204-4  建物再訪 2.「N(エヌ:練馬集合住宅)」 

2017年3月16日 at 10:34 PM

 

地域を育てる、マンションオーナー

 

 

今回は、ShinClub 74 でご紹介した、「Neri」こと「N」のオーナー芹沢尚弘氏と竣工当時若松均建築設計事務所で現場を担当し、「N」の住人としても芹沢氏と家族ぐるみのお付き合いを続ける、萩野智香氏(萩野智香建築設計事務所)にお話を伺いました。
練馬駅周辺の数多くの不動産物件を先代から引き継ぎ、街の環境を見据えて不動産オーナーのあるべき姿を提案する芹沢氏は、以前勤めていた「PDO」で「地域とのつながりを考慮した美しい共同住宅」案を募集。高齢者の多い下町情緒残る界隈の特性を生かした若松均氏のプランが採用され、2006年3月、共同住宅「N」が完成しました。竣工後10年を迎え、今回、外壁塗装、防水工事などの改修工事を行わせていただきました。

―芹沢様はずっと練馬にお住まいですね。
芹沢:曾祖父の代からになります。農家で、この辺はまだ畑ばかりでした。祖父の代から町の不動産屋さんとアパート経営を行うようになり、父の代で徐々に増やし、その後私が引き継いでいます。
常々疑問に思っていたのはほとんどの地主さんが経営を不動産屋さんに丸投げで、「相続対策としてある程度の収入が確保されればいい」くらいの意識だということ。集合住宅の規模になると、街の景観として影響力はすごく大きいのに、無責任にただ建物を作り続けています。最近はワンルームがほんとに増えてますが、練馬ではある程度の広さが確保された部屋に、シェアして半額ずつ払って住む方の需要が多いくらい。子供ができればファミリータイプに引っ越す、子育てエリアです。新築神話は賃貸住宅においても、最近の若い人には当てはまらないし、竣工後5,6年経って入居者が埋まらなくなっていく物件が多いです。東京の賃貸住宅は総じて余っていくわけで、建築家の設計による建物はもちろん魅力がありますが、それ以上に普通の建物をきちんとメンテナンスしながら、長く使っていくことも忘れてはならないことだと思いますね。
―「N」は近隣の方からの評判も良いそうですね。
芹沢:近所の人が通り抜けられる開放的なプランで、「いいものができたね」という声をいただいています。入居者の方も建物を愛し、ゴミを拾うとか、清掃を心掛けてくれ、長く入居してくれています。ですから工事に関わった設計者の方、工事の方、そして街の人たちをがっかりさせないよう、いい状態を維持していきたいですね。メンテナンスは、工事の最初の挨拶、工事中のお声、終わった時の挨拶など近隣の方や入居者との新たなコミュニケーションの機会です。お互い、顔を合わせて話を交わすことこそ、セキュリティに繋がります。5年後には、防犯や宅配BOX、インターネット環境など入居者のための更なるメンテナンスを計画しています。街行く人に「愛着がないんだな」と思われるような建物にはしたくはないですね。
―萩野さんも「N」の住人でいらっしゃったとか。
萩野:若松事務所に入所した頃、芹沢さんの所有するマンションに入居することになって、いろいろとお話を聞くようになり、物件を担当することになりました。完成後、今度は自分が関わった「N」に住み、自分が考えていたことの答え合わせができたことは得難い経験でした。特に、2つの反転するプランの部屋に住み替えたのですが、「これだけ室内の環境が違うんだ」ということを実感しました。10年間で建物が変っていくことも経験できて、本当に自信をもってお客さんに伝えられることが増えました。改めてお礼申し上げます。やはり、オーナーの志があるかないかの差で、環境はずいぶん変わると思います。芹沢さんのような方とよいまちづくりをしていければと思いますね。
―練馬を救う会、ですね。
芹沢:同世代のつながりは既にあるんです。他のエリアで、やはり先代からの不動産を引き継ぎ、新たに複数のマンションを建てられて、街に良い環境を与えているオーナーとのつながりも生まれそうです。
―本日はありがとうございました。

 

構造:RC造+S造
用途:共同住宅
規模:E棟地上3階 W棟地上4階
設計:若松均 /若松均建築設計事務所
構造設計:多田脩二
照明設計:戸恒浩人
企画:PDO
管理:スタジオエヌ
竣工:2006年3月