232-1 都心の工事

2019年7月10日 at 4:28 PM
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「CUBE西麻布」  撮影:アック東京

今月は、西麻布の交差点のすぐ近くに建った、「CUBE西麻布」のご紹介です。

「CUBE西麻布」の場所には前回の東京オリンピックの頃建てられた木造2階建ての小さな店舗兼アパートがありました。大家さんは10年ほど前から古くなった建物の建て替えを考えておられましたが、一軒残った店子(床屋さん)のご商売が続いていたので、すぐにはできませんでした。それが3年前、床屋さんが「2018年5月に出ます」という決心をされたので、やっと建替えの設計がスタートしたのです。

敷地は六本木通りに面しており、今は立体交差になっていますが、六本木方面から谷底になる交差点の側道に面しています。
設計のバウ・ビルトの村上さん、榎本さんによると、工事にあたって第一の問題点だったのが、敷地の奥の部分(2/5)の下を地下鉄日比谷線が斜めに走っているということ。古い路線のため、土かぶりが少なく、地上面から3.5m下を走っています。当然その部分は杭を打てず、可能なところに杭をたくさん打つことになります。工事開始前の1年間、営団地下鉄と協議を重ねて杭の位置を調整し、既存家屋解体後に試掘も行いました。そこで地下鉄の越境もあったことが発覚しましたが、当時は図面もきちんとしておらず、事情を知る人はすでになく、という具合でした。

また、東隣の建物が境界ぎりぎりに建っていて、こちら側が下がらない限り隙間がないので、どこまで敷地を有効に使い得るかということが第二の命題でした。そこで、バウ・ビルトさんではそのような都心の工事の経験を豊富に持っている施工会社を決めるために、見積もりを数社から取り、最初に工務店を決めたとのことです。その上で構造も概算で基本単価を確認して、技術的なやりとりを具体的に決めていかれました。
「隣地とは50cmは開いてないと無理」という施工会社もいた中、救世主となったのが、建物の裏に通る2項道路でした。2項道路(にこうどうろ)とは、建築基準法第42条第2項の規定により、「建築基準法上の道路」とみなされる道のことで、「みなし道路」ともいわれます。辰の担当者はその裏の道を使う、という見積もりを出してきました。

大通りは都バスも走っており、昼間の道路使用許可はおりません。しかし夜間工事となると、ここ西麻布は隠れ家的な飲食店が多い場所で周辺への理解を得にくいのです。このみなし道路を使うことで、昼間も工事用車両が駐車できます。しかし、2項道路は小さなビルの裏側で不法占拠のたまり場となっていて、放置自転車、バイクが山のようにありました。既存建物の解体時、それらを排除することから工事の準備は始まりました。営業担当者が、周辺の誰もが本当は「なんとかしてほしい」と思っていたクリーンアップ大作戦を行いました。

テナントビルはボリュームを稼ぐことが命題ですが、完成したビルを見ると、天井の高さは余裕があるけれど、隣のビルよりは高くありません。
「容積率は使い切っていないですよ。本当はもう4層載せられるくらい。でも重量的に、鉛直荷重にしても引き抜き荷重にしても杭がぎりぎりなのです。1層でも増やすとはね出しの分、引き抜きも大きくなるので、杭が持ちません。階高だけなら、壁が延びる分くらいの重量だけで済みます」と榎本さん。

リーシングを行う不動産業者さんからは、「内外コンクリート打ち放しのかっこいい建物に」というご希望が出ています。細長く向こうが開け、「狭い場所、でも壁で目立つ」という方向性を考えていくことになりました。榎本さんは「断熱をやらないという発想もあるけれど、今の時代にエネルギー消費の大きい建物を造るのはよしと出来ないので、巧みに内断熱と外断熱を切り替える方法を考えた」とのことです。

さてどのような解決方法をとられたでしょうか。