219-1 レンガタイルの魅力

2018年6月27日 at 11:28 PM
「moana(尾山台プロジェクト)」    撮影:西川公朗

「moana(尾山台プロジェクト)」    撮影:西川公朗

 

写真はこのたび、尾山台に建ち上がった賃貸集合住宅です。夕景が建物の光と影を際立たせています。外壁には、特注の炻器質(せっきしつ)タイルが貼られており、閑静な住宅街にさらに気品のある雰囲気が醸し出されています。このタイルを生み出しているのが、兵庫県尼崎市に本社を置く、織部製陶株式会社。復元された、三菱一号館美術館やNICCAイノベーションセンターなど、そのお仕事ぶりは全国各地で目にすることができます。

営業部の古澤竜男主任に、四谷にある東京支店でお話を伺いました。
「弊社は創立40周年を迎えるタイルメーカーです。すべて現場ごとに受注生産を行っています。設計の先生と打ち合わせを重ね、職人が1枚1枚手仕事で表情を付けています。

レンガの焼成は、安定的に大量生産できる酸化焼成を行うことが多いのですが、弊社では還元焼成といって、器や焼き物の焼き方と同じ方法を行っています。釜に送る酸素を絞り、タイルの土の中の酸素を引き出すことで、焼き物の表情が出て、タイルの色むら、色幅を出すものです。

工場は岐阜県の瑞浪にあり、織部焼や志野焼で知られる美濃焼の産地です。その周辺は鉄分の少ない土がとれます。常滑などは土が赤いのですが、多治見や瑞浪などの土は、焼くと白くなります。そのため色を付けやすく、タイルメーカーの窯元が多いです。

今回は、厚みの違うタイルを2種類作り、試作を重ねて、打ち合わせの中で色味、サイズを決めていきました。1枚ずつ職人さんが貼り、目地も骨材入りの目地モルタルをチューブを使って入れて、ラフな面を出しました。
また「弾性接着材貼り」という方法を取っており、断熱ボードとタイルの間に発泡系エポキシ系接着材を入れて、さらに接着性を高めています。最近は、『3.11』の震災の時にボンド貼りのレンガが落ちていなかったということで、この方法も増えています。

見本と本焼きで全く同じというわけにはいかないのですが、こちらも先生のこだわりに経験で応えています。還元焼成は1色の調合で色幅が自然と出るので、多くの色をミックスインしていくより、統一感のあるバリエーションを生み出すことができます。また、焼いたものを工場で出荷する時点でバリエーションを考えて詰めていくので、施工現場で職人さんが組み合わせに悩むということが少なくなります」と古澤主任。

社名の「織部」は今から約440年前の武将茶人で、千利休を師に持ち、織田信長、豊臣秀吉らに仕え、安土桃山時代を生き抜いた古田織部に由来します。「やきもの」としての織部焼は、一つとして同じものがなく、斬新で自由なスタイルが21世紀を迎えた現代においても人々を魅了し続けています。その精神を受け継ぎ、職人の手から生み出される唯一無二の質の高い作品を創作し続けていかれるとのことです。