231-1 子どもが中心

2019年6月10日 at 1:37 PM

 

「上町しぜんの国保育園(small pond) 」  撮影:アック東京

「上町しぜんの国保育園(small pond) 」  撮影:アック東京

 

写真は、このたび世田谷区に竣工した「上町しぜんの国保育園」です。
世田谷区は、全国的に見ても、待機児童がもっとも多い地域。保育園を作っても作っても間に合わないと言われています。
社会福祉法人「東香会」は、40年以上にわたり、子どもの創造性を育む保育事業に携わってこられ、「町田しぜんの国保育園(small village)」では、グッドデザイン賞や日本建築家協会優秀建築選を受賞。その特色ある保育に着目した世田谷区からの新たなオファーにより、上町に保育園が建てられることになりました。
東香会の齋藤紘良理事長は、保育園の園長としてだけでなく、ご自身が子ども向けの音楽活動を行い、アーティストを保育事業に参加させたり、カフェを作って地域の方たちを呼び込んだりして、ユニークな保育事業を展開されてきました。その齋藤理事長が「新しい園長に」と協力を仰いだのが、枠に収まらない保育で有名な港北ニュータウンの無認可保育園「りんごの木」の青山誠氏でした。
オープンしたばかりの「上町自然の国保育園」に伺うと、青山園長は開口一番「保育園なんてない方が、本当はいい」と言われるのでびっくり。それは「子育ては家庭でやるのが一番、それができないから、保育所でやるのであって、親や保育者だけでなく、街ぐるみで子育てをするという感覚が大切」ということなのでした。
「園庭に通じる大きな窓のところに立つと、子どもたちの動きがよくわかります。子どもは、自分のことを言葉では表現できません。体の動き、表情、泣く…。それらをよく見つめて、その気持ちを汲み取ることが大事。プログラムを先行させて、大人が子どもの行動を制限してばかりの保育園も少なくない。でもそれでは自己肯定感の低い人間になってしまいます。ここでは、見せるための行事は一切やりません。決まっているのは入園式と卒園式と運動会。運動会も子どもたちがミーティングをして種目を決めます」と話す青山園長の後ろの壁には子どもたちの張り紙が。4,5歳で自己主張しながら互いの言い分を話し合うそうです。
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青山誠園長。壁には子どものミーティングの張り紙。テーマは部屋の使い方のよう。

「職員一人一人によく言うのですが、もしこの建物がなくても、原っぱで砂山があり、思い切り子供たちが遊ぶことができれば何もいらない。建物が建つことでこどもの動きが制限されたら、それこそ建物にとっても不幸なこと。だから子どもが先で建物があと」と青山園長。建物への希望は、間口が広い大空間、そして昔の建築からヒントを得た、内と外の間の中間領域。内と外をきっちり線で区切ると、足をいったん外できれいにしてからとか、皆、並んでとなりがち。雑巾をおいておき、自分で足拭いて入っておいで、というゆるい感じが子どもの気持ちを育みます。中間領域は「縁側廊下」として実現しました。

「子どもを見るのは親だけ、保育園だけと皆さん言い過ぎです。街中の交通安全の問題だってそう。この辺は歩き始めた子が散歩する道だと、ドライバーがリアルに思ってくれればいい。車とママチャリがぶつかったら、間違いなくママチャリが負けます。なのにママチャリにだけ『気をつけろ』というのはちがう。弱者にだけ努力義務を課すのではなく、強者がゆずらないと」と青山園長。まだまだお話はつきません。
保育はいろんなことを学ぶ機会を得られるのだと改めて思い出しました。