221-1 街ぐるみのケアの拠点づくり

2018年8月12日 at 2:39 AM
「けめともの家・西大井」(『幼・老・食の堂』) 写真:太田拓実

「けめともの家・西大井」(『幼・老・食の堂』) 写真:太田拓実

 

写真は、1月にオープンした、看護小規模多機能型居宅介護施設・事業所内保育所・地域交流スペース・訪問介護、看護ステーションが複合する「けめともの家・西大井」です。2016年に建築・デザインコンテスト「SDレビュー2016」【鹿島賞】を受賞しました。受賞作品名は、「幼・老・食の堂」(設計:金野千恵、アリソン理恵/teco)。竣工間近、昨年暮れの内覧会には多くの人が見学に訪れていました。
運営する株式会社ケアメイト様は昭和33年(1958年)、現社長、板井佑介氏のおばあ様が看護師の経験から「自宅で暮らし続けること」をサポートすべく、城南家政婦紹介所(現・城南ケアサービス)を開始して以来、60年間、「在宅ケア事業」を行っています。
現在、日本における介護保険制度は、施設入居の介護より、「地域包括ケア」「在宅ケア」を根幹にしたものになっています。ケアメイト様では、都内城南地区を中心に、「いま介護が必要な方」だけでなく「これから介護が必要になる方」「ずっとこの街で暮らし続けたい方」の拠り所となり、高齢者介護だけでなく、障害福祉サービスや配食事業、地域保育事業など、支援を必要とする、すべての人たちを対象にサービスの展開を図っています。
この「けめともの家・西大井」は、そんな中でも、高齢者の看護小規模多機能型居宅介護施設、いわゆるカンタキと事業所内保育所が一緒になった、新しいタイプの地域ぐるみの施設です。

今月は、この多世代のつながりを大切にする新たな施設について、ケアメイトの板井佑介社長、設計のtecoの金野千恵氏、アリソン理恵氏にお話を伺いました。

板井氏はまず、都市部の問題として、高齢者の独居問題があるとおっしゃいます。近所の付き合いが昔とは違って本当に少ない、そして一方で、子育て世代もまた地域でのつながりがなく、共働きで子育てしていくには非常に汲々とした状況がある。介護や育児は本来は暮らしをサポートしていく手段なのに、目的化してしまい、業界そのものの魅力が高まらない一因にもなっているということです。目的は、やはり誰もが自分らしい暮らしを維持できること、豊かな気持ちで安心してこの場所で暮らしていけることです。そこで、その二つがつながるような場所・機会を作り、孤立した高齢者、親をつなげて、「お互い様」という助け合いを生みだしたいと思ったそうです。
設計のteco様との出会いは偶然でした。板井氏がある勉強会に行ったところ、何人かの発表者の中に金野さんがいらして、建物の半外部空間に注目し、人の振る舞いと建築が相互に関連付けられている様子をお話しされており、その内容がとても面白かったそうです。
その後、今回の計画を具体化することになり、金野さんの実例もみて、すごく面白いものを考えていただけそうだ、と期待が高まりました。見学に行った建物は団地の一角をリノベーションした、60㎡くらいの介護事業所でしたが、手前に縁側のようなスペースをつくり、街にオープンに開かれたものでした。「これからのケアは、高齢の方、子どもに関わらず、街ぐるみでやっていくべき」と金野さん。もう一つ、スタッフの方がいかに生き生きと働いているかということと、ケアの風景が街の風景となっていくようなあり方が求められているのではないかともおっしゃいます。
「ずっと、我が家で。明日も、この街で。」というのがケアメイト様の想い。地域の中で暮らしていくことをサポートしていく場所作りへの願いが込められたキャッチコピー。続きは、p3の「フロントライン」で。