229-1 地域で愛される建物に

2019年4月12日 at 7:52 PM

 

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高山商店  撮影:アック東京

写真は、練馬にある食品関連の会社「高山商店」様の工場と事務所ビルです。関東ローム層という地質に恵まれ、大根の産地として有名な練馬は、昔から沢庵農家が多く、「高山商店」も、昭和10年、農家から現社長のおじい様の時代に漬物業を始められ、先代の髙山恵一郎氏の時代から、いわゆる「ガリ」と呼ばれる生姜の甘酢漬けの販売を始められました。

先代の社長がこのデザイン性ある建物を建てられた31年前、漬物の会社は点在しておりましたが、周囲にはまだ畑も多く、かなり斬新なものであったようです。しかし、先代社長は、宅地開発がさらに進むと考え、違和感のないようにデザイン性のある打ち放しコンクリートの建物を建てられ、工場部分も地下に収めて周辺への影響を最低限にしました。この地で息子様髙山幸治様や次世代の方々が長くご商売を続けていけるように、と配慮されたのです。

それから月日が流れ、30年を過ぎて、コンクリートの外壁はだいぶ傷みが見られるようになりました。
父上の恵一郎様が一昨年病に倒れられ、昨年春に他界される直前に現社長の幸治氏に「建物をきれいにした方がいい」という気持ちを伝えられ、社長は、「新築同様にきれいにする」と誓われたのでした。
黒ずんだコンクリートの建物の前に立った現場担当者は、「一周忌に何としても間に合わせたい」という社長の期待にお応えしなくてはと、コンクリートの化粧補修を行う専門業者に社長の思いを伝えました。現場では一体感が生まれ、この3月、きれいに建物は生まれ変わりました。
先代社長は、ご自分の目で見ることができませんでしたが、社長は、その遺志に報いることができたと大変満足いただけたようです。
長年その地で暮らし、ご商売をなさってきた親御様が亡くなられたとき、その土地や建物をどうやって引き継いでいくべきか、多くの方が今、その悩みに向き合っておられることでしょう。
単に相続税の問題だけではなく、特にお仕事にも関わりがあれば、事業継承という問題もあるでしょう。
そんな時に、地域で暮らしてくことに「先見の明」を持って、地域に開かれた、その場所にある必然性を持った意味のある建物を次世代に引き渡していければどんなに素晴らしい事でしょう。
今回は、そのような場面を見せていただき、建物が再び美しく生まれ変わる瞬間に立ち会えたことを光栄だと感じた次第です。
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改修前の、「高山商店」北側全景写真