210-1 AI(人工知能)

2017年9月11日 at 5:00 PM
「MIMOSA PUDICA 」撮影:平井広行

「MIMOSA PUDICA 」撮影:平井広行

 

最近のニュースといえば、ゲリラ豪雨や迷走台風など相変わらず異常気象の話題にこと欠きません。九州北部の豪雨や、アメリカを襲ったハリケーンの被害を見ていると、まるで津波が来たような光景がテレビに映し出され、とても他人事には思えません。こうした災害に対し、天気予報や警報などの予知システムも発達し、雲の動きや雨量の予測もその精度を高めています。そして、その異常さを伝えるための「50年に1度の雨」とか「100年に1度の水位」という言葉が頻繁に使われるのですが、一見わかりやすいようで、実は何のことやらよくわからない表現ではないでしょうか。実は、こうした表現にならざるを得ないのには、それがAI(人工知能)による情報だということに関係しているようです。

ご存知の通り、AIとはコンピュータが膨大なデータから様々な現象の因果関係を分析し、将来予測に役立てる技術のことです。天気予報はその代表的な応用分野で、膨大な過去の天気図データを入力し、気象の変化を予測します。人間をはるかに上回る巨大なスーパーコンピュータの記憶量と分析速度を駆使すれば、従来の予報官の経験と勘よりも精度も確度も高い予測が可能となります。最近では、この技術を応用して、NTTドコモと東京無線などが共同でタクシーが顧客を見つける確度を高める実証実験を開始しました。アメリカではすでに犯罪予測にAIが活用され、日本でも京都府警が昨年から導入しました。

このように、AIというと何か機械が自分の意志で勝手に動き出すようなイメージをしがちですが、現状では、これまで人間の「経験と勘」に頼っていた分野での「AIへの置き換え」が急速に進んでいます。確かに従来の天気予報は、ベテラン予報官の経験や勘に頼っていたわけですし、タクシーの客探しや、警察の巡回パトロールや職務質問なども、まさに職人芸のような分野です。「AIが人の仕事を奪う」と言われているのも、まさにそのためだと思います。

こうして、これまで人間では予測できなかったことをAIが予想してくれるようになったのは良いことなのですが、そこには大きな問題があります。それは、AIの予想はあくまで膨大なデータからの統計的な予測であり、計算の結果です。先ほどの「50年に1度の雨」とは、言葉の通り「50年に1度の頻度で発生する」という意味であり、予報官がメカニズムや原因を詳細に説明してくれるので、私たちも理由がわかったような気になりますが、AIは膨大なデータを元に予測しているだけで、理由や原因を説明してくれているわけではないのです。

今年の5月、人間とAIが将棋で戦う「電王戦」で、AI将棋ソフト「PONANZA」と佐藤天彦名人が対戦し、AIが勝利をおさめ「ついに人間はAIに負けた」と、大騒ぎになりました。淡々と次の手を指す2本の長い手の機械の前で、腕組みしたり天を仰いだりと名人のあがく姿が象徴的でしたが、その傍らでロボットは誇らしげに威張ることも無く、開発者も「うれしいですが、説明はできません」と至って謙虚なのが不思議でした。AI世代と言われる中学生の藤井壮太君の破竹の29連勝に国中が沸きました。
もしも人類の、次の飛躍に役立つならば、AIのこれからはとても楽しみではないでしょうか。