの家具や雑貨が、現在の住まいに「うまく収まる感じがしない、よくない、ちぐはぐする」と悩みがあるわけで、それを解決するための器を作るのが僕らの役目なんです。

スタッフは今、何人くらいですか。


森山:10人です。だいたい1人3件担当していますが、竣工まで2年はかかりますから、年に1億5000万くらいの仕事をしてもらわないといけませんね。
 それに、我々はメンテナンスも全部自分たちでやっています。100件もやっていると、雨漏りや扉の開閉など毎回常に何かしら手を入れることは出てきます。
 そんなとき、お客様は必ずうちの担当者に電話をかけてきます。事務所で徹底しているのは休日でも夜中の2時、3時でも絶対に何とかするということです。ということは、クレームだらけの仕事だと後々の処理がたまらないんです。だから新築時には出来るだけがんばって完璧を目指します。
 事務所の管理の良さは結構、評価をいただいていると感じますね。クレジットカード会社のコンシェルジェ、大手デベロッパーの上質な顧客向けのサービスなどから、単独で紹介をいただける事務所は、そんなにないと思います。 

森山:ただ紹介物件が増えるとどこまで取ればいいのか悩みます。1000万円台の改装もやっていますが、1つの事務所で、3億の仕事と3000万の仕事をやるには窓口は分ける必要を感じますね。周りの施工会社も、毎回同じメンバーでは無理ですね。得意とする規模で分けないとならない。
 もっと必要なことは、より施工レベルを上げ、建物の質を上げていきたいことなのです。
 東京の施工会社の技術は、全国平均レベルでいえばもちろん高い。でも実際にトップレベルかというと、そうではない。もっといい工務店は北関東にもあるし、関西にもっと上手な施工会社はいっぱいあります。
 それはつまるところ、職人さんの差なんです。例えば、関西では左官工事で「不陸」ということはうまい会社ではほとんどない。でも東京では「人の手でやることだから」と言われる。それはものの目指し方の違いだと思います。実際出来る人がいるわけですから。
 建物の規模によって頑張り処が違うと思いますが、施工会社だけでなく、設計側も価格帯によってブランドを分けるような工夫が必要ですね。4億の住宅になると仕上げも単純ではなく、いろいろ考えることは増えますから。

 今後は、5億,10億の仕事も増やしていくつもりです。それには、施工会社にも、一緒にレベルアップしていただきたいですね。

本日は、どうもありがとうございました。



TOPICS INFORMATION

Photoes


①小関邦昭 安全衛生協力会会長 挨拶

②窪田幸夫 ㈱辰 安全衛生委員長 挨拶

③安全協力表彰業者:写真左から置鮎様、松建様、大和組様、森村社長

④安全表彰作業所:写真左から王、奥村、田所、中川、森村社長

⑤「匠」の皆様:写真左から、中原様、柴田様、田崎様(代理)

⑥23年度新人紹介:左から、皆川勝、谷健司、王捷

⑦親睦会で乾杯


「平成24年度安全衛生大会を開催」  2012年1月27日 於:こどもの城 

  1月27日、㈱辰安全衛生協力会(協力業者の皆様と辰で構成)恒例の「安全大会」が渋谷「こどもの城」において開催されました。
当日は安全衛生協力会社85社様と辰の社員41名が参加、協力会会長の小関邦昭小関工務店取締役のご挨拶に始まり、弊社窪田幸夫安全衛生委員長の挨拶。平成23 年度活動報告および事故報告、会計報告、監査報告が行われました。続いて平成24 年度活動計画、安全スローガン、予算の承認をいただきました。
 また、新年度の役員改定(幹事は昨年の2社のうち1社が退任、他は重任となりました)安全協力業者3社、安全作業所2現場の発表と続きました。
 昨年度該当者のなかった、職種別最優秀職人「匠(たくみ)」は、今回3社が選ばれました。終了後の親睦会では、和気藹々とした中で皆様との交流が行なわれました。


■新年度役員

会 長:小関邦昭様 ㈱小関工務店
  副会長:早田 勇様 富士スチール㈱
  監 査:金澤和夫様 ㈱協力電業社
  顧 問:富岡陸男様 ㈱トミヨシ商会
  会 計:本卦照章様 ㈱巴水道工務店
  幹 事:松田一良様 玉屋硝子工業㈱

■安全協力業者表彰 (積極的に安全業務を推進された会員)
・㈲松建 (まつけん)工務店
・㈱大和組(だいわぐみ)
・置鮎(おきあゆ)工業

■安全作業所表彰(積極的に、安全、円滑な工事を行った現場)
・「吉祥寺瓦葺邸 新築工事」
中川伸一主任 田所幸治係員 
・「M4新築工事」
奥村光寛主任 王捷係員

■「匠」表彰
㈲中原木工所 中原文雄様(木製建具)
㈱横田工業 柴田晴美様(左官)
㈲多田國工務店 田﨑卭一様(造作大工)

■ 23年度新人紹介
皆川勝、谷健司、王捷


■安全スローガン(安全標語)
多数の応募をいただき、12ヶ月分の入賞者の中で、最優秀賞を
株式会社辰の高沢拓が受賞しました。

「辰年度 みんなで目指そう ゼロ災害」
これを年間スローガンとして、現場に掲示、安全な施工を心がけてまいります。
今年はこどもの城で開催、引き続き親睦会が行なわれました。




⑧安全スローガン、今年は㈱辰の高沢拓が最優秀賞に


地鎮祭・上棟式情報


「(仮称)Zefa 神宮前4丁目PJ 新築工事」上棟式 2012年1月13日

広告会社の新社屋です。杉板型枠の打ち放しが施工の見せ所です。

構造: RC造
規模:地上3 階
用途:店舗・住宅
設計:大堀伸/ジェネラルデザイン一級建築士事務所
完成予定:2012年 3月



(仮称)安藤ビル2号館 新築工事」地鎮祭 2012年1月16日

井の頭線浜田山駅から徒歩1分のテナントビルです。

構造:S造
規模: 地上2階
用途: 店舗
設計: 建築計画研究所
完成予定: 2012年5月



編集後記

・「首都圏にいつ直下型大地震が来てもおかしくない」とさまざまなメディアで取り上げられています。
ご自宅やオフィスの備えは万全でしょうか。

(株)辰通信 Vol.143 発行日 2012年2月15日 編集人:松村典子 発行人:森村和男
東京都渋谷区渋谷3-8-10 TEL:03-3486-1570 FAX:03-3486-1450
E-mail:n_matsumura@esna.co.jp   URL:http://www.esna.co.jp